第7話時ちゃんと運命の一日――後半戦――2

時ちゃんと運命の一日――後半戦――2


 ――それが夢になることは賭けだった。

「おはよー! こーちゃんー! 今そっちに行くからねー! いなくても探すからねー!」

 夢だった。夢だったんだ。夢を見てたんだ。夢だけど……

 奇妙だけど、嬉しい気持ちが溢れてきて、それに気づくと、途端に絶望に似た嫌悪感が勝る。今日という一日が始まることより重い気持ち。

「怖かった……なんであんなことになるの……どうすれば助かるの……?」

 寝ているからだを横向きにして布団を頭まですっぽりかぶる。

 全部、時ちゃんの言ったとおりだったんだ。今夜私は殺されて、お父さんは悲しむ。

 いつもだったらそれを日記帳に書かないといけないといけないんだけど、そんなことしたって運命は変わらない。

 私が死んじゃったらなにもかも意味がなくなっちゃうんだよ。

 だったら考えなくちゃ。あの女の人の目が届かない場所に逃げるか、このことをお父さんやお母さん、警察に相談して守ってもらうか。でもそんなこと言っても信じてくれないかもしれない。私は今日、確実に殺されるのに。

 だだだっと時ちゃんが階段を上る音、どうやら玄関のお母さんを無視して、一直線に私のお部屋を目指しているようだ。

 でもその前に、

「おはよーこーちゃん起きてるぅ? 入るから怒らないでねー?」

 全てを知ってる時ちゃんから、これから起きることを聞くんだ。

 ガチャリ、と勝手にドアを開けてきた時ちゃんの音に私は寝たふりを続ける。

 別に、普通に起きて時ちゃんと向き合ってもいい。でも、時ちゃんを捕まえたい私は、理科の授業で見たハエトリグサの物まねをしてるんだ。

「……ねてまーすぅ……さて、我らが愛しのこーちゃんの寝顔はかいいいものなのでしょうかぁ……?」

 それに対抗してるのか(そう感じてるのは私だけだけど)時ちゃんはアイドルの寝顔を隠し撮りする企画みたいに、小声になって近づいてくる。

 動くタイミングは時ちゃんが私に一番近づいた時だ。布団がめくりあがる、まだだ。時ちゃんの吐息が耳元にかかる、まだまだだ。時ちゃんの手が私の顔にかかった髪を払うために頬に手を当てる、今だ!

「時ちゃんっ!」

 ばばっ、と起き上がり、時ちゃんの頭を腕で羽交い絞めにすると、逃げられないように首ごと極める。

「ひどいよ……なんで寝てたの? なんで私のことを守ってくれなかったの? なんで気づいてくれなかったの?」

 それから、時ちゃんを仰向けにして腹に腰を下ろす。時ちゃんの綺麗な髪を引っ張って、手をパーにして頬を何度も叩く。手には温かい水みたいなものが触れる感触があるけど、それはたぶん私の涙だ。

「私、死じゃったよ……? 怖いお話いっぱいされて、あんなの聞きたくなかった……! 悪いのはお父さんなの? あの女の人は可哀そうな人だった……!」

 口にガムテープを張られて、全身を動けなくされて、知らない男の人に頭を二回撫でられて、テープに悲鳴を録音させられて、変な薬品を嗅がされて……

「すっごいこわかったんだからぁああ!」

 そう言って、全身全霊の力を込めた拳骨を時ちゃんの鼻めがけて振り下ろす。手加減なんて考えてなかったから、あたったら骨が折れちゃうのかも。

 そんな甘えがあったから、拳骨の狙いは外れて時ちゃんの額にぶつかる。重みでベットのシーツが深く、柔らかく沈んだ。

「……そうなんだ、くーちゃんも大変だね」

 私の暴行はそこで止まって、顔を赤くした時ちゃんは無表情な顔で私を見上げていた。

「もってなに? 時ちゃんはなにかしたの? 私のためになにかしたの?」

「これからするんだよ、全部教えてあげるから」時ちゃんの手が私の頬を撫でてくる。「泣き止んで、ね?」

 私はやっぱり泣いていた。


 私が叫んだりするからお母さんが何事かと、お部屋の前に来ていた。顔を赤くはらした時ちゃんに近寄ると手当をしてくれる。お母さんは私より時ちゃんが大事なんだ。

 その場を立ち去って顔を洗いにいく。それから私服に着替えにお部屋に戻ってくる私に、なにがあったのか正直にいいなさいと詰め寄ってくる。

「時ちゃんがえっちなことするからいけないの……」そう言って私は、自分の顔と時ちゃんの顔を愛おしいようにくっつける。「でももう大丈夫だから安心して。ごめんね時ちゃんひどいことして……」

