伍の戦 ≪ 査定する女 ㊤

 


『今の若者たちに対してひとつだけ安心しているのは、彼らが、戦争でいちばん役に立たないタイプの人間だということ』── 宮崎駿



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■ 陽向ケ原高校2年4組の生徒

  桐渓きりたに 更紗さらさ ── 曰く





 コンビニのビニル袋を頭に被せられて硬い床に突き刺さられた吹田源治。頭を黒いブラジャーで包装されて闇へと落とされた乾丞秀いぬいじょうしゅう。簡単にスカートを脱がされて顔面にミドルキックを喰らった三枝虹子さえぐさこうこ。観衆の面前で矢継ぎ早にツネられ、そのあまりの激痛に背中を向けて逃走した五十嵐力弥いがらしりきや


 隙だらけの背中だったのに。ブラで絞首すればよかったのに。脱がさなくても勝てたろうに。面と向かって相手をしてあげても勝てたろうに。


 しかし、あの少女は違った。正正堂堂とした手法はいっさいも用いず、対象を屈辱的な目に遭わせてから倒した。蛇足とも読み取れる下準備をしてから一気呵成に料理した。


 佞悪邪智えげつない。


 もしもこれが狂犬グループの仕業ならば、単なるサディストの嗜癖だと判断されるだろう。ところが、彼女は非常に勤勉な少女である。硬派を貫き、統制を敬い、伝統を愛でる、まるで幕末の志士のような少女なのである。つまり、いわゆるSMの趣味嗜好とは明らかに色味カラーが異なるということになる。


 がゆえに、その蛇足のような演出の数数に、秘められてあるのかどうかもわからないような意味深長な哲学の存在を勘繰ってしまう。彼女のあの行動は崇高なナニカの隠喩なのではないか?──とかとか。


 純文学の趣なのである。


 さて。


 文学とはなにか?


 大人になるための教材である。優劣をけみするための指示薬リトマスである。勝敗を分かつためのふるいである。また、勝ち組にとっては絶対の聖書バイブルであり、負け犬にとっては謎めく暗号文サイファーである。


 大人になるための試験のルールは単純であり、また、ややこしい。確かにこの試験、二者択一クイズという子供じみたものではあるのだが、答えとしての正解を選んだほうが合格するというクイズ方式ではなく、AかBか、多人数に選ばれるほうを選んだほうが合格するという、多数決のクイズ方式なのである。仮に、答えとしてはAが正解だったとしても、必ずしも合否に響くわけではない。むしろこの場合、より多くの参加者がBを選んで集まっていたらBが正しいということになってしまうのである。


 ゆえに、試験に勝つためにはまず社会を知り、経済を知り、需要を知り、世論を知り、隣人の顔色を知り、出し抜く妙味を知り、不要とわかれば断捨離する合理性を知り、それでいて微笑みを忘れない建前技術を知り、社会貢献にも積極的な意識の高い人間であることを周知するための宣伝力を知る必要がある。これらの常識を知らずして、より多人数の選ぶほうを予測することなどできない。要するに、少数派マイノリティであってはならないというわけである。


 こうして、試験に合格した多人数至上主義者のことを初めて「大人」と呼ぶ。苛烈な競走社会に勝利した、大人とは、泣く子も黙る上流階層を指すのである。


 中でも、文学は大人となるために必要不可欠な、イの1番に知得していなくてはならない必修科目。特に、大人としての成功者に多くの文豪を誇り、文才に秀でた者を誇り、あるいは絶佳の古文書を奉る者を誇る日本においてはなおさらに。


 日本国は文系国家である。新型細胞が発見されれば、臨床試験の未来へと思いを馳せるよりも前に、発見者である科学者の価値観や人生哲学ばかりに思いを馳せたがるほどの文系国家である。新型細胞のDNAがチクソ性なのでニューロンの免疫学的にアポトーシスの重力波を──などと語る少数派ごときに生活の場はない。


