時は「樹治」の御世、その王朝が倒れる時、人は鬼となり、将は魔となる……

この国にも似た世界、似た国の、王朝の時代――「樹治」。
その「樹治」の時代において、帝の野心、すなわち先帝の偉業を超えたいという野心が、国を、人を動かし――時代を、さらなる乱世へと誘う。
その国の西北の府において、目付け役が死んでしまったことに端を発する戦。
帝の親征が行われる中、西北の府を治める家、宮中の文官、そして諸侯たちにおいて、その心中においても野心が蠢く。

この世界、この国における、朝臣や大名諸侯といった感じの人物たちが、乱世のはじまりのにおいを嗅ぎつけ、そして帝の凋落につけこんで、眠っていた野心、封じていた欲望を前面に出していきます。
特に、「魔将」と呼ばれる人物が、闇落ちする様は一見の価値があります。
一方で、「魔将」と呼ばれつつも、どこか寂寥の心持ちを抱く様は、人間くささを感じさせます。

ひとつの世界、ひとつの国、そしてひとつの時代の有り様を描く、否、造り切った逸品です。