02:「私とひとつになりましょう……♡」

 「やァんっ、うれしい♡ んむっ、アナタぁ、大好きですぅ♡ さぁ、思いっきりべろちゅーしてぇ……アハっ♡ 私と、ひとつに戻りましょう……? 愛情を、確かめ合いましょうね❤」

 エッチは、甘えた声で俺を誘惑する。

 そして、

 「……ん、んむっ……はぁ~っ、ぷちゅっ、じゅるじゅるじゅるっ……くちゅクチュ、ちゅるるるんっ❤」

 「エッチ、えっち……!んぐ、ぷむぅっ……!」

 うぅ、エッチのくちびるが熱い!

 「やぁっ……ンむっ、くちゅくちゅチュルるるるるっ……はぁぁぁぁ~~~~っ❤ アナタのおクチ、すっごォい……ステキぃっ♡ あンっ……あぁぁァっ……んむっ、クニュクニュ、ンン……ふぁ~~~~っ……❤ らめっ……らめぇ♡」

 エッチは、俺をあやすかのように、両手をそっと握ってきた。俺も、それを握り返す。

 「ンぷにゅるぅ、にゅちゅ、にゅちゅ、ニュヂュぅっ……♡ ふぁ、ぁっ、あっン、アナタのおクチ、すごすぎてェ、もう、もぉっ……♡ ふぁっ、ンちゅちゅぅ……あぅン、んっ、んン~~~~~~~~~~~~~~っ……❤」

 全身を俺の体に擦り付けて、エッチは細かく震えた。

 「え、エッチ……俺、もっとエッチと練習したい……っ!」

 「やぁぁぁぁぁンっ、うれしいっ……♡ アナタにそんなことを言っていただけて、エッチ感激ですぅ♡ もっと、もっとぉ、チュ~って、ご奉仕させていただきますからぁ……っ! はぁ~~~っ、んむっ、チュくくっ……ふぅ、ふぅ~~っ……ん、ぺちゅぺちゅにちゃっ、ンちゅ♡ ちゅぅぅぅ……っ❤ 」

 ぎゅぅぅぅぅっ! と、手が痛いくらいに握られる。エッチの目は、たまらなそうに細くなっていた。

 「んん、むむぅっ……エッチ、俺のために地球に来てくれてありがとう……! 愛してる、愛してますっ! ……んぷっ、んンン!?」

 「やぁぁァァっ……♡ 私も、貴方が大好きれすぅっ♡ ンぷっ、ふぁっ……ぁ~~~~~~っ……❤ やンっ、やっ、ヤぁ……♡ あっ、ふぁぁぁっァ、ンぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~っ……❤」

 エッチは、ひときわ大きな叫びを、鼻声で発した。俺の上で、エッチの体がビクビクゥっ! と震えている。その間も、ずぅっとくちびるをくっつけっぱなしで、離れてくれない。なんて熱烈なキスだ……。

 「ふむん、ん、んンっ……ぁ♡ ……すぅ~~~~……すぅーっ……」

 「あ、あれ? ……ちょ、ちょっと、エッチさん!?」

 エッチは、俺をベッド代わりにして、幸せそうな顔で寝息を立てていた。

 彼女は、すごく肉づきのいいほうで、抱きつかれたりするとやわらかい感じなんだけど……逆に、ただのしかかられると重い!

 「ちょっ、ちょ、エッチ……俺を起こしに来てくれたんじゃないんですか!? 自分で寝てどうすんですか!」

 「くぅ~~~~っ、はァ……っ♡ アナタぁ、らいすきぃ……んんっ、じゅるるっ……」

 口からよだれをたらし、俺の顔をべちゃべちゃにしているエッチ。

 大人しくしていると、整った顔立ちが際立ち、人形のように見える。その無邪気な寝顔に、俺は深いため息をついた。

 

 「宇宙人」。

 と言うと、人間だって宇宙に住んでいる、ということを忘れそうになってしまう。なら、彼女のことは、「異星人」と呼んだほうがいいだろう。

 人間のはるか先を行く異星人でも、人間と同じくあいさつしたり、キスしたり、ご飯を食べたりはする。

 そしてときに何かを失敗したりする――ということを知ったのは、今日がはじめてだった。

 「エッチですぅ……」

 目をこすりこすり、眠そうな挨拶をして居間に入ってきたのは、エッチだった。

 「あ、エッチ。おはようございます。よく眠れたみたいですね」

 俺は、くっ……と笑いながら言った。

 「? あのぉ、ひょっとして、私……」

 「エッチ、俺を起こそうとしてたみたいですけど。でも、俺とキスしてすんごい盛り上がって、疲れて二度寝しちゃったんですよ」

 「……!? え、エッチですっ、大変申し訳ありません……! 貴方のために、起こして差し上げようとスタンバイしていましたのにぃっ……!」

 「いや、構わないですよ。朝ごはん、もう作っちゃいましたから。食べましょう」

 「あ、アナタぁっ……! 温かいお言葉、ありがとうございますぅっ」

 エッチは、目をうるうるうるませて、そう言った。

 「あと、いっこだけいいですか?」

 「エッチです。なんでしょう、アナタ」

 「……服、着てくれませんかね?」

 エッチは、はっと自分の体を見下ろした。

 さっきは、いきなりのしかかられて気づけなかったんだけど、どうやらエッチは下着のまま俺のベッドに乱入してきたらしい。そんな風通しのいい姿で、今も一階に降りてきていた。

