第7話 あの時の眼差しは忘れない

「最初の夜の久恵ちゃんの眼差しが忘れられない。久恵ちゃんが手を握り返してきて、明かりを消したとき、月明かりで一瞬見えた、もの悲しそうなうるんだ眼が。今でもはっきり目に焼き付いている。きっと一生忘れないと思う。あの眼を見たとき、思い切り抱きしめたくなった。今でも思い出すと抱きしめたくなる」


「よく覚えていない。でも、あの時、うれしくて、少し怖くて。明かりを消してもらったけど、顔を見たかった。パパはとても優しい顔をしていた」


「あんな眼は、あの時の一回だけで、その前もそれからも見ていない。ほんの一瞬のことでも一生記憶に残るんだね。だから今、この時この一舜を大切にしたいと思う」


「私も」

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