PART:5
ザウルスファイターから飛び降り、もといた場所に帰ってきたザウレッドの周りに駆け寄るチェリーブロッサムたち。そしてザウルスジェットの中からはザウレンジャー達と一緒に戦った戦隊や魔法少女、さらにはバットレンジャーたちまで集結した。
「あなた達は……」
「あまりにも事態が大きかったから、魔法界戦隊協会共に重い腰を上げたんだよ。私たち以外にも、多くの戦隊や魔法少女が浮上装置の破壊と住民救助に向かっている」
「それに君たちの行いに、私たちも気づかされたよ。戦うべき相手は別にいるとね」
シビュラレッドの周りにもシビュラブラックとシビュライエローが集まる。戦闘を再開しようとするザウレンジャー達の前に、バットレンジャー、ウォーターリリー、バーチャルピンク、カスタード達が出てくる。
「ここは私たちが引き受けます!皆さんは装置の破壊を手伝ってください!」
「でも、今私たちが行っても!」
「今日はお土産持ってきた。それ持っていきな!」
ブラックバットがそういうやいなや、ザウルスファイターのコンテナ部分が開き、中から5体の恐竜型メカが飛んできた。
「あんた達のメカが完成したのよ。あれに乗って行きなさい!」
「装置を壊した後は任せて。無事に着陸させるから!」
バーチャルピンクは誘導弾を発射し、恐竜メカを誘導した。恐竜メカは五人のモチーフになっているティラノサウルス、パキケファロサウルス、カスモサウルス、ステゴサウルス、アンキロサウルスの形をしており、背中の部分にあるジェットで飛行していた。
「解りました。みんな、お願いします!」
五人は頷き合うと、それぞれのメカのコックピットに飛び乗った。ザウレッドの横にはチェリーブロッサムが一緒にコックピットに入る。
飛び立っていた恐竜メカの後を追おうと飛ぶシビュレンジャー。だが地上にいるカスタードの相手を拘束する魔法「スイートリボン」で体を拘束されバットレンジャーのバットシューターで撃ち落された。
走ればかなりある距離でも、恐竜メカに乗れば一飛び。五つのメカはそれぞれ5ヶ所に設置された装置の目の前に不時着した。
「みんな、このままじゃ大気件突破も時間の問題だ。だからなるべく急いで、しかし決して慌てないで確実に破壊するんだ!」
「了解!」
「まずは俺から行くぜ!マシンガンヘッド!」
ザウルブラックのパキケファロサウルスが突進し、高速頭突きを装置の根元に連撃したのを始め、各メカも装置の破壊に勤しんだ。
「スラッシュホーン!」
「セイバーテイル!」
「ハンマーブラスター!」
「ティラノソーサー!」
5人の攻撃はティラノサウルスに同乗しているチェリーブロッサムの魔法で上乗せされている為、従来よりも高い攻撃力を持っていた。装置は次々と倒されていき、それと連動して街の浮上も停止した。
先ほどの場所ではシビュライエローが電撃を放射状に発射して魔法少女と戦隊たちを攻撃した。だがオキザリスやカスタード、ランタナの魔法やグリーンベンジャーのランス、イエローガードの警棒、ホワイトバードの鉄扇でそれぞれ跳ね飛ばされるなど、全員にダメージを負わせることは出来ない。
その隙をついて高速で接近してきたカゲブラックの忍者刀とアルストロメリアの接近魔法、ジオブルーの矢が腹に突き立てられる。アーマーを突き破られたシビュライエローはよろめき、続けて放たれたウォーターリリーの水流魔法、ランタナの星の魔法、アイビーの蔦の魔法がマジカルブローチを破壊した。
一方のシビュラブラックは電撃に加え、周辺にある破壊された自動車を魔法で浮かばせて投げ飛ばしてきた。飛ばされた自動車は他の物体にぶつかることで爆発し、爆風を発生させたが、魔法少女や戦隊たちはその程度では怯まない。
きちんと電撃対策してきた装備で電撃をはじき、ブルードラゴンの竜拳やバーチャルピンクの射撃、グラビレッドの重力操作。キャンディーやサンフラワー、アイビーの魔法で自動車をふわふわと地面に降ろさせる。
そうしてできた道をレッドバットとドリームホワイトが突進する。二人は同じタイミングでジャンプすると、シビュラブラックにダブルキックをぶつけた。
