#29 Parabellum

 シャーロットに抱えられひとっ飛びで到着した先は、あの公園だった。


 それにしても、やけにこの場所に縁があるな。腐れ縁なんてレベルじゃない。

 それも運命の赤い糸みたいなときめきのあるものではなく、それとは対極に位置するような、ご遠慮したい感じのドス黒い縁。


 僕が刺されたベンチの側には二つの影が見えた。


 亜季子と『彼』だ。


 ハッキリと見えるのは、僕が人間では無いからだろうか?

 どうでもいい。拳に力を込め思い切り振りかぶりつつ、一気に距離を詰める。詰めたと思った。


 が、ベンチに辿り着くと影は消えていた。霧か霞か、そこには初めから何もなかったように。あの一瞬で離脱したのか? くそっ! 冷たい空気を震わす絶叫。


「おい、シャーロット!」

「分かっているわ。掴まって、マイマスター」


 彼女は自慢の長い銀髪を伸ばし、僕はそれを掴む。それと同時に彼女は跳んだ。


「次はどこだ? 彼は! 亜希子は何処に行った!」


 声を張り上げる。

 出来れば当たって欲しくはなかった予想なのだけれど、予想通り『彼』は亜季子を狙ってきた。こう言う場合はなんていうんだっけ? マーフィーの法則だったかな?  どうでもいいよ!

 思考の渦からシャーロットの強い声で回帰、意識を現状に呼び戻される。


「どうやら学校みたいね」


 現実を越える超直感。ニューロンがスパークする脳内。


「まさか、……なのか?」


 一体マジで何の因果か、どうやら僕は母校で消えることになるらしい。

 実に学生に相応しい最期じゃないか。

 まさに学生の鏡ってやつだよな。皮肉ではなく……本当にね。


 心の底から、そう思ってやまないよ。

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