第21話 始

城内 フレア専用研究室―


「で、王様はなんて言ってた?」


フレアがコーヒーを飲みながらシンデレラ嬢に尋ねる。


「えぇと・・・」


国軍を動かしてはいけない。

私の100人の小隊は自由に使っていい。

軍部の研究者を使ってはいけない。

明日までに考えが変わらないようなら、私の任をすべて解く。

夕ご飯作って待ってる。


「ってことだけよ。」


「かわいいなあの親父さん。」


「かわいいもんですか。」


フレアが笑う隣でセントが呆れた顔をする。


「全軍を動かすな、は当然よね。周りの国々に戦争を気付かせてはいけない。そして自国の自衛もしなければならない。そのため大量の軍と貴重な軍研究者は動かさない。」


「で、軍部の研究者を使うなってことは私を連れて行けってことだろうなぁ。あとは誘えばメディもついてきてくれるかもな。私たち戦争は大嫌いだが、殺しを目的とせずシャーリーを連れて帰るためっていえばメディも動いてくれる。」


「・・・最終的には私が無理やり連れていけるんだけどーうう・・・メディに嫌われそうだなぁ。」


そういいながらはっとセントがひらめいた表情をした。


「クーは?ねぇフレア、クーは連れてっていいかな?」


フレアは冷えた目をしていった。


「・・・姫様の命令ならクーは来るだろうさ。姫の命令だからじゃない、クーはお前が好きだからな。それにシャーリーが連れ去られたんだ、クーだってはらわた煮えくり返っているさ。絶対来るよ。」


「じゃぁ・・・」


「いや、あいつにさ、人殺しをさせたくないなって、思っただけだよ。」


フレアの眼、その言葉を聞いてセントは言いよどんでしまった。


「・・・いや、今言ったことは忘れてくれ。クーも絶対参加したいって思うはず。それに私とクーと姫様とメディがそろわなきゃ100人で国盗りなんて無理だろうからな。」


100人で国盗りなんて化学兵器があったとしてもどだい無理な話だけど。


「それでも、行くしかないのよね。時間がない。今日までに準備して出てげって言われたからね。」


「明日任が解かれるからな。まぁシャーリーを追いかけるのなら早い方がいい。まだ国の中枢に入っていなければ戦争じゃなくてテロ程度で済むかもな。あぁでもそうしたら報復があるからやっぱり国潰さないとダメかもなぁ・・・」


☆ ☆ ☆


「ただいま、戻りましたけど。」


国境付近でセントの小隊と一緒にシャーリーの捜索に当たっていたクーが帰ってきた。

クーを見ておかえりを言う間もなくセントが証書を見せた。


「クード・ヴァン・カーネーション。今から軍部に入ってもらいます。セント・トパーズ・シンデレラ・ローズの命令であり研究者はこれに従わなければなりません。所属先は私直属の親衛隊。」


書類をクーの胸にたたきつけてさぁこっちに行くよと首で合図する。


「クー、悪いけど早速出かけるわよ。使えそうな学術書と自分の武器だけ持ってきなさい。行くわよ。」


「え、どういうことですか?どこへ?」


「戦争。」

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