第44話魔法の使えない悪魔

 真っ黒な空間にうっすらと見える何かと立つオレ。


「気にしなくてもいいよ……それよりオレの作った土人形ゴーレムに入ってくれないか?」


 《もちろんです!》


 おぼろげにしか見えないのだが、声の感じからして嬉しそうにしていた。

 真っ黒な空間が少しずつ解除されていき元のダンジョンへと戻ってくる。


「大丈夫だったか! リクト」


「あっあぁ………大丈夫だったぞ。

 あれ、あいつは?」


 《ここです………主様よ》


 今にも死にそうな程辛いそうな声がする方向に目を向けるとそこには真っ黒の空間であった者がいた。

 真っ黒な空間であったよりも色が薄くなっおり消えかかっていた。


「おっおい! 大丈夫なのか?」


 《いえ、あと数分で消えてしまうでしょう………はやく憑依体を》


「あっ! はやく憑依させないと………リクト、土人形ゴーレムを!」


 フローラは焦ったように土人形ゴーレムを持ち上げようとするが土を凝縮されて作られた土人形ゴーレムは重く持ち上がらなかった。


「オレがもつ」


 オレはゴーレムまで急いで歩みより、身体能力倍加と剛力を使い力を上げる。

 なんとか持ち上がる土人形ゴーレムを消えかかっている奴の目の前に置く。


 《これが…よい憑依体です……失礼します》


 消えかかっていた奴は土人形ゴーレムに重なるように溶けていく、次第に土人形ゴーレムは人間らしい色へと変わっていく………数十秒すると土人形ゴーレムは完全な人間と変わらないほど綺麗な色へと変わる。

 髪はオレと同じ黒い髪だ、こちらの世界に来てからはちらほら見掛けたが、魔族で見たのは初めてだ。

 魔族は皆、変わった色の髪の毛をしている。


「大丈夫か?」


「は、はい………これは、素晴らしい肉体です

 この度は、憑依体の準備までしていただいてありがとうございます」


 すげぇー肌の質感まで完璧じゃないか、うん………我ながら天才なんじゃないか? と思ってしまう。

 土人形ゴーレムに入った奴は丁寧にお辞儀をしてくる。

 間接も曲がるのさ………うん、もう見分けがつかないんじゃないか?


「あっいや、気にしないで。

 それより戦いには参加してくれるのか?」


「えぇ~もちろんお任せ下さい。

 ですけど、お恥ずかしい話ですけど………」


 土人形に入っている奴は急に畏まり始める。

 ん? 今さらなんだと言うのだ?


「リクトが迷惑する内容ならスパッと言ってくれ。

 出来ることなら私がカバーするからさ」


 フローラは笑顔のまま土人形ゴーレムの肩に手を置こうとする。


「気安く触ろうとするな! 主様以外に私の肌を触ることは許さん!」


「「え?」」


 オレとフローラは同時に驚きの声をあげてしまった。

 だが、オレとフローラの驚いている内容は違うだろう、オレは何故オレならば良いんだ? という疑問だが、フローラは避けられたからだと思われる。


「あ………ご、ごめん」


「いきなりどうした?」


 あまりの事にオレも驚いてしまっている、土人形ゴーレムの奴も少し申し訳無さそうにしている。


「あっいや………決して嫌って訳では。

 三大魔貴族、レイシス・フォン・グレモリーの娘なんです………私。

 家の仕来たりで契約してから、3日は主以外には触れられてはならないのです。

 それも、契約して憑依したばかりだと存在が“曖昧“なままで触れられてしまうと消えてしまう可能性があるのです……ご容赦を」


「そ、そんな理由があったのか! それは私が悪かった」


 そんな理由があったのなら仕方ない、憑依したてなのに消えてしまうと考えればあの反応は仕方ないと言える。

 あっでも三大魔貴族とか言っていたな………なんか名前からして凄そうだな。


「つか、三大魔貴族ってすごいのか?」


「えぇーまぁ~凄いですよ………姉たちは

 実は先程言おうしていたのですけど、私………魔法が使えないんです」


 土人形ゴーレムに入った奴が変なことを言い始めたぞ。


「えっ!? 魔族なのに魔法が使えねぇーの!」


 オレは空気を読んで黙っていたが、フローラは思ったことを口にする。

 まったく………まぁ~今回はオレも驚いたし仕方ない。

 それに、オレが聞きにくいことを聞いてくれたし。


「うむ………主様よ。契約した後で言うのは申し訳ないが、そこのチビッ子の言う通り悪魔でまったく魔法が使えないのは私くらいのものだ、すまない」


 土人形ゴーレムに入っている奴はオレに土下座してくる。

 こちらにも土下座っていう風習があったのか………。

 つか、そんなことしなくてもいいんだけど、だって元より魔法つかってもらう為に呼んだ訳じゃねぇーし。

 っていうかこいつから見たらフローラはチビッ子に見てるのか………最近はそんなこと忘れていたな。


「別にいいよ………それよりさ、なんて呼べばいい?」


「えっ………いいのですか?」


 土人形土人形に入っている奴は正座のまま不思議そうに聞き返してくる。

 つか、それより名前はなんて呼べばいいんだよ!


