古い下着を雑巾にする人っていたよね (前編)

「インテルって、どこに入ってるのかな」


「やめようね」


〜〜


「あ」


「あ」


休日。いや、ニートの俺からすればエブリデイがホリデイなんだけど、まぁそれはどうでもよくて、世間的に休日とされてる土曜日。


スーパーで、花上さんと出くわした。


服装チェック。なんと、制服だ。一応年齢的にはまぁなくはなけれど、中身を知ってる俺からすれば、なかなかキツイものがある。主に、変態的な意味で。


「違う。違うの」


「あっ、人違いでしたか。さようなら」


「違うの!」


カートを押しながら、すごい速さで花上さんが迫ってきた。ぶつかる寸前で避ける。


「殺す気か」


「こっちのセリフだよ」


「何で」


「社会的に死ぬところだった。危ない危ない。まさかこんなところに知り合いがいて、なおかつその知り合いは私の実年齢を知っていて、私があまりに着る服がないせいで制服なんて着てスーパーに来てることまで知られたら、もう生きていけないもの」


「哀れんでほしいの?」


「同情するなら金をくれ」


「名台詞を汚すな」


「お願い〜!」


突然、花上さんは俺の服にしがみついてくる。さすがにこれでは人目を集めてしまう。


「落ち着いて。なに。何がお願いなの」


「お金をちょうだい」


「あのね」


「くれないなら、今ここであなたに襲われたって叫んじゃうよ」


「二話前に聞いたよそれ」


「まぁ襲われてもいいけどね。お金さえくれるなら」


「本当にその境遇で発言していいセリフじゃないよそれ」


この人、下ネタキャラだよな。貧乏キャラじゃないよな。今更になって小説のタイトルが変わるようなことしないでほしい。


「もういっそどこかの汚いおっさんに襲われたい。そういう生き方もありかもね」


「だいぶ心が弱ってるね」


「だって、あなたがきっと来てくれると思ったのに、一週間もお預けなんだもん」


「……それ、一週間誰も来なかったってこと?」


「ねぇ小太郎くん。それ、十円玉の裏面は、平等院鳳凰堂が書かれてるって言ってるようなもんだよ」


花上さんは泣きそうになりながら言う。例えに十円玉が出てくるあたりが貧相だ。五百円に頬ずりするような人だしなぁ……。


「ちなみに、今の所持金は?」


「五千二百十五円」


「まぁまぁあるじゃん」


「某胸を揉む店くらいならいけるね」


「いけるかな」


ギリギリ足りないような気がする。いや、行ったことないよ?


「でも、給料日まであと二週間……。そう考えると、苦しくない?」


「苦しいね」


「だからお願い。ねぇ、お願い」


「ごめん。俺も今月ピンチだからさ」


「ピン◯ロ?」


「無理があるよね」


調子が出てきたのか、下ネタが増えてきたな。ここら辺で立ち去りたい。


「じゃあ、俺はこれで」


「待って。わかった。せめて、私の店で何か食べて行ってよ」


「……えぇ〜」


あの五百円の朝食セットクオリティを、わざわざこの夕方に?

メリットが無さすぎる。だけど、この貧乏人、このままにしておいたら、何するかわからないし……。


「……わかった。その代わり、それで今日はもう勘弁してね」


「わーい!ホテル代込みでいいよ!」


「何をするつもりなの」


「……いや、この時期冷えるから、私のためのホテルを用意してくれないかなぁって」


「下ネタを言いたいのか貧乏ネタをいいたいのかはっきりしてよ」


そんな感じで、俺たちは喫茶店へ向かうことに……。

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