ゲーム実況編

開かずの扉よサヨウナラ

「さて始まりました、トーカのゲーム実況! 今回やっていくのは、今話題のフリーホラーゲーム『開かずの扉よサヨウナラ』です! それでは、最初からっと……」

「先輩には、電話越しにゲーム実況されはじめた僕の気持ちなんて分からないでしょうね」

「友だちに勧められて見始めたんだけど、ゲーム実況って面白いよね!」

「僕は見たことないので知らないんですけど」

「それはもったいない! 1回歪みさんの動画見てみてよ。URL送るから」

「は、ハンドルネームからしてヤバそうなので、遠慮しておきます」

「それはそうなんだけどさ! 名前以上の感動をお約束するから!」

「そんなにですか?」

「うん、そんなに!」

「……やっぱり、遠慮しておきます」

「ええー」

「代わりに、先輩の実況でも聞いてあげますよ」

「すっごい上からだね」

「聞かせてください」

「仕方ないなあ。それじゃ、プロローグ読むね?」

『あれは今から十年前、私が小学生の時だった』

「過去回想から始まる感じですか」

「みたいだね」

「あっ、そのゆがみさんが実況したゲームをやってるわけじゃないんですね?」

「これは別の友だちにお勧めされてたやつ。初めてやるよ」

「そうですか。ついでに聞くんですが、先輩ってホラー苦手じゃありませんでしたっけ?」

「だからこうやって君に電話をかけることで、怖さを和らげてるんだよ」

「電話越しで騒がないでくださいね? うっかり切ってしまうかもしれません」

「うわっ、非道だっ」

「どっちが非道だか」

「でもでも、10分程度で終わるらしいから大丈夫だって!」

「……」

「と、とにかく進めるからね」

「はいはい」

『私の通う小学校には、開かずの扉と称される怪談があった。その扉は旧校舎3階の奥にあり、いかにもといった禍々しい雰囲気を放っていた』

「どんな扉ですか?」

「えっと、どんな?」

「イメージ画像が表示されてたりしませんか?」

「赤黒くて、重たそうな扉……」

「いまいちイメージしづらいですね」

「うう、なんか血まみれの手とかがいっぱい触ってそうだよ」

「さっきよりイメージしやすくなりました」

「良かった。じゃあ、次にいくね」

『小学校では、その扉を開けた人間は2度と戻れないだとか、その先にいる怪物に食われるだとか、いろいろな噂が飛び交っていた。怖い怖いとは言うものの、幼い頃は恐怖心よりも好奇心のほうが勝るもの。ある日の放課後、私を含む何人かで、その扉を開けてみようということになった』

「数人の男女、多分学年も混合した子供たちのイラストが表示されてる」

「ふぅん……。先輩は、この後どうなると思いますか?」

「そうだねえ……謎の生物が出現して、謎の力で全員意識不明とか」

「曖昧な割に、恐ろしいこと考えるんですね」

「語り手だけがその力にかからないから……怖くなった謎生物は問いかけるの。『お前は何者だ』って。実は語り手もまた別の怪異で、逆にその怪異を取り込んでしまうの。意識を失っていた子たちは目を覚まし、どうしてこんな場所にいたのだろうとその場をあとにする。そう、開かずの扉という怪異が、この世から消えた瞬間……!」

「今までの展開でそこまで話が作れるなんて、想像力が卓越してますね」

「全然違うと思うから、先進めるね」


……

………


「……嘘でしょ」

「ぜ、全部先輩の予想通りでしたね。……もしかして、作者だったりするんですか?」

「そんなまさか! 偶然だよ!」

「出来過ぎた偶然ですね」

「こ、今度はもう少し長い話をやろう」

「そうですね。分岐とかあるやつにしましょう」

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