27:密室でらぶらぶ三人デート

 「あ、あの……でもな、師匠。ウチ、師匠たちのおかげで、ちゃんと告白できたで! どうせ、絶対ダメやろうって、わかってはいたけど……お断りされるとは思ってたけど……でもな、なんや、言うたらすっとして、めっちゃ吹っ切れたわ。ホンマに、おおきにな!」

 モエカは、俺にかけよると、両手を握ってきた。いい笑顔でお礼を言う。

 「お、おぉ……どういたしまして」

 「ん? どないしたん師匠、そないくちびるピクピクさせて」

 「なんでもないっ!」

 「エッチです。彼は、見違えるように可愛くなられた貴方の顔を近づけられ、緊張しておられるのですよ」

 「エッチ、余計なこと言わないでくださいっ!」

 エッチとモエカは、顔を見合わせて笑った。まったく……本当に感謝してるのか?!

 でもまぁ、モエカの助けになれて良かったな。彼女のあっけらかんとした笑顔をみて、俺はそう思った。

 

 その告白の日は、ずいぶん時間も遅かったのでそこで解散したのだが……。

 翌日の放課後、俺とエッチ、それからモエカは校門前に集合していた。

 「……別に、気なんか使わなくてよかったのに」

 「い、いやっ! ウチ、いっぱい迷惑かけたし、師匠とエッチさんにお礼がしたいんやっ! あの、モモさんっていうOLさんにも、ホンマはお礼言いたいんやけど……」

 「まぁ、彼女には俺がよろしく言っておくから、気にするなよ。それで? お礼って、どこに連れて行ってくれるんだ?」

 「今日は、か……カラオケに、行こうかと」

 「へー……カラオケか、いいんじゃないか。でも……モエカ、お前歌なんか歌えるのか? 見るからに、人前じゃぜったい歌えなさそうなタイプだけど」

 「そ、そんなことないでっ! 今は……お、女の子として、いちおう自信ついたんやからっ」

 モエカは、もじもじとそう言った。じゃあ、以前まではやっぱり、人前じゃ歌えなかったんだろうな。

 「ま、もし恥ずかしくて歌えなかったら、その間は俺がずっと歌っておいてやるよ」

 「や、やからっ、そないなことないって!」

 「エッチです。さすがアナタ! 女性への配慮を欠かさないとは、すばらしい心がけですね!」

 エッチは、俺の右腕にギュッとしがみつく。セーラー服ごときではとても隠し切れない大きな胸が、俺の腕に食い込んだ。

 「っ……!」

 「エッチです。どうされたのですか、アナタ? 私の胸に触れられて、頭に血が上ってしまったのですか? うふふふっ……♡」

 「分かってるなら聞かないでっ! あ……」

 おかしなやり取りを、思いっきりモエカに見られてしまった。

 「いやー、だからこれはだなっ、モエカ。決して、俺たちが付き合ってるとか、そういうことではなく――ん!?」

 「えいっ!」

 とつぜんモエカは、俺の左腕を取った。そう、エッチと全く同じしぐさで……。

 当然、モエカのほうの豊かな胸もまた、押し付けられてしまう。

 あぁ、エッチとモエカの胸の大きさを、瞬時に比較してしまう自分が大っ嫌いだ。ちなみに、エッチのほうがでかい。

 「……っ、っ!? モエカ、これは一体!?」

 「お、お礼やしっ……! エッチさんが師匠にそこまでしてるのに、ウチがしないわけにはっ!」

 「そんな同調圧力、俺がいつかけたよ!?」

 モエカは、真っ赤な顔で見上げた。やっぱり恥ずかしいのだろう。一方、エッチは涼しい顔で笑っているだけ。やっぱり異星人は胸……じゃなくて、度胸が違う。

 「いっ、いいから! 今日だけお礼させてぇや! お願いっ」

 はぁっ、とため息をつく俺。ちょっと悩ましいけど……もちろん、こんな可愛くなった子に抱きつかれて、うれしくないわけではない。外聞が悪いことを除けば……。

 「しょうがないな、分かったよ。気が済むまで『お礼』してくれ」

 「やったっ! おおきに、ししょぉっ」

 「んんんぐっ!?」

 むにむにっ、とモエカの胸がうごめく。俺は体全体を硬直させてしまった。

 「エッチです。あらら、アナタ、体が硬くなっていますよ? 遊びに行くのですから、もっとリラックスしてくださいね♡」

 むぎゅっ、むぎゅっ。ムニむに。

 「……だ、誰のせいで硬くなってるとっ」

 「せやせや、エッチさんの言う通りやでっ、師匠! ウチ、今日は奢るし、楽しんでって~な♡」

 ぐにぐに、ムニュむにゅっ。

 「んあああああああああああ~~~~っ!」

 両側からの柔らかな刺激に、俺はたまらず叫んだ。

 

