第2話 令嬢様


「はぁ。それでよかったんですか?あんな子の人生を乗っ取て」


「死神さんなら解るでしょう?あの子が餓死で死ぬという事を...まぁ、何も食べずに生きて来た体が食事を受け入れるはずがないんだけどね」


ふぅと言って自称ゴッドは欠伸をする。


「これで尻拭いできたのでいいですよね!さっさと私は眠ります!私は睡眠が一番大好きなので」


「自称ゴッドさんはお好きにどうぞ。少しだけ彼を見守っておきますから」


「死神さんの少しは100年だから宛にならないんだよなー。じゃ、私はこれにてバイニャラ!」


気が付くとそこには白い空間しか存在しなかった。


「ずっと疑問に思っていたのだが彼は何故末路という名なのだろうか?次に会った時に訊いてみよう」


死神は大鎌を振るい目の前にコタツ&ミカンを出し、オッサンの様に転がり斎藤末路の人生を見守るのだった。



—――——――——――—


「は?ちっちゃくなってるーーー!ってそこじゃなーーい。はぁ、はぁ」


お、僕は異世界転生?とは少し違うか。思い出した。

というかここは何処なのだろうか?辺りを見回しても裏地だ。西洋風の建物が並び、影が差し裏地は暗い。時間的に夕方頃なのだろうか?そして意味が解らないのだが、息が上がっている。なにをしていたのだろうか?だろうか?


「*‘*>:・!」


高校生...よりか少し上くらいの年齢の人、二人が向かってくる。二人ともチャラいアレだ、絶対に関わったら面倒くさくなる奴だ。というか何語を喋っているのだろうか?全くわからん。


というかなんで僕の方を指を指しながら走ってくるんのだ?何故二人組なんだ?わからんが、脳内、第六感的なのが逃げた方が良いと言っているような気がするので逃げよう。


僕は男たちが来た道と反対方向の道に逃げる。だが俺は、振り返りざまに二人の男がにやけていたので、妙に頭の中に残ったが気にかけていると追いつかれてしまうので、只々小さくなった自分の体を必死に動かし、打開策を考える。


A案、お話をする。

これは100%無謀だ。言葉も分からないのにお話とか無理。「今日は良い天気ですねぇ~」とか天気のことについて話す事さえ不可能なのだ。A案却下。

B案、ひたすら逃げる。

これもダメだ。土地勘がない時点で相手側に理があるので却下。2対1だから挟まれたら終わるし。


うん?何故二人組の所に疑問に思ったんだ?...相手は3人以上いるっていう事か?というかあの神様たちからスキル貰ったから勝てるんじゃないのか?あのチンピラぐらい。てか勝てなかったらどうなるんだろ?奴隷とか売られるのだろうか?ラノベを読んでいる限りでは奴隷=人生の終点っぽいので、命懸けで逃げなければ。


顔を上げると綺麗な夕日が見え、眩しかったので手を翳し目に光が届かないようにする。


ま、眩しい。眩しい?それは相手も同じはず!やるっきゃない。人を殴るのは抵抗が少しだけあるが、この小さな体で逃げるのは限界がある。

確か自称ゴッドが神・付与魔法ゴッドエンチャント付与とか言ってな。物は試し!


神・付与魔法ゴッドエンチャント腕力上昇、脚力上昇」


身体が軽くなり、力が沸き上がる。今ならなんでもできそうな気がする!


「またあのガキ妙な事しやがって」


ペッと痰を吐き、面倒くさそうに嘆く。


「仕方ねぇ、アレを今回も使うか」


痰を吐いた右側に居る男が懐から青い綺麗なリボンを見せる。


「うっ!」


唐突に力が抜け、跪き、体全身が寒気が包む。鳥肌が立ち、同時に胃から上がってくる。眩暈に襲われ、うつ伏せ状態で地面に倒れる。


き、気分わりぃ。寒い。きつい、目が回る。おえぇ。い、意識が保てな...。


―———————


ガタン ガタン ガタン


「うぅぅ...」


ゆっくりと上半身を起こし、目を擦り辺りを確認する。


銀髪でボブカットの...僕と同い年くらいの女の子が分厚い本を読んでいた。

邪魔をするのは悪いだろうと思い、窓から様子を伺おうと立ち上がろうとすると、思うように両手、両足を動かせず尻餅をついてしまう。目を両手、両足に目を遣ると縄で束縛されていた。


尻餅をついた時の痛みで寝ぼけた状態から完全に目を覚ます。



チャラい男たちと戦っていたことを思い出し、注意深く自分の体を見る。少しだけ手首が赤くなっている程度で特に異常は無さそうなのだが、服装が変わっていた。貴族が着てそうな服だ。というか、チャラい男たちはどうして貴族みたいな服を着せて。

僕はどういう状況だ?え?なんでこの日本で誰でも着てそうな服を着ているのに、貴族が着ているみたいな表現をしているんだ?