「うん、それより名前は?」


「えっ…と……ないです」


 土人形ゴーレムに入っている奴は驚いたまま言う。

 そうか、ないのか………つか、オレがつける流れになるんじゃ? オレにネーミングセンスなんてねぇーよ………。


「ないのか、じゃーさ………剣士っぽい見た目だから剣ちゃんなんてどうよ!」


 フローラは笑顔のまま奴の名前を言う。

 うっわ~オレ並み、いやオレ以上にネーミングセンスねぇーじゃん。

 しかも女につける名前じゃねぇーよ。


「嫌です。それになんかバカにされた気分です

 というか、召喚した方にしか命名権がありません」


「う………またか」


 う~ん………、名付けなんてオレみたいな奴に任せるなんてどうかしてるぞ。

 土人形だし………つっちー? いやいや、ねぇーわ。

 ゴーレム………ゴー? ………いやレムならいいんじゃないか?

 うん、それっぽいな………これだ!


「レム! お前の名前はレムだ」

 

「レム………何処と無く品を感じます。では主よ、今をもって私はレムと名乗ります」


 レムは仰々しくお辞儀をし始める、なんかいちいち反応がオーバーだな。


「お、おう。それよりレムは近接戦闘は出来るのか?」


「はい! それはお任せを……魔法が使えない分、近接戦闘は鍛えておりました」


 おっ! それは頼もしいな………これ以上ゾンビ野郎とは戦いたくない、レムが前に出てくれるのならばオレとフローラは後ろから魔法を使えばいい、うん! 完璧だ。


「頼もしいな! 頼りにしてるぞ」


 というか、最近フローラの男言葉が戻ってきている………ちょっと前はなんとか直そうとしていたみたいだけど、最近は戻ってきているし………まぁ~いいか。


「オレも頼りにしてるからな、レム」


「はい! それは任せてください………と言いたいんですけど何分、あちらとは違う身ゆえ、如何なる力を持っているのか分かりませぬ。

 相手して下さらぬか、主様よ?」


 レムは背中の剣を持ち、戦闘体制に入る。

 いやいや、何故にオレ? ………あっそういえばオレ以外が触るのダメなんだっけ。

 いやいや、そんなことよりなんでやる気満々なの! レムさん。


「まっ、まってくれ。オレはステイタス閲覧と能力閲覧の能力をもっている!

 それがあればステイタスが見れるぞ!」


「む………そうですか。私の力を見せられるチャンスかとおもったのですが、主様は希少な能力スキルをお持ちで」


 レムはそう言いつつしぶしぶ剣を納めてくれる。


 ふっ、ふぅーなんとか、剣を納めてくれたよ、つか自分で作った剣があれほど恐ろしく見えるのか………なんてものを作ったんだオレは。


 オレは落ち着くとステイタス閲覧と能力閲覧を使いレムを見る。



 名 レム

 称号 眷族

 レベル75 


 HP 4073

 MP 303


 ATK 4678

 DEF 3109

 INT  1872

 RES 1983

 HIT 4238

 SPD 5173



 《個体名:レム

 種族:上位土人形ハイ・ゴーレム+悪魔


 種族能力:身体能力倍加 剛力 天眼 瞬脚

 自動HP回復 自動MP回復


 個体能力:剣術S 盾術A 槍術A 弓術B 拳 S

 短剣 S 体術 S 両手剣 S 二刀流 A

 斬撃耐性SS 打撃耐性A 刺突耐性A


 能力:空間把握 気配察知 切断強化 瞬撃


 使用可能魔法:なし》


 まってください………ゴーレムってオレの能力を受け継ぐんすよね? 遥かに俺より優れてるじゃねぇーか!!!

 こんなんと戦ったら死ぬで………マジで、いやいや剣を前にしたらステイタスなんて意味をなさないでしょ。

 なんか自分に自信が無くなって来た、それにレムのやつステイタスも地味に高いし………。


 そんなことを考えつつも見た無いようをレムに伝える。


「そんなに………やはり主様がお造りになられた憑依体が良いのでしょう。

 土人形ゴーレムは込められた魔力に比例して強化されると聞いたことがあります」


「そ、そうなのか? フローラ」


「あぁ~そうだ、お前の場合込めすぎているくらいだした」


 最初からレベルが高いのは、込められた魔力が高いからなのか。

 これで1つ分からないことが解決した。

 まだ、知らないことが多いしこの調子で色々と知れたらいいな。


「そんなことよりさ! 魔力無くなったから寝るわ、もう一度、見張り頼む」


 オレはその場に横に目を閉じる、レムとフローラは不満の声をあげるが、オレは無視し眠りにつく。


「ちょっと! リクト」


「そんな主様よ! 私の力をお見せしようとしていたのにあんまりです」

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