第36話 しゃれこうべ

 足の踏み場もない、骸骨の山である。

骸骨は、皆一様に向こうを向いている。


漆黒の闇の中に、白い骸骨の群が無数に見える。

何も聞こえぬし

声も出ない。


足は、辛うじてわが身に付いている。


同じような角度で整然と並んでいる、しゃれこうべ!

「ここは、何処ぜよ」

我が身の声が、震えてはいるが、少しだけ出た。


うううううっーーーーうおーーっ!!


骸骨たちが呻き始めた。


ウオーーッ!!


骸骨の顔が一斉に龍馬を睨んでいる。

その数、およそ三百体?いや五百体?

いや、もっと居る。すごい数だ。


骸骨の顔以外は、闇、闇、闇。

深い深い闇がどこまでも続いている・・・・。


大きな暗闇の宇宙の中に

骸骨の群と、龍馬が相対している。


闇は、大きな、絶対的に大きな、宇宙そのものである。


「ここは何処ぜよ?和馬?和馬?何処ぜ?」

・・・・・・・・。

誰も、誰も・・応えてくれぬ。


骸骨は、放射状に並んでいる。

龍馬の周りは、全て骸骨である。


何と言うことぜよ。

おらあ、どうしたんやろか・・・。


落ち着け龍馬 これは夢じゃ。

夢じゃのうて、こんなことがあるもんか。


自身に言うて聞かせるが、足は小刻みに震えている。


オウー、オウー、オウー龍馬 龍馬!


誰かが龍馬を呼んでいる・・・。


龍馬!人間は、みな同じじゃぞ。

みな、しゃれこうべである。

一皮剥けば、みなしゃれこうべじゃぞ。


顔や性格に違いがあれど

人間は、みな同じ人間じゃ。


金持ちも貧乏人も

侍も百姓も、みな同じ、しゃれこうべじゃ。


よいか?わかるか?

このしゃれこうべの上に

様々余計なものを身にまとい

争い続けているのが人間じゃ。


みなが同じで

同じように生きることの出来る世を作れ!

龍馬にその魁を託す。


良いな。

おぬしは一度死んだ身ぞ。

忘れてはならぬ。


みながみな同士、穏やかに生きることの出来る郷を作れ。

難しい仕事じゃぞ。誰も出来ぬ仕事じゃ。


道半ばで遭い果てるやもしれぬ。

しかし、一度は死んだ身じゃ。

もう一度ここに立ち戻るまでに

仕事をやり抜けよ。


しゃれこうべ達が一斉に龍馬を見た。

その射抜くような視線の群に圧倒されて

龍馬は、再び気を失った・・・。




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