エピローグ

【エピローグ】



 終業式の日、あたしは沙奈の連絡先を未だに聞いていなかったことに気づいて、慌てて電話番号その他諸々の交換を済ませた。

 間抜けなことに、学校で直接顔を合わせることがあたしたちの中で当たり前の日常になりすぎていて、それ以外の連絡手段のことは頭からすっぽり抜け落ちていたのだ。


 夏休みに入ったからといって、あたしたちの逢瀬の頻度が減ったりはしなかった。

 むしろ授業がないぶん、一緒に過ごす時間は格段に増えた。

 毎日のようにお互いの家を行き来して、時には二人きりのお泊り会をしてみたり……。

 とにかく充実した日々を送っている。


 夏休みも後半にさしかかったある日のこと、あたしは沙奈といつもの駅前で落ち合った。

 だけど今日は、遊びに行くわけじゃない。

 ……いや、まぁ遊びに行くといえば、遊びに行くんだけど。

 沙奈にとっては、違うみたいだ。

 ひどく緊張した面持ちで、沙奈はぽつりと漏らす。


「……大丈夫かなぁ、わたし」

「大丈夫だって、沙奈がどんな子かはちゃんと話してあるし。もちろん、あたしたちの関係も」

「それはわかってるけど……緊張する……」

「沙奈が頑張って話そうとか思わなくても、あっちからガンガン突っこんでくるから大丈夫」

「……それはそれで、ちょっと嫌っていうか」


 あたしと沙奈の本日の行き先は、朱美の家だ。

 あたしの恋を応援してくれた大切な親友に、沙奈のことを自慢――じゃなくて、紹介しに行くのだ。

 人見知りの沙奈にとっては、だいぶハードルが高いようだけど。


「別にそんなに緊張しなくてもさ、普通にしてればいいと思うよ」

「普通って?」

「いや、あたしと二人きりのときみたいに」

「……無理」

「この内弁慶め」

「……うるさい」


 やれやれ。

 世話が焼けるなぁ、沙奈は。

 まぁ、そういうところも含めて可愛いんだけど。


「あ……」


 あたしは沙奈の手を取って、指を絡めた。

 するとすぐに、沙奈も力強く握り返してくる。

「大丈夫だよ、あたしがついてるんだから」

「……うん」

 肩を寄せてきた沙奈が、あたしの耳元で囁いた。


「大好きだよ、知夏」


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女王と孤高 かごめごめ @gome

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