ご褒美=?



「これでようやく期末考査が終了したわけだが……」



今日のHRでは期末考査が終わってもしっかりと学業に励むことを中心とした連絡が主だった。

明日から土日という貴重な休みがあるのでクラス中が浮き足立っている。



「それと、来週いよいよ球技大会がある。みんな気合い入れて怪我のないように楽しめよ」



すると話は変わって球技大会のことになったが、瀬戸内の一言に恭弥が立ち上がった。



「どこか1チームでも優勝したら何かご褒美とかないんですか?!」



その声に途端に盛り上がるクラス。



「ご褒美?何だ。そんなにお前らは勉強熱心だったのか?」



数秒の沈黙が教室に流れ、



「「「 え? 」」」



すぐにクラス中がぽかんとした声を上げる。



「じゃあお前らのどこかのチームが勝ったら俺から素敵な課題をプレゼントしてやる」



いきいきとした表情で瀬戸内が言い放つ。



「「「 えーーー!!! 」」」



途端にクラス中から生まれるブーイングの嵐。



「俺は生徒想いだからな」

「ちがっ、そっちじゃなく…!」



言い出した恭弥がすぐさま反論しようとしたが、



「瀬戸内先生、少しいいですか?」



隣のクラスの先生が前のドアからひょこりと顔を覗かせた。



「はい、じゃあHR終わりな〜。

みんな気合い入れて球技大会の練習に励めよ」



すると、瀬戸内は早々にHRを切り上げて教室を出て行ってしまった。



「くそー、何だよあの展開」



HR終了後に行われる清掃中、恭弥が机を運びながらぶつぶつと呟く。



「きっと冗談でしょ!あんな感じだけどしっかり生徒のこと考えてくれてるわよ」



そう言った美久だったが、小さく「多分」と付け加えた。



「課題なんてとんだ災難だね」



三上が笑いかけると、恭弥は気まずそうに目を逸らして謝った。



「でもまぁ、やるしかないからな。

瀬戸内先生のことだからちゃんと何か考えがあるはずだ」



郁が黒板消しを動かしながら答える。



「そうだよ!瀬戸内先生優しいもん!

頑張って優勝目指そうね!!」



一人気合の入っている詩春だが、



「「「…………」」」



三人に哀れさのこもった目で見つめられていた。



(こ、これは頑張って見返さなきゃ!)



詩春は改めて来週の球技大会に向けて気合を入れ直したのであった。



———————————————



清掃終了の構内放送が流れ、教室は再度騒がしくなる。



「美久ちゃんは今日も部活?」



詩春が尋ねると、



「今日は部活だけど来週の球技大会に向けて体育館内の清掃しなきゃなのよね」



ため息とともに美久が答える。



「詩春は図書委員か…」



郁は帰り支度を進めながら詩春を見た。



「うん。今日はオススメの本のポップ作りもする予定なんだ」

「相変わらず真面目というか本好きね〜」



美久が尊敬するように言えば詩春は嬉しそうに笑った。



「今日は神宮寺が一緒じゃないのか?」



ふと郁が聞くと、



「部活のマネの子に連れてかれてたわよ」



美久は少し拗ねたようにそっぽを向いた。



「「……くすっ」」



郁が詩春を見れば、詩春も郁を見つめていてお互い目を合わせて笑う。

すると美久は不思議そうに抗議の声を上げたが、部活の集合時間に間に合わないと急いで教室を飛び出して行った。


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