夏の終わり



 彼女は夏が嫌いだった。


 彼も夏が嫌いだった。






 太陽の光のように降り注ぐ、蝉の声が鬱陶しいからではない。

 突然、雨が激しく地面に打ち付けられるからでもない。

 時折、吹く風が生ぬるくて気持ち悪いからでもない。




 例え、蝉の声が永遠に聴こえても。

 例え、雨が永遠に振り続けたとしても。

 例え、生ぬるい風が永遠に吹き続けても。

 例え、色が永遠に無くなったとしても。




 風が吹いている。

 向日葵が揺れている。

 太陽が輝いている。





 そこには二人が眠っていた。

 彼女は彼を優しく抱いて。

 彼は彼女に優しく抱かれて。


 今、旅が終わった。

 長くて、短い旅だった。








 夏が終わった。












                  END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る