 お母さんは首をかしげながらも、私と時ちゃんの仲が元通りになっているみたいだと勘違いして、しぶしぶ朝ご飯の準備に取り掛かった。私は絆創膏と包帯だらけの時ちゃんの顔を舐めてあげる。びろって傷の治りが早くなる効果があるんだ。

 くすぐったそうに目を細めるだけの時ちゃんから、これから起きる出来事を教えてもらう。

「この後、くーちゃんは私と朝ご飯を一緒に食べるの、そして宿題して、ゲームや絵本で遊ぶの」

「そんなこと知ってるよ、私が知りたいのはあの女の人と知らない男の人たちの行動、今なにしてるの? まだお家の周りをしつこく見張ってるの?」

「……うん、さっきも二人がかりで交代しながら……もう一週間前からずっといたんだよ、ずっとくーちゃんをさらう計画を練りながら、その機会(チャンス)を待ってるんだよ」

 無機質な口調の真面目な時ちゃん。今はずっとこの時ちゃんでいてほしい。必要なことだけ喋ってくれるからもどかしくないんだ。

 時ちゃんの情報どおりなら、今ここで、この瞬間に我が家から出て行っても追いかけられるみたい。

「お家の中にいるのが一番安全? でも夜になると私のお部屋にくるんだよね……」

「一回だけ……」

 私が考えていると、時ちゃんが思い出したように呟いてくる。

「なに?」

「監視カメラが全部使い物になってなくて、襲撃が早い時があった、その時は私もまだ寝てていい時間だと勘違いしてて……危うく殺されそうだった」

 ……あれ? それって前の夢のこと? 私が誘拐されてるのに時ちゃんは呑気に寝てて、仲間の一人に始末されたんだっけ? でも時ちゃんの言い分だとそこから助かったみたい。

「それと三回、あの人たちを潰しにかかったことがあるけど、目的の場所が変わって見つけるのが大変だった、やっぱり泳がせて集まったところを潰すのが一番かな……」

 一回とか三回とかなんの数だろ? 時ちゃんの情報がいまいち頭に入ってこない。

「つまり何が言いたいの?」

「監視カメラが壊れていると、あの人たちはお家に入ってくるんだよ。私とくーちゃんが街に遊びに行っている間にあの人たちは空き巣してたんだ」

「空き巣って……じゃあお家に誰もいなかった時にお邪魔してたんだ」

 そういえば、我が家のタンスとか荒らされていたっけ?

「あと、あそこにいる刑事さんにも一人、偽物がいてお家の周りを怪しまれずに調べられたんだ」

 そうなんだ。なんか、そんなことまで知ってる時ちゃんが怖いけど、そういう情報は助かる。

「じゃあ警察は頼りにならない?」

「頼りにはなるかもだけど、頼っても結局くーちゃんが死ぬのは変わらないかな、あの女の人はくーちゃんが死んでお父様を不幸にできたらそれだけで満足するやつだからね。どんな手段でも使ってくるよ」

「それって、私を殺すのに手段を選ばないってこと?」

「たぶん……でも手段を選ばないっていうのは違うかも……」

 ボソリ、と呟く時ちゃん。何か知っているならなんでも教えてほしかった。

「ご飯よー」お母さんが朝ご飯を用意してくれたみたい。

 居間に行って淡々と席に着く。私も時ちゃんも珍しく大人しいから、お母さんはさらに首を傾げる。

 朝ご飯のメニューは変わらず、卵焼きとウィンナーそれに漬物だ。私は卵焼きの黄身をくりぬいてご飯の上に乗せ、白身とウィンナーを時ちゃんに渡す。お母さんがあらあらとほほ笑んでいる。

「さっきはごめんね……」私は時ちゃんの耳に口を近づけて小声で、「だから助けてよ時ちゃん、お願い」

 これあげるから、私を守ってって頼りにする。

「……それは、こーちゃんのお仕事だよ……」

 これくらいじゃ、時ちゃんは動いてくれないみたい。

 時ちゃんはパクパクと私の卵とウィンナーを自分の分より先に食べる。私は黄身の乗ったご飯にソースをかけてかき混ぜた。


 次は宿題の時間だ。そう時ちゃんが予知してるんだ。

 手持ちのトートバッグから宿題を取り出して机に広げてあげる。そうされると時ちゃんは迷うことなく、淡々と機械のように勉強をもくもくと始めた。

 いつもなら、ここで鼻息を荒くしてお腹を休めるのに。私は頭痛がしている気がしてベットに横になる。少し考えすぎてるのかもしれない。でも頭を回さなくちゃ。

「あの人たちはなんで私をさらうか知ってる?」

 時ちゃんにも知らないことがあるのか確かめたかった。時ちゃんが首を横に振って算数の問題に悩む。

「詳しくは知らない、でも大方見当はついてて、お父様があの女の人にセクハラしたから、そういうのは家族でしてろっていうことになって、それでも止めないからこーちゃんを殺そうとしてるんだよね」

