#15 Night Fishing Is...

「って…まあ、寝れるわけねぇわな」


 色々あって、かな~り疲弊した感じなので早めに寝ようと思ってベッドに潜り込み、布団に潜り込んだのが午後九時過ぎ…そして現在時計の針はその二時間後を指している。


 そんでもって、僕の目はギンギンギラギラに冴えていて、体感的には絶好調とは程遠い疲労感や喩えようの無い倦怠感を抱えていて。

 率直に言えば、どう仕様も無い程に眠たくなかった。


 自己弁護に似た主張としては、まぁ当然とも言える。

 夕方に亜希子アキコ事件と恐怖体験の精神攻撃二連続があったばかりだというのに、ぐっすりスヤスヤと眠れる精神を有している方がどうかしている。精神構造がとち狂っている。そんなの異質だ。絶対に有り得ない。どうにかしてるよ。


 そして、どうやら僕は側の人間である。その事実に二時間ほど寝返りを打ちまくった結果気がついた。


 気晴らしにもう一本、煙草でも吸おうと思ったが、机の上に投げ捨ててあったパッケージの中には一本たりとも入っていなかった。どうやら就寝前に吸ったものが最後だったらしい。


 ああーいえー…んん~。

 なんとも悪い潮目には悪いことが重なるもんだ。誰が言ったのかは知らないけれど、本当言い得て妙だ。上手いこと言いやがって。


 しかし、人間というのは実に欲深きもので――大変難儀なことに――マジで厄介なことにさ。本能を端とする欲求に抗えるほどに強く創られちゃいない。

 ないと分かると余計に欲しくなるものだ。いやぁ実に難儀なものだ。苦労が絶えないぜ全く。まあ、この際アレだ。


…仕方ない、買いに行くか。


 繰り返す言い訳を投げ捨てた僕は寝間着から着替え、チェーンの付いた財布をデニムのポケットに納めコンビニに向かうことにした。意志の弱さが半端じゃ無い。


 靴を履き玄関を出てから一瞬で後悔。

 一陣どころじゃない、幾重にも重なった冬の風が不特定多数に向けた悪意を持って僕の心をへし折ろうとする。マフラーでも巻いて来るべきだったと猛省。端的に言えば、とてつもなく寒い。


 これはサクっと行って、サクっと帰ろう。そう心に決めた訳だ。


 その決意は敢え無く、いとも容易く裏切られたけど。

 裏切ったのは果たして僕か、世界か……。

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