 やはり、文学は聖典リグ・ヴェーダである。


 ゆえにか、一人前の大人になれるや否やという瀬戸際のストレスにあえいでいる若者ほどライトノベルズを好む。最後の反抗期と言わんばかりに、いちいち背筋を正して読まなくてはならない文学を嫌い、額面どおりに文字を追っていればいいとする軽佻浮薄ライトなスタイルをこよなく愛している。


 例えば、禁則処理の不適正、品詞の曖昧さ、情景描写の稀薄さ、設定の月並みさ、哲学のなさ、一人称の不統一、イケメンの跋扈ばっこ、異世界の乱立、悲劇のヒロインを気取る無自覚な自己中心女の実権支配──などの点をあげては「ラノベは文学にもとるもの也!」と嘆きたがるのが大人というものである。しかし、苦悩の道にある若者からしてみれば、そんな抹香くさい勝利者インタビューなんぞ笑い種である。いやそもそもラノベは文学じゃねぇし──ちゃんちゃら可笑しいコントなのである。


『しっかり本を読みなさい!』


 基礎を説き、隠喩を唱え、浄化カタルシスあげつらい、佳麗を言祝ことほぎたがる大人に対し、若者は皮肉でもってこう返す。


『だったら本を読んでなさいw』


 喧嘩も同じ理屈である。


 賢い大人を嫌い、反面教師としている若者ほど単純な腕相撲を好む。そして「好まない上流階層エリートはつまらない」ときおろす。反対に、賢い大人を正義と信じている若者ほど複雑な心理戦を好む。そして「好まない無法者デスペラードはくだらない」と扱きおろす。


 ヒナ高の生徒は前者である。拳骨の使用を躊躇しない気力が愛され、次いで凶器の使用を躊躇しない胆力が愛され、次いで御用提灯に頓着しない揚力が愛されている。いずれにしても文学からは程遠い阿呆高校の生徒。そんな彼らもいずれは成人するのである、これすなわち、ヒナ高ほど瀬戸際にある教育機関はない──と、ここまで考えて、


(ま、瀬戸際でいいんだけどね)


 桐渓更紗は笑ってしまいそうになった。


 暴力をこよなく愛しているような阿呆な餓鬼どもが勝ち組にでもなれば、かくいう桐渓もまた困るに決まっている。


 物騒な社会は『北斗の拳』だけで充分。ヒナ高に社会保障は要らない。瀬戸際でいい。


(いけないいけない)


 罪悪感の薄れやすい環境にいるせいか、正しい社会を皮肉る癖がついていて困る。住めば都かんせいの法則か、自分の置かれている環境をつい正当化したくなるのである。が、それももはや已むを得ないことなのかも知れない。なにせ、女子同士の喧嘩の決着がプロ格闘家も顔負けのミドルキックだったりするのだから。


 ラノベの愛好家と阿呆な餓鬼どもを同じ土俵にあげて考えるというのも、まぁ、だいぶん乱暴なお話ではあるが。


(そう、これはあの少女のお話だった)


 大人社会の座標から完全に外れているヒナ高の生徒であり、大人が絶対にやらないような佞悪邪智えげつない闘争決着をつけるのにも関わらず、不思議と、大人の世界に通ずるような馥郁ふくいくたる文学性を勘繰らせる少女のお話である。


 ゆえに、今、桐渓は玄関にいる。


 そろそろ黒糖麸菓子の色を帯びてきた、喧嘩には不向きな夕方の玄関に。



 ⇒ 20XX/09/05[水]17:XX

   東京都豊島区南池袋

   陽向ケ原高校の生徒専用玄関にて



 こんなにも遅くまで校内に残りたがる猛者はほとんどおらず、たまに職員室のある上階から戸の開閉音が聞こえてくるだけ。それを省けば、人工的な音は皆無に等しく、匂うように漂ってくる蝉時雨さえも静寂の演出なのではないかと錯覚してしまう。聞こえているから聞こえない。