「え? そうなの?」

「そう聞いてるけど」誰から聞いてるんだろ、「でも私は嘘だと思う、あの女の人はそういうデタラメの理由であの男たちと契約したんだと思う」

 時ちゃんの情報網が気になるけど、確かにそうだ。あの女の人はお父さんを心底憎んでいるだけなんだ。お父さんは女の人にえっちなセクハラなんかしたりしない。

「じゃあ、あの周りの知らない男の人たちは? さらうのに手馴れてたし、一体何者なの?」

「一人は女の彼氏で、他は業者……汚いお仕事でも、なんでも手伝ってくれる人たちなんだって、普段はクリーニング店を営んでいて危険物の取扱も死体処理もお手の物なんだ、最近だと密輸密造もやってるみたい」

「……そうなんだ、危ないから関わりたくないよね」

 本当にそんな人たちっているんだ。でもそれってお金さえ渡せば、誘拐も人殺しもするっていうことだよね。私ってそんな人たちに狙われてるんだ。

「でもそんな人たちから逃げる方法ってあるのかな……」

 もし時ちゃんの情報が本当でも、いや本当だとして、私がさらわれない、生き残る道があるのだろうか。

「こーちゃん……ここ、よく分からないから教えてほしいの……いい?」

 時ちゃんは私の質問に答えながらも宿題を進めていたけど、やっぱり難問は解けなかったみたい。

「いいよ、でも教えるから助けてね、絶対だよ?」

「……ありがと、守れる自信なんてないけど……」

 ダメだ。こんなやる気のない時ちゃんじゃまだ私を守ってくれる気がしない。

 宿題を見ると三角形の内側の角度の問題だ。二つの角度は分かっているので、もう一つを導き出す。

「こんなの簡単だよ……時ちゃんはやっぱりバカなの?」

 私は時ちゃんがなんでも知っていて、バカの真似をしてると思ったけど、時ちゃんにも知らないことがあるみたいでホッと安心した。


次はゲームなんだって。でも時ちゃんは絵本が先でもいいって言ってきた。

「ううん、ゲームしよ、お父さんのお部屋にある格闘ゲームがあるんだ。あれで遊ぼうよ」

「え? うんっ。私に挑戦するんだねっ」

 それを時ちゃんは喜んで受ける。こういうのって燃える展開っていうんだっけ?

 お母さんが下にいることを確認して、廊下の突き当たりにあるお父さんのお部屋に秘密の鍵を使ってのそーと慎重に入る。

 これがバレたら、お母さんは実家に帰っちゃうんだ。なんでかは分からないけど。

 中に入り、裸電球の明かりを点けると、時ちゃんがうおぉーと声をあげる。そのおしゃべりな口に手を当てる。

「ちょっと静かにっ、お母さんに聞こえたら大変なんだから」

「ご、ごめん……でもすごいね。監視カメラいっぱいだし、アニメグッズと書籍もこんなに……金持ちはいいなぁ」

 まるで、ここを博物館か美術館みたいに鑑賞し始める時ちゃん。そんなにすごいかな?

 でも、いつまでもそうしてるから私は急かすように、モニターの前にある椅子を回す。

「時ちゃん、ゲームしようよ。それで、私が勝ったらちゃんと助けてよね?」

「……私が勝ったらどうするの?」

 それは考えてなかった。でも、時ちゃんがしたいことなんて決まってる。

「私とお風呂入って一緒に寝たいんでしょ、そこでまたあれでもすればいいよ、えっちなやつ」

 そう言うと、時ちゃんは無言で席に着いた。席といっても、背もたれが付いた回転する椅子が一つしかないからそこに座ったんだ。そして私は、時ちゃんの膝の上に腰を下ろす。時ちゃんはコントローラを操作しやすくするために、私のお腹を抱くように手を固定する。

 時ちゃんの顔はいまいち晴れないけど、ゲームが始まるとわなわなと心臓とか体が震えているのがわかる。始まるのが待ちきれないようだ。

 このゲーム自体は私も時ちゃんも初めてなので、勝率は半分半分といった感じ。

「一回勝てばいいの? それだと短くない?」確かに。それだと味気ない。

「ゲームに飽きるまででいいよ、それか圧倒的な差で勝ち星あげたらその人の勝ち」

 そうしよっか、ということになった。キャラクターを選ぶ時、やっぱり時ちゃんは渋めのかっこいいおじさんを選ぶ。私はと言えば、操作するのは綺麗な女の人だ。だって私は女の子だもん。

 対戦が始まると、時ちゃんは逃げに徹底した。守りを固めて一向に攻めてこない。だから私は突き進んで守りにくそうな下攻撃を連打した。

「うーそのキックずるいぃー」

 だから最初に勝てたのは私で、負けたらキャラクターを変えるのがお決まりなのか、今度は山のようにでかい巨漢を選んだ。そいつが固いのなんの。私の攻撃は全然効かなくて、飛んで上から押しつぶしに来る攻撃に対応できなくて負けた。今度は負けない。私は負けちゃいけないんだ。そんな気持ちで身長が高いキャラクターに変えると、対空攻撃のリーチが長くて、ほぼノーダメージ状態で見事勝てた。次は時ちゃんがキャラクターを変える番だ。

