第6話



 隣国、と聞いてピンっとすぐに思いつくのは『フィットニア帝国』だ。何故かというと、この間までこの国と戦争をしていた為だ。今は休戦状態である。


 そして、この休戦も向こうから言い出したことであり、こちらは元々戦争をするつもりもない為、仕方なく飲んだようなものであった。その為、いつ向こうが再戦に踏み込むやもしれないのである。


 ちなみにこの戦に勝ったとしても特にこちらに良いことは領地が広がるだけである為、この国の王であるアイリス=モルガナイト王に以前謁見した際に休戦になった旨、再戦になった際の危険性を伝えると、「ここ面倒だよね。」などと軽い口調で呆れたように言っていた。


 どうもこの国は上に行けば行くほど、緩い人物が多いと感じる、まぁ、俺自体も上にはなるんだが。


 そんなことを思いながら、問題のモニターに再度目をやると、


「だが、本当に侵入していないか確認したほうが良さそうだな。・・・どうする、ジェイド。レイの能力に頼るときじゃないか?」


 用心深いカランらしい発言に小さく笑みを零した。


 レイが公認司書になれたのは俺の弟子であること、強い魔力を保持していたことの他に、特殊能力を生まれながら持っていた為だ。


 その能力は“違い”を見抜くことができ、“詳細”を知ることの二つの能力である。“違い”はさまざまなことにあたる。単純なものから普通では見破れないものまで見ればすぐに分かるのである。例えば、料理。食べずとも入れた調味料の違いや賞味期限切れの食材を使っているなど些細な事。

 

 “詳細”は例えば、“違い”の能力で変装している者を見破り、更に触れば変装している者の思惑や首謀者など、過去さえも見抜くことが出来るのである。


 この二つを保持している為に国王から認められ、最年少の公認司書となったのである


 この能力は以前の小さな戦の際に発揮されたのはきっかけであった。

やはり向こうもこちらの情報を欲していたらしくスパイを送りこんでいた。完璧な変装だったにも関わらず、レイは見事に突き止めた、というよりたまたま見つけたのである。


 その際、レイにどう見えるのか聞いたところ、オーラ的なものが見えるようで“違う”モノの周りには黒いものが漂っているらしい。


 その時のレイはまだ幼かった為、恐ろしいものに見えたのだろう、大粒の涙を流して怖い怖いと叫んでいたのを思い出した、・・・すごく可愛かったなぁ。


 この国に必要だと認められたこの能力だが、息子には厄介な力らしく自分には不必要だと感じる時があったようだった。だが、今では必要で役に立てることに満足しているようであった。


「・・・レイに確認してもらった方がいいな。今から伝えに行ってくる。」


 ・・・ついでに煙草でも吸いに行くか。軽く欠伸を零しつつ、さりげなく胸ポケットにある煙草を確認しては監視部屋から出ようとした。


「・・・分かってはいるだろうが、サボったりはするなよ?」


 ・・・さすがにバレるか、と苦笑を零しては分かってる、という意味を込めて、片手を上げて振ってみせた。



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