 くすぐったいほど静かな玄関で、桐渓もまた静かに待っている。出入口の観音扉、その脇に据えられる傘立てのへりに腰をかけ、窓硝子にもたれかかってバランスよく、膝を揃えて行儀よく、あの少女のあらわれる瞬間をじっと出待ちしている。


『わがっででも、ぐやじい……!』


 頭まですっぽりと毛布を被り、震え、殺しきれずに啜り泣く三枝の小さな姿が、いまだにぴったりと桐渓の脳裏にこびりついている。


 彼女は、入学初期からの親友だった。


 入学式の数日後、3年生の男子集団にレイプされかかっている三枝とたまたま遭遇、あまりの理不尽にカチンときたから助けに入った。愚かな先輩たちは簡単に追い払われ、でもやっぱり怖かったのだろう、初対面の桐渓に抱きついて号泣する彼女。そして、やがて落ち着くも束の間、


『内緒にしといてくれ』


 すんと鼻を鳴らしつつ、号泣した姿を秘匿するよう嘆願。


『でも、逃げ得を与えちゃわない?』


 そう尋ねると、三枝は天を睨んだ。


『ひとりずつなら、負けねぇ』


 それから1週間のうちに、愚かで可哀想な先輩はひとりずつ緊急搬送された。ある者は頭蓋とうがいを割られ、ある者はアキレス腱を断たれ、またある者は喉仏を砕かれ。


 これ以降、桐渓は強姦未遂事件の記憶野に蓋をした。三枝も三枝で、まるでなにごともなかったかのように意気軒昂と話しかけてきた。昼食をともにし、手作りだという緻密な弁当を摘まみ食いした。それから、一緒に夏祭りを楽しみ、隅田川のテラスに並んだ。普段の鋭さとは打って変わって、湾曲うねる川面をぼおっと眺める彼女の横顔はくすぐったいほどに静かで、清らかだった。


 桐渓だけが知る三枝の素顔。


 淋しがり屋で、一途な素顔。


 憤怒で傷を治癒したい素顔。


 その顔が、無情に叩かれた。


 派手な打撃のわりには特に出血はなく、意識もはっきりとしていた。しかし、精神的なダメージは深刻だった。嘗められているとわかれば公安警察にも喰ってかかりそうな闘魂娘なだけに、完膚なきまでに叩かれ、却って硝子の心と化してしまったようである。なにより、保健室まで搬送した者こそ失神させた敵であり、しかも搬送手段がお姫様だっこだったのだからなおさらである。


『敵の世話になってりゃ世話ねぇやな』


 元ヤンの養護教諭、小西香里奈こにしかりなの容赦ない皮肉に、加えて桐渓の、


『やりとげた?』


 率直な質問で息の根が絶たれてしまったらしい。奥歯を噛んで頬を強張らせると、にわかに毛布を被って泣いてしまった。


『わがっででも、ぐやじい……!』


 気の毒だとは思ったが、しかし敗者への情けほど残酷なものはないと、その程度のことはわかっている。


 噤むしか方法はなかった。


(応えてほしかったんだろうな)


 三枝の、強姦未遂による生理的苦痛トラウマから解放してくれた少年に対する恩情のような恋を知らないでもない桐渓は、そんなようなことを徒然と思う。だからなにができるわけでもないのだが、一途な彼女が枕を濡らして敗北を自覚していくのは、親友として、見るに忍びなくもある。


 負を自覚するのは、淋しいものである。


 ゆえに、桐渓は決心した。


 これは、報復ではない。


 査定である。


 桐渓の手で、


(鬼門陰陽流かぁ)


 この手で、親友の勝敗を審判ジャッジする。


(弁えて済む相手ならいいんだけど)