 それから何回も何回も、それこそ連撃技(コンボ)をある程度覚えてしまうほど、飽きることなくゲームに集中してたけど、お母さんが私たちの名前を呼んでいることに気づいた。

 監視映像には、廊下で私たちを探してるお母さんがいる。

「次で最後にしよっか」そう私は提案して、一番最初の綺麗な女の人を選ぶ。

「いいよ、一対一だしね」時ちゃんのお気に入りは山のような巨漢だ。

 分が悪い勝負に見えた。だって私はそのキャラに対してこの女で勝てた結果はない。時ちゃんも勝つ気満々で、後出しじゃんけんみたいに私の選んだキャラクターに絶対勝てるのをぶつけてきたんだ。時ちゃん汚い。

 でもこれが最後の一戦。対戦が始まると、やっぱり時ちゃんは飛んで上から私を押しつぶそうとしてくる。そんな攻撃は下がれば躱せるはず、そして攻撃後の隙を突くんだ。でも時ちゃんはそれを読んでいたのか飛ぶだけで何もしてこない。着地してまた飛ぶ。なるほど、つまり時ちゃんは私が攻撃範囲に入ってきたら攻撃するみたい、これは長期戦になりそうだ。でも、私だってそんなのにひっかかる女じゃない。遠距離の弱い攻撃で攻め立てる。卑怯だなんだと言われても、時間制限でサドンデス勝負に持ち込めばいいんだ。それに、攻めてこない時ちゃんが悪いんだよ。だから時間が少なくなった頃に、無意味に飛んで突っ込んできた時ちゃんを躱して、私は正確にボタンを連打し十撃以上の連撃技ではめて滅多打ちにした。巨漢だから的が大きくて当てやすいんだ。それを打ち終えた後は最高に気持ちよくて声を上げそうになった。口に手を当てて抑える。

「……負けた、この私が……?」

 まるで、ゲームに出るボスみたいなセリフを吐く時ちゃんはうな垂れて、コントローラーを私の膝に落とす。

「はぁはぁ、約束まもってよ時ちゃん……」


 ゲームは終わり次は何が始まるのか。

 時ちゃんが、ゲームを終わって疲れたからと私のお部屋で休みたいと言った。

「わかった、お昼ご飯もってくるから待っててね」

 私は居間で心配しているお母さんのところへ顔を出すと、お昼ご飯はなにがいいか聞かれる。そういえばもうそんな時間か。

「あら? 時ちゃんは帰っちゃったの?」

「帰ってないよ、今私のお部屋でくつろいでるんだ。今日は泊まるみたい、晩ご飯もごちそうでお願いね」

 お母さんにそう言うと、お昼ご飯はこれがいいと決めた菓子パンとジュースを受け取り、私のお部屋に戻る。

 だけど、休むならベットの上のはずなのに、時ちゃんは机の席にも、床にも転がっていない。

「時ちゃん?」どこにもいない。窓が開いていた。

 ――まさか。

 手に持っていたお昼ご飯を放り投げる。コップに入ったジュースが床に染みこむけど今はそれどころじゃなくて、開かれていた窓へと急いで駆け寄り、斜め下にある時ちゃんのお部屋を見る。

 その窓がぴしゃりと音を立てて閉じた。

「あのバカ、逃げるつもりなの? そうやって私の約束を破るんだ……!」

 腹の奥から怒りがこみ上げてくる。あんなに私と一緒に居たがっていたくせに、時ちゃんの方から逃げていくのが許せなかった。

「お母さん! ジュースこぼしたから拭いといて! 今から時ちゃんのお家に行くから!」

 そう言いあげる私に、お母さんはどうしたの? と聞いてくる。

「あとで話すから! はやく拭かないとジュースが染みてきちゃうの!」

 なんだか理不尽なお仕事をお母さんに押し付けてしまったけど、全部時ちゃんが悪いんだ。一緒って約束したのに……!

