第4話 ちょっとばかし遠出した

 わしは今、二宮金治郎。背負うもんはないが、さっき買うた「子猫の飼い方」に目を落としながら道をゆく。携帯いじっとる兄ちゃんよりか周りは見えとる。せやけどな、そこのけそこのけ、足は動かん。反射神経いう名前も、歳いったら変えんなんのちゃうか。若いもん、前を開けえ。


「猫の」やのうて「の飼い方」にした、わしの判断は間違まちごうてないはずや。卵と鶏の順番は知らんけど、ひよこと鶏やったらひよこが先やからな。何でも大は小を兼ねると思とったらアカン。


 パラっとめくって目に入ったんが、準備するもんやった。

 エサとエサ入れと、ああせやな、トイレも砂もいんねんな。昔とちごて、今は家ん中でしか飼われへんようなってきとる。ほんで、爪とぎ、爪切り、ブラシ、シャンプーかいな。猫てシャンプーいるんか。よお自分で舐めとるけどなあ。キャリーバッグ。普通の鞄やったらアカンのんか? ベッドもいるんかい。おもちゃな、おもちゃはいるわ。


 しかし、最近の猫は至れり尽くせりやのう。

 思いながら、わしの足はスーパーに向いとった。ちいと足、軽なっとった。




 ウロウロして、何か買うて。


 ウロウロして、何か買うて。




 二週間。




 わし、ちょっとばかし遠出した。

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