 ……というわけで、カラオケボックスの中に三人で入る。

 「あっ、ウチ、飲み物持ってくるで。ドリンクバーさっきあったし。師匠、エッチさん、何がええ?」

 モエカは愛想よく微笑んだ。

 「お、悪いな。じゃあ俺は……コーラで」 

 どんな飲み物があるのか分からないが、まあコーラは大抵どこにでもあるだろう。

 「オッケーやで♡ じゃ、エッチさんは?」

 「エッチです。私は、彼の唾液をおクチに直接注ぎ込んでいただきますので、結構です」

 「「……え」」

 今度は、俺だけでなくモエカも硬直した。

 ……こんなん、誰だって硬直するわ。

 「エッチです。安心してください。コズミック・ジョークですから」

 「ジョークにしたって、言って良いコトと悪いことがっ!」

 「エッチです。そんな、アナタったら……ジョークじゃなくて、本気でシたいのでしたら、早くおっしゃってくださればよかったのです。私は、いつでもアナタを受け入れられますのに……♡」

 「いっ、いつでも!?」

 「エッチです。ええ、アナタの体から発された分泌物でしたら、何でも……♡」

 「なっ、なんでもっ!?」

 なんでもって……。

 俺が膝を擦りむいたりしたら、血をペロペロ舐めて消毒してくれるとか?

 「エッチです。はい♡ 何でもですっ♡」

 エッチは、ポッと顔を赤らめた。フルフルと首を振って、乙女(気取り)のしぐさをしている。こんな下品なことを言っておいて、仕草だけ上品ぶられても……。

 「むぅっ……!」

 と、なぜかモエカがそんな俺たちを見てむくれている。

 「わ、分かったで。エッチさんには良さそうなものを見繕ってくるから、ほな――」

 「エッチです。お待ちください、モエカさん。飲み物の調達は、私が行ってまいりましょう。モエカさんは、きちんと彼のご機嫌をとってあげてください。彼に、お礼がしたくて来たのでしょう?」

 エッチがニッコリとウインクした。

 「え、エッチさん……!? おおきに!」

 「ちょ、ご機嫌をとるって……別に、俺はそこまでされるほど偉い人間じゃないですよ」

 「エッチです。礼には及びません。彼を愛する気持ちは、私たちの間に共通のようですからね」

 俺のセリフ、完全スルーされた……。

 「ところで、彼を簡単に悦ばせるには、いくつかのポイントがあります。よろしいですか?」

 「う、うんっ……それって、なんなんっ!?」

 モエカは、身を乗り出した。エッチの言葉を、一言も聞き漏らさないようにしているらしい。

 「ふふ、簡単ですよ。男心をくすぐるような、献身的かつ媚びたセリフを、彼の耳元で、甘い声で囁いてあげるのです。そう、こんな風に……」

 エッチは、俺のほうに向き直る。俺の頬やおとがいをスルッ……と撫でつつ、耳の穴に声を吹き込んできた。

 「エッチですぅ♡ アナタぁ、愛してますよぉ♡ 私のこと、ギュ~~~~ってぇ、抱きしめてください……♡ この肉体は、アナタのためだけに顕現させた未使用品、無垢な処女の肉体なのですから……ウフフっ♡」

 「っっっっ……!?」

 エッチの細い指が、俺の胸元を誘うように撫でていった。シャンプーなのか何なのか、エッチの真っ白い髪から、ほのかな良い匂いが香る。

 「おおおおっ……す、すごい……!」

 モエカは、感動したようだった。なんだか、モエカの「教育」が、どんどんおかしな方向に向かっているような。

 「エッチです。彼も、奉仕の心に秀でているとはいえ、やはりまだまだごく普通の男子高校生ですからね。貴方のような可愛い女子に

、そのようなことをされれば、きっと心臓が止まるくらい悦んでくださることでしょう」

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