 我が家に出ようとして気づく。お外には知らない男の人がいるかもしれないこと。

「ううん、時ちゃんのお家に行くだけだったらいいはず……」

 時ちゃんをお家に見送りに行った時がある。夢の中だったけど、その時は邪魔しなかったんだ。

 お外に出ると、すぐさま全速力で駆け出す。まるで急な雨が降ってきた時みたいに私は急いで、時ちゃんの古いお家の引き戸を開けて中に入った。お邪魔しますも何も言わないから行儀悪く思われるだろう。でもそんなの関係ないよね。全部時ちゃんが悪いんだ。

「時ちゃんっ! いるんでしょ? ちゃんと約束したよね? 今日は私と……一緒に居てくれるんでしょ?」

 シーンと静寂が続いて、パキッと二階に続くらせん状をした階段の奥の方で木の床が軋む音がする。時ちゃんがそこにいるんだ。

「ひどいよ時ちゃん、全部教えてあげるって約束したのに、大好きな卵焼きとウィンナーあげたのに、宿題教えてあげたのに、ゲームしてあげたのに! それなのにまだ足りないの? 時ちゃんはやっぱりわがままだよ、意地悪だよ!」

 私に何も言わず逃げるなんて卑怯者だ。本当は私を助けることを諦めているのかもしれない。そんなの無理なんだって諦めてるんだ!

「でもやっぱり私には時ちゃんしかいないんだよ! だって私の見た夢のことを知ってるのは時ちゃんしかいないんだもん! だから時ちゃんしか頼れなくて……時ちゃんしか……私を助けてくれる人が……いないんだもん……!」

 そうだ。どうして私は時ちゃんに頼っていたのか、初めて自覚した。私は時ちゃんを頼りにしなきゃ、一緒に考えてこの日曜日を生きなきゃ、明日なんかずっと来ないんだ。

「でも……時ちゃんはそんなこと望んでないんでしょ……私がいくら怖い目にも痛い目にもあっても、知らんぷりなんだ……ずっと私が苦しめばいいと思ってるんだ……ひどいひどいよ時ちゃん……!」

 だって時ちゃんはこの時間がずっと続けばいいって言ってた。それってつまり、私を助けたらこの一日が夢じゃなくなって、明日が来るからってことなんでしょ?

 でもそんなの私には耐えられない。時ちゃんはそれで楽しくていいのかもしれないけど、私は無理だよ。もう怖い目にもあいたくないし、殺されるのにも怯えたくないんだ。

 ギシギシッとまた木の床が軋む。

 そうしてやっと、時ちゃんはゆっくりと階段の奥から降りてきて姿を現した。その背には、重そうな大きいリュックを背負っている。まるで、旅行とか山に行く人みたいだ。

「……違うよこーちゃん、準備してたんだよ」

「準備? なんの?」

 それを聞かれた時ちゃんは言いにくそうに目を伏せて、

「あの女の人を潰す準備……だよ」

 そう、確かに言った。

 よかった。ちゃんと考えてくれてるみたい。


 だから待っててね。そう言うと、時ちゃんはそのリュックを背負いながらお家の奥に消える。やがて、現れたのは若い男の人だ。

「すぐ隣だけど見送りするよ、最近は物騒だからね」

 若い男の人は外人のような顔つきで、ハーフっぽい。なかなかにイケメンで、時ちゃんはこの人をおじさまと呼んでることに疑問を抱く。着ている服だってホストみたいに高級そうで、金色のアクセサリーが眩しい黒のスーツ。なんのお仕事をしてるのか気になる。

「……時ちゃんはうちに泊まるんだけど、聞いてる?」ぶっきらぼうに私は言った。

「聞いてますよ、今は偉大な自由研究の途中なんですよね?」

 そういうことになってるみたい。私の後ろを歩かれて送られる。その方が周りを見やすいんだろう。我が家に着くと玄関の中までついてきて、お母さんと鉢会う。

「あらあら、時君じゃない」

「ご無沙汰しております、お母さま」二人はそんな挨拶を交す。

「知り合いなの?」

「そりゃお隣同士だしね、それに時君はお母さんの母校の後輩なのよ」

「その節は大変お世話になりました。それでは、長居は無用なのでこれで失礼させていただきます」

 そう言うと、時ちゃんのおじさま、時君は出て行ってしまった。

 私も靴を脱いで、居間に向かう。お母さんはもう少しゆっくりすればいいのに……と言っていた。

「なんか礼儀正しくて綺麗な人だったね、時ちゃんもああいう感じになる時あるし、影響されてるのかな」

 それと、とてもじゃないけどあんな木造建築のボロ家に住んでいるとは思えない。

「そうね、時君がいい人だから時子ちゃんも優しい子に育ったのよね」

「……そうかな」そう言って取り直す。「ううん、そうだよね、私もああいうお兄ちゃんがほしいな」

「そうね、いつかできるといいわね……ちかいうちに……」


 それから一時間経って、時ちゃんは帰ってきた。帰ってくるなんて言い方は変だけど、時ちゃんが帰ってきたんだ。

 さきほど背負っていた重そうなリュックはなく、代わりに紳士みたいな黒い皮靴を履いていた。それはかっこいいけど、子供サイズだから可笑しくも見える。

「えへへーお泊りの準備でおそくなっちゃったー」

 そういうことになってるみたい。あれ? 自由研究は?