 と、その時だった。


 視線の先に伸びる階段を、のしのしと、悠然とおりてくる人影があった。


 背丈は170㎝を超えている。肩幅はがっちりとしていて、ブレザースカートから伸びる太ももも肉厚、スピードスケートの選手を思わせるアスリート体型である。ただし、ウエストのくびれが女らしい曲線カーヴなので、そこに気づきさえすれば、仮にパンツスタイルでも性別を見間違えることはないだろう。もちろん、女性に見慣れていない初心うぶな男であれば男性だと判断してしまうかも知れない。さらにはその筋量に目を奪われ、


(おっぱい、おっきい)


 優秀な眼福マテリアルすらも平たく錯視し、夜のオカズを見落とすことウケアイ。


(なんて恵まれたカラダ)


 身長、筋量、脂肪量、目算される体重はもとより、吊り目、高い鼻、幅の広い口、鋭い糸切り歯、尖った顎、漆黒のショートヘア、豊満な乳房に至るまで、桐渓とは正反対の属性エレメントが揃い踏み。揺らがない強靱さと妖艶ささえも感じる。高校生とは思えない整った巨乳が支障ネックのようにも見えるが、しかし敵の欲目に付け入るのであればそれもまた有能な兵器となろう。


(真面目にやったらバカを見そうだな)


 市街戦用のカモフラージュ柄が施されるバックパックを左肩にさげ、マグニチュードを錯覚させる逞しい足取りで玄関フロアへと到着。顎を引き、胸を張り、軍人のように直角に折れると、彼女はまっすぐに自分の靴棚を目指した。


 途中、ぎろり、獣のように泰然とした瞳をこちらに寄越す。


 桐渓はころんと見つめたまま。


 しわしわしわしわ──団体を個体にする蝉時雨。生き物なのに、なぜか風景として成立する霊験あらたかな虫。なるほど、庭木の葉擦れは聞こえてこず、凪いでいるようだが、もしや彼らも風の仲間なのかも知れない。


 あぁ、そういえば、いつの間にかヒグラシの鳴き声を聞かなくなった。ニイニイ蝉のように、滅ぶのも時間の問題にあるのか──。


 つらつらと物思いにふけっているうちに、少女は、特に気にする様子もなくドミノの靴棚へと向かった。戸のついている箇所とついていない箇所とで斑模様になって、鉄製の箱が整列している。


 歴戦の傷跡が生生しく残る靴棚にあって、彼女のローファーは野晒しになっていた。戦利品だとうそぶくため、怨みを抱く餓鬼がミニバールのようなもので戸を外して持ち去ってしまったのだろう。とはいえ、彼女、取り立てて不当を訴えたことはない様子。むしろ便利であると言わんばかりの涼しい顔で、靴のバックステイを摘まんで持ちあげた。


 持ちあげて、固まった。


 焦茶色のローファー。


 靴底を、射貫くように注視している。


 その動作を確認した桐渓、わずかに顎を流して窓の外に横目を馳せると、


「……鳥目ではないらしい」


 ぽそりとひとりごちた。


 その直後だった。目は外に向けたまま、桐渓はお尻の脇に置き忘れられている雨傘を引き抜いた。そして左手の拇指を弾いて結びをほどくと、スイッチを右手に、スライドバーを左手にして、強引に前方へと開く。


 ぼんッ。


 突風のような音で傘は咲き、


 どそっ。


 重い物の落ちるような音と、


 ぽつっ。


 水滴のような音も混じった。


 それから、視線をもとに戻す。


「ちぇ。蝙蝠こうもり傘だったよ」


 漆黒のスクリーン、その中央のあたりに、黄金色に輝くドットが突き刺さっている。


 靴底に眠らせておいた、画鋲がびょうの針先。


 ひと呼吸を置いて立ちあがる。山折り、谷折りの折り目に倣って丁寧に傘を畳む。もとの場所へと返却し、ようやく標的ターゲットを見た。


 およそ5m先、靴棚エリアのわずか手前、右手を前に伸ばし、不出来な影絵のキツネを象らせる少女の姿。こちらに無表情を向け、まっすぐに立っている。


 どうやら、


(わお。すごい握力とコントロール)


