外伝:規定PV、フォロワー数達成記念番外編

100PV : Story02.5 《騎士に下された王務》

 あの日の俺はいつも通り起床し、いつも通り髪を整え、いつも通り食卓へ向かった。


 すでに全席は朝食を食べに集まった兵士で埋まってしまっているので、仕方なく外の広場スペースで摂ることにした。コックから朝食を受け取ってから外へ出て、適当に空いている空間に座った。


 すると見知った顔の騎士が、俺を見つけて駆け寄ってきた。


「よっす、ゲオルグ!今日も眠そうじゃねぇか!」


「まあね、でもそれに対してミレルは朝から元気だよなぁ。なんでそんなに騒げるんだか」


「おいおい、その言い方はないだろー!」


 彼はミレル・ヴェルツィア。SRソルジャーランク7で、俺の同級生みたいなものだ。このように常に軽く明るい口調が特徴で、赤い長髪が特徴のイケメンである。戦闘能力やルックス、明るい性格が相まって、女性からの告白が後を絶えないらしい。とある理由により、全て断っているらしいが。


「今日も、一緒に飯食っていいか?室内だと女性が集まってきて仕方ないんだ」


「お前な、簡単に人前でそういうこと言うなよ。嫌われるぞ」


 そう言いながら、少し身体を横にずらす。ミレルは少し離れたスペースに座り、朝食の乗ったプレートを置いた。


 最近、二人で朝食を摂るのが当たり前になっている。数十分かけて完食し、器を返却口へ戻す。


「さて、朝食も食べたし、部屋戻るか」


 俺が言うと、ミレルも一度伸びをして頷いた。歩き出そうとした所で、背後から張りのある声が響く。


「残念ね、部屋には戻らせないわよ」


 最早聞きなれたアルト。俺達騎士に任務を伝えてくれる先輩だ。任務関連以外で彼女が話し掛けてくることはほとんどないので、今回もそういった内容の話だろう。


「仕事ですか、ツヴァイさん?」


 振り返ると、そこには腰まで伸びる紫色のツインテールの女性が立っていた。左手を顎に当て、SR9衛兵隊副団長、ツヴァイ・ラングリラは頷いた。この仕草は仕事の話をする時の彼女の癖だ。


「ええ、ゲオルグ、あなたにね。内容はラビリンス樹林の調査。ほらこの前、空が赤暗くなって、一部の魔物が凶暴化したでしょう?それの影響が一番強い場所なの。ちなみに、これは国王から直々に下された〈王務〉だから、あなたに拒否権はないわ。すぐに向かいなさい」


 王務。SRが6を越えた者に与えられる最重要任務だ。しかしほとんどは危険な魔物の討伐が主な任務で、調査が王務になるのはかなり珍しい。それだけ国王様も深刻に事を考えているということだろう。


「分かりました。直ちに王務に取り掛からせていただきます」


「行ってらっしゃい」


「気を付けろよ」


 ミレルとツヴァイさんに見送られながら、俺は剣と鎧を取るため自室に向かった。






 約1時間後、ラビリンス樹林に到着した。ヘルムフリートを呼べば数十分で到着するが、飛竜を道具と同じ様に扱う事は出来ない。行きは馬を使い、飛竜は帰還時に呼ぶ。森が見えてきたところで馬を降り、深い樹林の中へと入っていった。


 すぐに、右側から魔物の反応があった。レベルは――62。俺のレベルより10下だ。かと言って油断は禁物なので、スキルで一気に決める。


 俺は剣を抜き、茂みに突進した。剣を水平に構え、呪文スペルを詠唱する。


「双竜の力を解放せよ、双裂破!」


 剣が白く輝き、凄まじい速さで振り下ろされる。直後、抵抗など一切感じさせない優雅な動作での切り上げ。このスキルは2連撃技だ。


 斬り上げられた衝撃で跳ね上がった魔物は、眼の赤い兎だった。今回の王務はラビリンス樹林の調査だが、そこに生息するノーマルラビット、いや、もう普通ではないからアブノーマルラビット約20体討伐の任務も兼ねている。


 俺の剣技で、その兎は完全に絶命したようだ。スキルは呪文スペルを唱えなければならない分面倒で、羞恥を感じる人も多いようだが、それを差し引いてもお釣りがくるほどの威力だ。先程放った双裂破は、俺が習得している3つのアクティブスキルの中でも下級技。上級技ともなると呪文は相当な長さになるが、計り知れない破壊力が期待できる。






 数時間かけて数十匹程兎やその他の魔物を狩ったところで、蜂の魔物に追われている少女を発見した。


 やがて少女は木の根に足を取られ転んだ。致死の針が、彼女の身体を貫く――



 前に、俺はもうスキルを発動させていた。俺が習得する、唯一の遠隔攻撃可能な剣技。


「我が刀身に光を宿せッ、一刀閃いっとうせん!」




 ――この時に助けた少女、いや少年が、46代目勇者を担うツバサ・キサラギだったという事実は、暫く後になって聞かされた話である。

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抽選勇者の創造目録 月夜 裏兎 @Ritto

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