PART:5

 ザウレンジャーとチェリーブロッサム、そしてバットレンジャーを始めとした戦隊と魔法少女は使われていない会議室に集まった。


 「ごめんね時間取っちゃって。そんなに長くはならないと思うから、座って」


 バットレンジャーがヘルメットを脱いで着席するように言うと、ザウレンジャー達もそれに倣ってヘルメットを脱ぎ、席に着いた。


 「僕等の事はもう知ってるかな。革命戦隊バットレンジャーって言う名前で、東京の湾岸都市を中心に活動してるんだけど」

 「知ってます。長きにわたって活動してるベテラン戦隊だそうですね」

 「最近はその枠を超えて、いろんな場所で活動を始めたんだけど、まあその、色々あって最近はごちゃごちゃしちゃってるけどね」


 ブルーバットの言葉に、バットレンジャーとウォーターリリーは悲痛な表情を浮かべる。彼らに代わり、アルストロメリアがザウレンジャー達に尋ねた。


 「ところで、貴方達はどうなの?この登録法については」

 「まだわかりません。でもどちらかの側に就いて、別の勢力と戦うようなことはしたくないです」

 「そうなの」


 ザウルブラックが答えるとアルストロメリアは黙ったが、グラビレッドは引き下がる様子はなかった。


 「でもいつまでもそう言ってはいられない状態なんだ。僕らが起こした事件は、人々が抱いている不信感を表面化させてしまった。信頼を取り戻すためにはどうしても登録法が必要だ」

 「それは十分解っています。でもシビュレンジャーもいるっていうのに僕らが争っている時ではないと思います。それに、これまで世界の平和のために尽くしてきた人たちと戦う事なんてできません」

 「世論には従っといた方が身のためだと思うがねえ」


 壁に寄りかかっていたカゲブラックが、スマートフォンをひらひらさせながら言った。


 「俺達ニュースで大人気だぜ、誰一人いい顔してないけどな。世の中すっかり俺らに頭に来てるみてーだ。損ねた機嫌はとっとかなきゃな」

 「キャンディ難しい事よくわかんないけど、何でもかんでもダメって言うんじゃないんでしょ?だったら賛成してもいいんじゃないかなあ」

 「私はこの子を守れればそれでいいから」

 「わ、我もまた青き海の使徒に同意する!」


 キャンディと、アイビーの肩を抱くジオブルーも同意の意を示した。

 

 「僕等は自分たちの意思で、この法律に賛成している。君たちも自分の意思で動けばいい。強制はしないが、今からでも我々と組むと言うなら歓迎する」


 バットイエローは机越しにザウレンジャーとチェリーブロッサムを見つめて言った。その言葉には強い決心と覚悟が秘められていた。





 それからザウレンジャー達とチェリーブロッサムは変身を解除し、魔法界にあるカフェテリアで話しあっていた。


 「自分の意思、かあ」


 椎名賢次は苦手なコーヒーの代わりに注文したお茶をすすりながら、難しそうな顔をして言った。


 「この間聞いたんだけど、新人の戦隊や魔法少女は育成担当してくれた先輩の影響をどうしてもうけるみたいだから、自然と派閥とか思想とか決まっちゃうもんなんだってさ」

 「でも僕等って、そこまでドリームホワイトさんたちの影響は受けなかったよね?」

 「成りたてだからでしょ。他の先輩たちはチームの枠を超えて人助けに行くこともあるけど、私たちはそこのチェリーちゃんとしか行った事無いじゃない。しかも初任務後すぐに登録法の話があって」


 コーヒーに牛乳を入れながら呟いた弘田一成に塩原佑馬と平田由香が返す。オレンジジュースを飲みほした修二は、険しい表情で言った。


 「登録法が発表された後の話し合いの時にこう話してた人いたんだよ。上の人達はすぐにでも登録法を開始して、管理したいんだろうって。俺、あまり気にしてなかったんだけど、戦隊も魔法少女もすごく強い力を持っているからさ、俺達を怖いと思っちゃう人や自分の持つ力を危険視する人もいるんじゃないかなって」

 「確かにな。だからこそ登録法が必要だという人間の考えも理解できる」

 「でもそうしたら行けと言われた場所には嫌でも行って、必要な時に人がいない、なんてことになっちゃうよね」

 「力を持つ者は、その力を求める人たちに救いの手を差し伸べなければならないって、ブルードラゴンさんが言ってたな」

 「私たち、何で選ばれたのかしらね。いつの日にか、力にのまれて変わってしまうかもしれない……」

 

 由香の言葉に修二は自分の手を眺める。単純な戦闘力のみならず五人の武器を組み合わせたアクティブラスターの威力は、あの地下研究室にいた戦車や部屋の壁を一撃で粉砕した。それほどの威力の武器を指一本で扱えてしまう、しかも武器の説明の時に聞いたのだが、武器の力は各戦隊の持つ力が引き出しているのだという。

 修二達が自分たちの持つ力に恐怖感を抱き始める中、友菜だけは違った。


 「でも私は、魔法少女になって変わってしまったとは思ってないし、これからもそうだと思うよ。どんなに強い魔法を持っていたって、私は私でありたいもん」


 修二は幼馴染の強い決心に密かに驚いていた。クラスでも引っ込み思案であまり目立たず話し相手は自分しかほとんどおらず、友達が少ないことを嘆いていた彼女が魔法少女になってこんなに成長していたとは。

 賢次や一成、佑磨と由香も深く頷いた。


 「私は私、か。いいね、それ」

 「当たり前なんだけど、あまり気にしていないよな」

 「当たり前すぎて、いや当然だと思ってるから気にも留めなかったんだろうね」

 「でもとても大事な事だわ。目標にしない?」


 暗くなりかけていたザウレンジャー達の間に明るさが少しずつ戻ってきたとき、修二は慎重そうな顔になって言った。


 「みんな、ちょっといいかな?俺考えがあるんだけど……」

















 そのころ、修二と友菜の暮らす漣市の市立図書館に、奇妙な出で立ちの六人の少女がパソコンを操作していた。

 脳内にあるバイオチップがはじき出した計算にしたがい、大量に情報を仕入れられるインターネットで少女達が検索しているのは、地球上で人類が抱えている問題についてだった。

 紛争、差別、貧困、環境破壊。数多くの問題が自分たちの知らない地球と呼ばれる場所で、数多く起こっている事を知った。そしてその原因が、人間にある事も。


 「状況把握完了」

 「非常に危険な生物が蔓延中」

 「このまま放置すると、平和と調和が脅かされる」

 「排除対象を追加」

 「魔法少女、戦隊」

 「そして、人間」


 



 ドリームホワイトとブラックサレナが拘留された監獄には、明かりが灯っていなかった。どこかが故障しているというわけではなく、二人がただ単につけていないだけだった。

 暗い中何一つ喋らずに座り込んでいる二人の前に光が差し込んできた。監獄の扉が開いたのだった。

 扉の近くに座っていたドリームホワイトが顔を上げると、6つの影が目に入った。


 「ここから出してあげます。その代り、強力してください」


 そう言ったのが良く見知ったザウレッドであることに、時間はかからなかった。

 


 


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る