キックはマジカルブローチを捕らえたがひびが入った程度で完全に壊れてはいない。そのため、二人はバットソードとドリームバットでバツ字に切りつけた。今度こそマジカルブローチは破壊され、シビュラブラックは倒れた。
「これで全員か?」
「待って。まだ一人残ってる」
「何処にいるんだ?」
シビュラレッドを捜す戦隊と魔法少女を影が覆った。
「あれは……」
「あれもまさかお前が作ったのか?」
「いや、あんなものは……」
彼らのすぐ上を、周囲の瓦礫を魔法で定着させて組み上げた、太い腕と足を持った巨大なロボットのようなアーマー「シビュラアーマー」が飛んでいた。その頭の部分に、シビュラレッドの姿があった。
「あと一つ!」
最後の浮上装置を捜すザウレンジャーとチェリーブロッサム。浮上はすでに停止し、他の魔法少女達の力だろうか、ゆっくりゆっくりと下降していた。
『聞こえるか?こちらはシャーベット。街の住民の救助は完了した。飛行装置も大分破壊できたようだな』
「はい、あと一つです」
『そちらにはシビュラレッドが向かっているので注意してくれ、いざという時は……』
シャーベットがすべて言い終える前に、前方にシビュラレッドの乗った大型アーマーが出現する。アーマーの腕から砲弾が発射され、周辺の建物を吹き飛ばしながら飛んでいった。
恐竜メカは散開してから不時着する。弾丸は何にも命中せず飛んでいったが、シビュラアーマーは歩いてこちらに接近してきた。
「あんなのに当たったら、ひとたまりもないぞ!」
「そうだな。みんな、合体するぞ!」
「OK!」
「強竜合体!」
ザウレッドが叫ぶと、ティラノサウルスは大きな声で吠えて両手両足が折り畳まれる。ステゴサウルスとアンキロサウルスが頭をつま先に足に変形しティラノサウルスとドッキングする。。左腕になったパキケファロサウルスはティラノサウルスの首の下に、右腕になったカスモサウルスは尻尾の下に合体。
最後にティラノサウルスの背中から頭がせり出し、完全な人型になった。
「完成!ザウルスキング!」
これが先ほどシャーベットが言いかけていたもの、5体の恐竜メカが合体して完成する巨大ロボット・ザウルスキングだ。
合体するのと同じく、乗っている6人も一か所に集まる。
「あれ?私だけ椅子なし?」
「だって5人乗りだもの」
立ち乗りになったチェリーブロッサムは、中央にいるザウレッドの後ろに待機することにした。
ザウルスキングとシビュラアーマーはお互いに連続でパンチを撃ちあう。両者のパワーはほぼ互角で、倒れる気配はない。ザウルスキングはステゴサウルスの足にあるブレードを使ったキックやパキケファロサウルスの連続パンチも使って、着実にダメージを与えていった。
シビュラアーマーは魔法で周囲を巻き込んで攻撃した。ザウルスキングの周囲でも爆発が起こり、コックピットにも振動が発生する。
「な、何か武器は無いのか?」
「武器は殆どボディにくっついてるやつで……外付けの武器は、あった!」
型にあるティラノサウルスの頭の口の中から長剣が出現し、それを掴んで魔法を弾きとばす。ブースターを全開にしてダッシュし、シビュラアーマーに接近する。
再びあの砲弾が発射されたが、ザウルスキングは体を高速回転させて長剣で弾丸を切り裂く。
「一気に決めるぞ!強龍斬撃、雷撃斬り!」
ザウレッドは目の前にあるレバーを強く握る。後ろにいるチェリーブロッサムは緊張から僅かながら震えている手を上から重ねた。
「友菜?」
「大丈夫。私の魔法でさらに強化するから」
「……よし!」
二人は思いっきりレバーを倒した。長剣の刀身から稲妻がほとばしり、巨大な光の剣を生成した。ザウルスキングは剣を大きくふるい、シビュラアーマーを一刀両断した。
シビュラアーマーはすぐ後ろにあった飛行装置を巻き込んで、大爆発を起こした。
ザウルスキングは剣を地面に突き刺し、柄頭の上に両手を置いた。
長い戦いは、戦隊と魔法少女側の勝利に終わった。
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