 「エッチです。貴方が望まれるなら、私は下着のまま過ごしても……♡ アナタにご鑑賞していただきながら、食事を楽しんでいただけたらっ……はぁァ♡」

 エッチは、恍惚とした表情で自分の腕を抱く。そのうえ、腰が悩ましげに円を描いていた。なんだこの、異様な色気は……。

 彼女は目にハートマークが入っている。そのハートへのこだわり(?)は下着も同様だ。

 なんと胸の下着も、腰の下着も、真っ赤なハートマーク型になっている。

 べつに、女性用下着なんて詳しくないけど……こんな挑発的な形、見たことないなぁ。

 「そんなのはいい、いいですからっ! 早く服着てくださいっ」

 「エッチです、貴方のご意思にしたがいます」

 すると、俺がまばたきした瞬間に、エッチは服を身に着けていた。

 「相変わらず、早業ですね」

 「ええ。この服は、私の思考により生み出したのです。貴方がたの言う『物質』とは異なるのですよ」

 エッチは微笑んだ。

 彼女は、四次密度フォースデンスィティーという非物質的な世界の出身らしく、とつぜん現れたり、消えたり、こんな風に服を一瞬で着ることができる。最初はびっくりしたけど、もう慣れた。

 「それに……相変わらず、ハートマークめっちゃ好きなんですね」

 エッチの服は、これまた一風変わっていた。

 基本的には、「シスター服」「修道服」みたいな感じで、頭巾とワンピーススカートを着ている。

 ちょっとイカれてるな。と思うのは、全身ピンク色だということ。

 それから、胸のところに、大きなハート型のアップリケ。

 首から下がるロザリオには、十字架でなくハートマークの飾り。

 つまり、上から下から、内も外も、ハートマークだらけってことだ。

 「エッチです♡ アナタに気に入っていただけるように、このようなキュートな服装にさせていただいたのですが……お気に召しませんか? ならいっそ――」

 「結構です! と、ところでエッチ、歯磨きました?」

 「エッチです。いいえ。二度寝してしまいましたので」

 やっぱりか。俺は、壁時計にチラッと目をやりつつ、

 「じゃ、じゃあ。良かったら……俺が、みっ……磨き、ましょうか?」

 「エッチですっ! よろしいのですか!?」

 瞬く間に、エッチは興奮して目を見開いた。

 「もちろん……エッチには、ものすごくお世話になりましたから、このくらいは当然かと」

 「エッチです。ふふっ、貴方は義理堅い方なのですね。貴方が求めた情報を、私はご提供しただけですよ。地球人へ奉仕することは、私たちにとって喜びであると同時に、義務でもあるのです。気にしないでくださいね。ですが……貴方の奉仕を受け入れます。それでは、よろしくお願いします」

 「は、はい。じゃあこっちに……っ!」

 俺は、エッチを椅子に座らせた。

 「じゃ、じゃあ、口を開けてください」

 「エッチです。はい。優しくしてくださいね? ア・ナ・タ♡」

 あ~~~~んっ、とエッチは口を開いた。

 「……っ!」

 「エッチです。アナタ、どうして目をそらしているんですか?」

 「い、いや、ちょっと……。改めてみると……歯とか舌とかもぜんぶ、人間と同じなんだなぁって」

 「エッチです。この肉体は、私たちの姿を物質界に投射したものです。ですから、ええ。貴方がたと、体のつくりはほぼ同じなのですよ。貴方はつまり、異性のおクチと同じものを覗き込んで、興奮していらっしゃったのですね?」

 「興奮とか言わないでくださいっ! ちょっとしり込みしただけですってば! い、いきますよ」

 俺は、エッチの口に歯ブラシを挿入した。

 ごしごし、しゅこしゅこ、ごしごし、しゅこしゅこ……。

 さっき、あんなキスとかしておいてなんだけど……。

 口の中に手を入れるなんて、これはこれで緊張するなぁ。手が震えてしまう。

 「ンふふっ♡」

 エッチは、意味深に笑った。

 「な、なんですか?」

 「……いぃえ、なんでもありませんよ♡」

 黙って、首を横に振るエッチ。からかわれてるのかな……? すると、

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