「その割には何も持ってないみたいだけど」

「うん、お家のお掃除終わらせてきたんだ」

 確かすごい大変なんだっけ? はやく建て替えればいいのに。

「じゃあお風呂入った?」

「まだだけど?」そう言うから、時ちゃんの手を握った。「え、もう入るの? まだお昼だよ?」

「だめ?」時ちゃんの左腕にしがみついて引っ張ると、容易くお風呂場に案内できた。

 お風呂は事前に沸かしてあるから大丈夫なんだ。服もタオルも用意した。バスロマンも沈ませた。

 緑色をしたアロマ効果がある湯船に浸かると、時ちゃんはやっぱりごくごくと音を立てて頭を沈める。面白いと思ってやってるのか、いつもそうしてるのかよく分からない。

「ねぇ時ちゃん、サメの物まねしてよ、あの映画の真似でいいよ」

「いいよ! でーでん、ででででぶくぶく……」そこまでちゃんと真似するんだ。

 でも、湯船に潜ったら口がふさがって音がなくなった。こっちのが怖い、さてどこからやってくる。

ジャバーと水柱が立って、「しゃーぁー」と時ちゃんが私の肩に甘がみしてくる。

「きゃあー」私も負けずに時ちゃんの背中をぺちぺち叩いて抵抗する。

「しゃーしゃーしゃーん」時ちゃんの甘噛みは肩から鎖骨へと歯を滑らしてくる。

「きゃーちょっそこやめっ」なんだか歯以外に舌も出してるのか、うねうねと這う何かが私の体を舐めあげてくる。

 このままだとのぼせそうだ。私は立ち上がろうとするけど、時ちゃんはお腹を掴んで逃がさないようにすると、さらに噛みついてくる。

 もう終わりだから! そこ噛むとこじゃないよ! きゃぁああ!

 時ちゃんは、反応をしなくなって細かく震える私に気づいて、やっと解放された。

 なんとか湯船から上げられた私は、湯冷めにぬるいシャワーを体に流されて、意識が回復してくる。

「だいじょうぶ?」

 時ちゃんが、介抱してくれたみたい。

「……そういうえっちなことは熱くないところでして」

「うん、分かったー、続きはベットだね」

 全然わかってないみたい。時ちゃんとお風呂に入る時は、長風呂は遠慮した方がよさそうだ。

 お風呂から上がるけどすっかりのぼせてしまった。

 時ちゃんは、肩まで露わにした黒くてかっこいいシャツと、さっきも着てた短いスカートだけという寒そうな恰好になる。それがパジャマなんだって。いつもそれを着ているのはしってるけど、見ているとこっちが寒くなる。

 でも短いスカートはいいね。

 ソファに横になっていたんだ。もちろん時ちゃんが肌身で膝枕してくれて、テレビ番組おもしろい。あはは。

「ねぇこーちゃん、まだ寝ちゃダメだよ?」

 髪を無意味にブラッシングする時ちゃんは、忠告みたいに言った。

「なんで? 今すごい気持ちいいのに」

 もしかしたら、この後えっちなことしたいのかもしれない。時ちゃんはほんとえっちだなぁ。

「寝たらしんじゃうから、それがトリガーになってるみたいなの」

「とりが……?」

 時ちゃんが雪山で遭難した時みたいなことを言う。あと鳥がなんとか。でもそっか。寝たらしんじゃうなら起きていないと。

 でも、時ちゃんの太ももから香るお日様の匂いが私を眠くするんだ。ぼーとしちゃう。

「そうだ、絵本読もうよ、こーちゃん絵本読むの好きでしょ?」

 確かにそれを呼んでるうちは寝ないかも。

「じゃあドクターエリリィがいい……時ちゃん知らないでしょ? あの時すぐ寝ちゃったもん」

 とっても為になるお話なんだよっておすすめする。

 お部屋に戻ってドクターエリリィの絵本を広げると、時ちゃんが朗読してくれた。

 でも、

「全然ダメ、なんで棒読みなの? 吹き出しじゃないところは神様っぽく言ってよ」

「か、神様? えーと……とある小さな村の病院のお話じゃ――」

「は? ふざけてるの? 勝手に語尾変えないでよ、作者に失礼でしょ!」

「えぇ……だって神様ぽくって……神様ってこういう感じだよね?」

 ぜんっぜん分かってない! 私は時ちゃんの朗読が下手過ぎてムカついていた。

 ここはやっぱりお母さんに読ませて手本を見せるべきだ。

「だったらさぁ……こーちゃんが読んでみてよ、こーちゃんの声ってコケティッシュな感じで好き」

 コケ……なんだって? 

「ニワトリみたいってこと?」バカにしてるのかな?

