理系男子と始める恋

鈴丸。

Ω 1

高校三年の四月。

無事進級することのできた私は、校舎の隣にそびえ立つ大きな桜の木がはらりはらりと美しい桃色の雨を降らせる中、小走りで靴箱前へと向かう。


他の生徒も同様に期待と不安を入り混じらせた様子で靴箱前へと向かっている。


沢山の生徒で賑わう靴箱前。

背伸びをしたり体を左右に倒したりしてやっとの事で名前を探し出す。


3年2組18番 成瀬 莉奈


周りが落胆の声や嬉しそうな悲鳴をあげる中特に何の不満も喜びも無い…つまり、1番楽しくない結果となった。

まぁ、悪くないだけマシだと言えばそうだけど。


親友のサナと離れたのは正直寂しい気もするが、クラスが離れたくらいで疎遠になることもないだろうという安心もある。


「リナ…!!離れちゃった…。泣きそう。」


そう言って唇を尖らせている彼女こそサナだ。


「仕方ないじゃん。毎日一緒に帰るから寂しくないよ!」


そう言って笑ってみせる。


渋々教室へ向かったサナの背中に小さい声で〝頑張れ〟と、そう呟いてみる。


さぁ、自分も頑張らなくては…!と気合いを入れて教室へ入る。


生徒数の多いこの学校だからなのか、それとも私の記憶力が悪いのか…顔すら見たことない人が数人はいる。


なるほど。名簿を見たときに特に思う事がなかったのもその為か。


全員が席に着き担任がやってきた。

担任は生徒からも好評の鈴木先生。

ごくごく普通の先生だが、何となく頼りないくせに努力家なところがその人気の秘訣。


「じゃあみんな、周りの席の人覚えておくように!!明日からはみんなで勉強して行くからな!教え合いするのは大事だぞ〜」


なるほど。私はキョロキョロと辺りを見渡した。


もちろん、そこに彼の姿もあった。


が、その頃の私は彼のことなど知る由もない。

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理系男子と始める恋 鈴丸。 @Suzumaru

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