 デコピンで画鋲を投じたらしい。


 迷彩柄のバックパックは棚と棚の狭間に落ちている。投擲とうてきした拍子に落ちたのか、わざと落としたのか。


 しかし、桐渓は意に介さず、


「靴に画鋲を入れておくなんて、幼稚なことをする高校生がいたものだね?」


 腰まで届くダークアッシュブラウンのロングヘアを左の手櫛コームきながら、淡淡と、しかし溌剌はつらつとしてもいる足取りで少女のほうへと歩を寄せる。


 かろうじて手の届かない距離まで歩み、滑らかに斜に構えて停止。


 仄かに、甘い香りがする。


 ディズニーランドの香り。


 確か、チュロスだったか。


「百目鬼歌帆さん──だよね?」


 あっけらかんとした口調で尋ね、まるで捨てるように右手を差し出した。


「あたしは更紗。よろしくね?」


 掌の上に、画鋲を乗せたまま。


 百目鬼は、


「お顔は、存じあげております」


 興味津津の笑みを浮かべ、その右手を凝視。


「ですが、会話をするのはおよそ初めてのことだったでしょうか」


 尖った牙で澱みなく言うと、


「こちらこそ、お願いいたします」


 躊躇なく、画鋲ごと握手した。


「お」


 腕相撲のプロは掌を組んだ瞬間に相手の戦力がわかると言うが、腕相撲にまったく興味のない桐渓にも圧倒的な戦力差を感じ取れた。まるで、迫り来る万力のよう。


「うん、痛い」


 無表情で頷く。


 そして、彼女の右の肘を左手で摘まんだ。厳密に言えば、肘関節の内側に伸びている細いコードを。


 ファニーボーンを。


 すると、わずかに百目鬼の万力が緩んだ。そのすきに桐渓は握手を滑らせて親指を捕縛キャッチ。次いで、彼女の肘から先を反時計回りに捻ろうとして、


「おー」


 やめた。


 呆気なく手をほどき、素早く1歩後退。


「あぶないあぶない」


 掌に伝わる感触から、百目鬼の微妙な体重移動を読んだ。高確率で『胴回し回転蹴り』が飛んでくると予測したのである。


 そんな派手な大技、喰らいたくもない。


別嬪べっぴんな空手も使えるんだね」


 麻痺の残る右手を振りながら微笑む。


 百目鬼もまた微笑み、いまだ画鋲の突き刺さっている掌を見つめながら、


尺骨神経しゃっこつしんけいの位置を正確に把握し、精確に刺激する──どうやら柔術に通じているご様子」


 取り除かず、ゆるりとおろした。


「一連の所作を拝見するに、鬼門陰陽流が努めて研究したる大柔術の、まこと、ソレそのものであると確信いたしました」


 たったアレだけで見抜いている。


巌桐流げんとうりゅうの秘蔵っ子がヒナ高に通い、また女性であること、予てより聞き及んではいましたが」


 噛み締めるように言うと、


「桐渓さんとはあなたのことでしたか」


 にいと笑った。


 笑うはずのない狼を連想する。戦力分析を怠けさせるので安易に思うべきではない「百戦錬磨」という形容詞ワードさえ、容易く脳裏をよぎる始末。


 これも忍術か。


(いや、最初はなから知ってた?)


 だとすれば嫌味な少女である。


「画鋲、抜かないんだね」


 唇を尖らせて感心すると、おもむろに、桐渓は自身のワイシャツの胸ポケットに右の指を挿入。取り出したのは、新たな画鋲。


 右の掌の上、凸の形に、これ見よがしに画鋲を整形。そして再び百目鬼へと差し出した。


「ゴメンね。歌帆さん。痛かったよね?」


 にっこりと、満面の笑み。


 そう、


「だから仲直りの握手しましょ?」


 査定はまだ、終わっていない。





   【 続 】




 

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