元にいた体の子の記憶がごちゃごちゃになっている?どうすれば治るんだ?

...頭ぶつけたら治るかな。


ガン、ガン、ガン。


痛い。でもたんこぶは出来ていなようだ。自称ゴッドさんが言っていた基礎能力強化的なのが影響しているっぽい。


「な、なにしてるの!」


でも、気絶するまで頭をぶつけたりすれば、記憶が合体的なことになりそうな予感がしないでもないので、しかもやることが全くといってないので無駄な時間を過ごすより、解決策を試す事に限る!と僕は思っていたりもするのでとりあえず頭をぶつける。


ガン、ガン、バッ!


「何でとめるの、ですか?」


読書をしていた少女が立ち上がり、壁に頭をぶつけていた僕を止める。


「あなた、馬鹿なのですか!どうして壁に頭をぶつけたりするのですか!おでこも赤く腫れているではないですか!それとも死にたいのですか!もっと命を大切にすべきです!まだソイたちの齢は一桁なのですよ!これから、何十年も生きていくのですよ!ここで死んでどうするのですか!」


「あ、あの...」


「黙って!」


「あ、はい」


「第一目を覚ましたのにも関わらず、ソイに一言も声を掛けずに壁に頭をぶつけるなんて!」


男子高校生からしてみると、怒っても幼女なので可愛らしいかぎりだ。幼女が人生語るとかどんな本を読んでいるのやら。


「あの、この縄解いてくれませんか?」


「分かったわ」


少女は目を閉じ、両手を縄に翳す。

縄と両手の間に赤い光を放った線が魔法陣を描き、一帯が暖かいぬくもりで覆われる。


「イグニッション!」


「アッツイ!」


暖かいぬくもりとは反し、温度が急激に上がり、縄の辺りに熱が集中し縄は赤い光から白い光に代わり、跡形もなく散った。


お陰で僕の手首と足元の服は焦げ、少し火傷を負う。


「大丈夫?」


焦った表情で寄り添ってくる。


いやいやいやいや お前のせいだからな! いや お前のせいだからな! いや、別に縄を消してくれたのは、お、お礼を言わなきゃだよ...ね?いや お前のせいだからな!いやでも僕の為にしてくれたことで...いや お前のせいだからな!ま、まいいよ。ま、まぁありが、いや!お前のせいだからな!


僕の脳内は少女を責める思考とツンデレ思考が混ざり合いいろいろとカオスになっていた。


溜め息とともに思考を閉ざす。


「ご、ごめんね?」


「い、いや、いいよ、ぜ、全然気にしてないから」


笑顔で言うと、少女は顔を引き攣らせた。


「そ、それよりさ、なんでこの馬車にいるか知りたいでしょ?」


「あ、はい。知りたいです」


「ほら、あの時助けてくれたでしょう?」


あのときと聞かれて振り返る。が全く記憶にない。頭でもぶつけて思い出そう。でなければお話が進まないような気がするので。仕方がない。


頭を壁に向け、勢いをつけているところで察せたのか無理やり止められる。


「あ」


思い出したような声を上げる俺。


「君は誰?」


「そういえば自己紹介してなかったね。私は、ソイラ・エートゥーゼットです。5歳です」


成程だから、さっきソイたちとか言っていたのか。


「因みに侯爵家の令嬢です」


侯爵家の令嬢か...。どうりで可愛らしい訳だ。てか侯爵ってどれくらいの位に居た人だっけ?忘れたからいいや。


「自分は....」


斎藤末路って名乗るのか?でも確か名前がないっていたからテキトーに思い付いたのが名前でいっか。


「エルダです。同い年です。因みに記憶が所々ないです」


「そうなのですか...。話を元に戻します。あなたがここにいる理由それは...」


「それは「あーーーーーあ、なーーにも聞こえなーい」」


5歳児の令嬢様からジト目を注がれる。


「すいませんでした」


「それは、私の付き人になってほしいのです」


「へ?」


「だから、私の付き人になってほしいのです」


「いや、二回同じ事を言わなくてもいいんでけど、なんで自分なのですか?」


「じゃ、質問します。あのまま、スラム街で生きるか死ぬかの生活を送るか、それとも、私の身の回りのお世話をしながら、普通の生活を送り、学園生活をするか。どちらがいいですか?」


「それは、勿論スラm「どちら?」自分は付き人で良いです。というか付き人がいいかなーと思います。てか付き人に志願します」


く、クソ!まさか5歳児の令嬢の威圧ごときに負けるとは!これでは日本に居た時となんら変わらないではないか!


「ですが!10日に2日ほど休みが欲しいであります!」



ふふ、と可愛らしい笑みで返された。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る