「そ、そうじゃないよ、コケティッシュっていうのは媚びってるていうか、誘ってるというかそんなえろさがまじった……」

 つまりえっちてこと? 時ちゃんには私の喋り方がえっちに聞こえるんだ。

「ふうん、じゃあ読んであげない、今はそんな気分にさせたくないもん」

 もうすぐ夜が来る。それを乗り切るまで安心なんかできないんだ。


 晩ご飯の時間になって、お父さんが帰ってきていた。お母さんが杯に晩酌を注いでいる。そんなごく普通の光景がなんだかすごい幸せに見えた。

「お母さま、次は私に注(つ)がせてください」

「いいわよ、なんだか時子ちゃんがうちの娘になったみたい、あなたもそう思わない?」

「そうだな、娘というより、立派なお嫁さんがきたみたいだけどなぁ」

 でもそこに時ちゃんがいて、すごいぴったりと当てはまるんだ。みんな家族だと言われてもおかしくないくらい。

 晩ご飯は期待していた通りのごちそうで、おでんも唐揚げもシュウマイも卯の花も、お父さんが買ってきたケンタッキーも全部全部おいしいんだ。

「時ちゃん、これ食べる?」

「食べる食べるーじゃあ私はこれあげるーってえぇ?」

 私は大好きなケンタッキーを一ピース手渡す。ケンタッキーはみんな食べたいから一人二つまでなんだ。でも、私はこれから頑張ってもらう時ちゃんに、景気づけであげちゃうことにしたんだ。

「受け取ってよ、私の大好物、交換は要らないからさ」

「う、うん。ありがとこーちゃんっ!」

 その笑顔は、太陽に向かって咲き誇るひまわりのようで、いままで見た顔の中で一番輝いて見える。この笑顔のためなら今日からでも晩ご飯は毎日我が家で食べてほしいと、そう思ってしまうほどだった。

 そんなふうに晩ご飯を食べ終わると、私と時ちゃんは歯を磨いて寝る準備を始める。いつもだったらテレビを見たり、宿題をしたりするんだけど、今はいい。

 台所で食器を片付けているお母さんと、テレビを見ながらうとうとしているお父さんにおやすみなさいと言う。

 もしも、お父さんとお母さんを巻き込んだら、この幸せは二度とやってこないと分かっていたから、その一言だけで済ませたんだ。

 時ちゃんにクッションを投げつける。反射神経がいいから急に投げつけてもなんなく受け取ってしまう時ちゃんは、投げ返そうと振りかぶろうとする。

「投げないでよ、それ時ちゃんの枕にしてね、私のお気に入りなんだ」

 それを枕にして今夜は寝てね。と伝えたら時ちゃんは顔をクッションに埋(うず)めた。

「……よだれ垂らしちゃダメだよ?」


 寝る準備ができて、お部屋に入ったら一直線にベットに向かう。時ちゃんは窓の戸締りを確認して、明かりを点けてすぐ消したらこちらにとぼとぼと歩いてきた。

 ベットに潜って待機した私は、時ちゃんの分のスペースを空けて待っているけど、時ちゃんは一緒に寝るのをためらっているのか、なかなか入ってこなかった。

 時ちゃんがいないと肌寒い、心細くて寂しい感じがする。

 何をしてるんだろうと私が目を合わせると、口を開いた。

「こーちゃん、寝る前に一つだけいい?」

「……なに?」

「これから起きることも夢だって、信じられる?」

 その言葉の意味がいまいち頭に入ってこなかった。起きることは夢じゃなくて予言だし、その予言が本当に起きたとして、それを全部夢だって信じることなら、それは現実に起きたことみたいな言い方だ。

「……よくわかんないけど、これから寝るんだから夢は見るものでしょ? 大丈夫だよ、全部夢だって私はそういうことにするから」

 そうしないと、安心して寝れやしない。

「それならよかった。それじゃねよっか……」

 時ちゃんはそう言い残して、ベットに入ってきた。私の横で棺桶に眠るみたいに、足を伸ばして仰向けになって寝息を立てた。

 いつもみたいに私を襲うことはしなくて、私は時ちゃんの左腕の裾をぎゅっと掴んで瞳を閉じる。

 時ちゃんのお日様の香りを鼻につけて、眠気を誘った。

 早く寝なきゃ……夢は見れない。


 ガララ……


 なにかが開かれる音がする。

 金属同士が擦れて耳に残る音。

 ドアが開く音はもっとスムーズな気がするし、引き出しを開ける音はがたんっと段差が外れるような音がする。

 じゃあ何の音?

