事件が次々と解決されていく!!??

本作を拝読して私が何より驚いたのは、
「事件が次々と解決されていく!!??」
ということ。
え?私が何を言っているのか分からない?当然の事だろって?
でしたら、本作の作者様がミステリーの新しい形に挑戦なさったスピンオフ元の作品『よくある兄妹の思考実験』をお読みになることをお勧めします。

当時高校生だった“妹”は、今はみんなのオアシス保健室の養護教諭。
落ち着きが出てきちんと生徒の心の拠り所になっているなぁと感心したのも束の間で、やはり暴走がちな性格は健在。
その溺愛対象の“兄”も、明晰な頭脳と論理を巧みに操る弁舌、そして何よりあのクセになる口グセ「あるある」は健在で、およそスクールカウンセラーらしからぬ大胆な押し引きで相談者を幻惑しつつ「心に抱えた謎の真相究明」という独特の手法で業務を遂行していきます。

主格主人公を務める新キャラはこの兄妹の務める学校に生徒として通う“彼”。
事件に関わる者たちは何らかの「心的複合」を象徴する存在として大胆にデフォルメされており、進行のテンポの良さは前作同様。スルスルと読み進められます。
カウンセリングの職務の詳細や競合職種など、しっかりした調査に基づいて舞台環境に特有の事象を取り上げることで強く読者の興味を引く手腕も見事です。

スピンオフ元で多用される「普遍的無意識トリック・共時性トリック」が封印され、終盤において爽快なアクション要素も取り入れた本作は、よりエンターテイメント性の高まった万人におススメできる作品です。

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