第15話 たんぽぽ

 ある日、真が早く帰ると春が一人で外にでていた。

真はぞっとして、春を抱き上げ部屋に入っった。

誰かが来たり、動物に襲われたらどうすると言ってなじった。


 春は、真の真剣な表情におびえたように「ごめんない」と言った


 昔はこんなことはなかった。

 春に出会って一緒に暮らし始めてから、真には怖いものがたくさんできた。


もし、悪い奴が来たら、もし動物に襲われたら足の悪い春はひとたまりもないだろう

 そして寒い時期も怖かった。


 春が病気になったらどうすればいい

夜冷たい月が、細くあざ笑って見えるようになると春が冷えないようにずっと背中を撫でた。


 暖かい着物を得るために武家屋敷にたびたび盗みに入った。


「そんなに、心配しなくても大丈夫だよ」春がおずおずと言った

その手にたんぽぽが握られているのが見えて真はまたなんだかすまない

ような気持ちになった。


 怒ってしまった後で後悔するのもいつものことだった。

 「どうして?けがをしたらどうすればいい?」

 真は努めて優しく言うと春が笑ったのでほっとした。

「あの屋敷に行けばいい」春は言った


  あの屋敷とは春が最初にいたところだ

そういえば詳しいことを聞いていない


 「あの屋敷はなんなんだ」と聞くと春はぽつりぽつりと話し始めた





 



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