 そう不審に思った瞬間、私の頭は強い力で押さえられ、口元に粘着質のあるものを張られ、悲鳴を上げても響かない。

 目を見開くとそこには知らない男の人たちがいて、私をさらに拘束し始める。暴れる手も足も三人がかりだと、一瞬でぐるぐる巻きにされる。知らない男の人たちは、やっぱり夢と同じ黒ずくめの姿をしていた。

 そしてこの後、運びやすくした私を窓から投げて運んで車に乗せるんだ。

 でも、私の隣には時ちゃんがいる。

 私の大切にしてる朝ご飯も時間も居場所も、そのほとんどをあげてしまった時ちゃんが、何とかしてくれるんだ。

 そう、思っていた。なのに、

「すぅすぅ」

 その内の一人が呟く「こっちはどうする?」

「寝ているなら寝かせおけ」

 ……え? うそでしょ? だって時ちゃん……私を守ってくれるって……

「だが、寝てるふりをしてるかもしれない、俺がしんがりになって見張るから先に行け」 そういう手はずになったのか、知らない男の人たちは窓から私をお外へボールみたいに放り投げ、塀や屋根に隠れている仲間に受け取らせる。そこから忍び足でこそこそと移動していった。

 信じられない……今日の私はこれで終わり? この後はしんでまたあした?

 運ばれている間、私はただ茫然と真っ白になる頭の中で、何がいけなかったのか考える。まだ足りなかったのかな。時ちゃんはまだ私を許してくれないのかな? そりゃそうか。今の今までずっと一緒にいても、心の奥では鬱陶しいって、友達でも親友じゃないからって、ずっと遠ざけてきたんだもんね。

 ――それじゃあ、次があればもっと時ちゃんに優しくしなきゃ……

 運ばれる場所は意外に近くだった。個室みたいな大きい車内を持つ車の荷台に乱暴に乗せられる。二回目だから車の外見とナンバーを記憶した、時ちゃんもこうやって覚えていったのかな。

 知らない男の人が私の頭を二回撫でてくる。よく見ると、黒ずくめの恰好から唯一覗ける男の目は優しそうで、どこかで会った気がした。そう感じるのはこれが二回目だからなのかな。

 車が移動して止まる。誰かが追加で乗った。誰かなんてすぐにわかる。蛍光色の明かりが車内を照らす。その顔に特に驚きもしない。

「こんばんわ、なかなかおとなしいのね、もっとうーうー泣いてるものと思ったわ」

 あの女の人だ。また私に大人のお話でもするのかな。車のエンジン音が大きくなる。また車が動き出そうとする。女の人がカセットテープに電源を入れる、その時だった。


 ガタンッ……と何かが壊れる鈍い音がして、車内が傾いて揺れる。


 車を運転していた男の人が何事かと声を荒げながら、ドアを開けて外へ出る。女の人もそれを追うように窓に張り付いて、お外の様子を見ている。

 その瞬間、荷台のドアが開いた。

 寒い風と共に誰かが乗り込んできて私を飛び越える。だんっと力強い音が響いて、黒の革靴が目の前に現れる。女の人がそれに反応する前に、その誰かはじゃらりと黒光りする無機質な機械、銃を女の人に向けた。

「騒いだら撃ちます、手を挙げて大人しくしててください。言うことをきいてください」

 その声を聞いて、誰かが誰であるかはっきりした。ううん、ドアが開いた時から来てくれたって、はっきりしたんだ。

 肩口に沿うように切り揃った天使の輪が現れる綺麗な髪、肩とお腹を出した黒くてかっこいいシャツと赤いスカートだけの服を着た姿。

 銃を構えてけん制する後ろ姿が、ドラマや映画に出てくるかっこよくて強い女の人みたいに見えた。

 助けに来てくれたんだね、時ちゃん。

 それから女の人は、前の席から入ってきたさっきの知らない男の人たちに拘束されると騒ぎ出した。でもその前に時ちゃんが荷台のドアを閉めるから、その騒ぎ声は外には漏れないんだ。

 いつの間にか、知らない男の人たちは時ちゃんと協力してるみたいだった。だったら、最初からそうしてよ。私をこんな怖いところに連れてくるのを止めてほしかった。

 でも、こうしなきゃいけない、きっとこれが必要なことだから、こうしたんだよね?

 女の人は裏切るの? とか、前金は払ったとか、彼氏をどうした? とか言ってたけど、その口も私みたいにガムテープを張られてうーうーと唸るだけになった。なんか滑稽に見える。そうして大人しくなった女の人は頭から麻袋をかぶされている。もっとやっちゃえ。

 それを見ているのも飽きてきた。

 そろそろ私の拘束と口元のガムテープをはがしてほしいと思う。だけど、時ちゃんや知らない男の人たちは女の人ばっかり構っていた。

 やがて、時ちゃんはこちらに向き、あの怪しげな薬品を私の鼻に近づけてくる。

 なんで? それを嗅ぐと私はどうなるの?

 そう言いたいけど、口元のガムテープが邪魔。でも私の言いたいこと分かるでしょ? 時ちゃんなら私と一緒に、いつも一緒に居るからわかるでしょ?

「くーちゃんはちょっと寝ててね……」

 え? どうして……これも必要なことなんだよね? 時……ちゃん……?

 私は意識を失う。鼻につーんとくる嫌な臭いで寝かされたんだ。

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