#12 In My Head

 それから僕はなるべく平穏に、いつも通りの過ごし方で時間を使おうと思い、平時のままに本屋に行って適当にファッション誌を読んでから帰路に着いた。


 家の敷居を跨ぐ前に向かいの家に視線を向ける。

 どうやら亜季子は既に帰っているらしい。二階の東側の部屋、彼女の私室の電気が点いているのがカーテン越しでも分かる。


 勉強でもしてるのかな? あいつ外見はあんなでも結構真面目だし。僕とは違ってさ。


 というか、あぁ明日からどんな顔して会えばいいのかな。マジで。どう接すればいいのか本気で判らない。普通か? いつも通りに接すればいいのか?って、普通に無理だろ。


 まぁでも人間万事塞翁が馬とも言うし、なるようになるさ。いくら僕が頭を抱えても仕方がない。明日は明日の風が吹くらしいし、明日のことは明日の自分に任せよう。決して考えたくないわけではない。(現実逃避ではないことを強く主張したい)


 今はそれよりも、放課後の「彼女」について考えるほうが賢明だろう。

 リアルに実害を被る可能性があるにも関わらず、誰にも相談できないという枷付きだ。


 仮に相談したとしたらどうなるだろう?


 そうしたらどう考えても可哀相な子扱い決定だよね。

 迂闊に相談しちゃったりしたら多分誰もが『あぁ、疲れているんだね』とか言って、僕の肩を優しく叩くじゃん? 慰めるじゃん? 泣きたくなるじゃん? 僕としてはそんな哀れみの視線は欲しくない。


 しかし、そうだとしても―――考えて答えが出るものだとは到底思えないけれど、考えなくちゃ答えは絶対に出ないままだから。永遠に辿り着けないから。


 だから、僕は出来る限り考えようと思う。

 この小さい脳みその限界まで思考してみようと思う。


―――でもまあ、とりあえず、晩飯を食べてからだな。考えるのは。


 結構、疲れたわ。普通にさ。

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