37話「二章エピローグ~冬の訪れ~」

ブログver

http://suliruku.blogspot.jp/2016/11/37.html


忙しい日々が終わり、秋は過ぎ去ろうとしていた。。

雪が降れば、道は閉ざされ、モフモフ村は外界から孤立し――安心してゆっくり獣娘の尻尾をモフモフできる。

燃料に使う薪を集める仕事は、獣人の皆にプレゼントすりゃ良いし。

……領主の地位って最高だなぁ……。自分の代わりに他人を労働させて、暖かい家で、尻尾を好きなだけモフり放題とかたまらん……。

しかも超低賃金。一定期間の無償労働は領民の義務であり、僕は食費を負担するだけで良い。

皆のおかげで暇だから、僕は……屋敷の庭でホワイトの白い尻尾をモフろうと思い、背後から、そろーり、そろーりと忍び足で近寄っている。

ホワイトは地面に、ダマスカス鋼製のナイフを刺し、何やら祈っていた――


「おーい!?そのナイフは名ナイフだからっ!捨てちゃ駄目だろ!?」


僕のツッコミで、ホワイトがビクンッと体をと尻尾を震えて驚かせ、慌てて背後にいる僕を見た。


「あ、主様っ……?

気配が全くなかったから、心臓に悪いですぞ……」


「いや、ナイフを地面に突き刺して拝む性癖はやめた方が良いと思う……。

次はどんな性癖に目覚めたんだ……?」


「失礼な、拙者はそんなに変態でありません。これは……師匠の墓です」


「お墓?遺体をここまで運んで埋めたのか?」


「遺体は……ありません。

この主様が作ったナイフを師匠が気に入っていたので、墓標代わりにしました。

一応……生活の面倒を見てもらった御恩がありますので」


ホワイトの青い瞳は、どこが寂し気だ。

うむう……世間一般でいうアレだな……。

普段、めっちゃ悪い事していても、死んだら懐かしまれるっていう……世間一般の法則である。

人間、ネガティブなイメージを持たれた方が長く覚えて貰ったり、主婦という生き物に語り継がれたりする。

皆、悪い噂とか、他人の不幸が好きなのだ。


「そ、そうか……ホワイトは優しいんだな

でも、そのナイフはかなり名ナイフなんだが……?」


「そうでしたか?他の遺品は、ナズニャン殿が全て持って行ったので困りましたなぁ……」


「……まぁ、良いんじゃないか?

素材があれば作れるし。ナイフって武器というか……道具に近い代物だしな。

色んな物を加工できるように、刃の裏側はギザギザにして、ノコギリみたいに使えるようにしてあるし」


なんか勿体ないが、僕の細工スキルがあれば幾らでも作れるし、ホワイトの好きにさせよう。

こんな話をしていたせいで、余計にブラッドイーターの事が気になる。

技能スキルを限界以上に鍛え、達人級の矢を迎撃できる境界に達していて、異常だったし。


「ところで……ホワイトにとってブラッドイーターは、どんな奴だった?」


「そうですなぁ……飢えて困っていた拙者を救ってくれた恩人……でしょうか?

お腹が空いて空いて仕方ない時に、狩ってもらったウサギ肉の味が忘れられません。

あとは動くタマネギとか、空飛ぶスバゲッティとか色々ありますな」


これ、同種族だったら、恋愛関係になっていたようなエピソードだな……。

動くタマネギ……はて……僕の記憶の片隅に引っかかるような……?

この手の冗談が、流行しているのだろうか?


『犬さんの黒歴史だお』

『うむ……黒歴史だな……あれは……』


不思議な事を言う邪神達だ。

動くタマネギという単語を聞くだけで、脳みそが拒否反応を起こして、現実味が全く感じられない。

なぜか、これ以上の事を知る気力が喪失するが……ホワイトの言葉はまだまだ続いた。

世間話をしたがる主婦のごとく、長話が続くのである。


「師匠は師匠で自分の人生に苦悩しているお方でした。

なんでも……生まれ育った村から追い出され、幼い頃から剣1本で自活する事を強いられたそうです。

確か追い出された理由は……『何が原因か分からないが、祭っている大木を切断したら、村の皆に殺されかけた』とか」


いや……信心深い地域でそんな事をしたら、誰だって殺されそうになると思うぞ……。

剣スキルを得たせいで、色んな物を試し切りしまくったんだな……。


「そして、剣1本で成り上がるといえば、傭兵団。

オグド傭兵団と呼ばれる所に入って、そこでますます剣の腕を磨いてひと財産を築き、都市に豪邸を建てるほど儲けたそうな。

なぜか飛んでくる矢や、接近してくる敵部隊を事前に察知できて、戦場では不敗の名将と呼ばれていたそうです」


『オグド』

『略奪共同体の長だお』


剣の技能を極限まで極めていれば、単独で敵軍の戦列なんか崩し放題だったろうし……報酬のほとんどを搾取されていたんだろうなぁ……。

あれだけの腕で、城を建築できる金が貯まらない時点で可笑しいと思う。

オグドが60万規模の略奪共同体を結成できた理由がわかったぞ。

ブラッドイーターを最大限酷使して、組織を拡大したんだな。報酬は剣で良いだろうし。


「ある日、師匠は小さな国で道場を開いたそうですが……まぁ、本当に残念ながら、師には教える才能が皆無でしてな。

天才は教師に向いてないという有名な名言がある通り、剣に関して天才的な才能を持つ師は、才能がない者達がどう導けば良いのかさっぱり分からなかったそうです。

拙者も、師から剣術を習いましたが……小さい幼女に大剣を渡す、とんでもない師でした。

大剣は鎧ごと相手を殺せる戦場の剣とか何とかかんとか言ってましたが……恐らく、要らない剣を拙者にプレゼントしたのだと思います。

ゴブリンの身には扱い辛い人間用の大剣でしたし」


ブラッドイーター……お前、よく、最後の最後でホワイトを切断するのを躊躇ったなぁ……。

でも、分かる気がする。

あいつ、絶対、友達とか少ないタイプだし。

生き残った最後の弟子を斬るのを……僅かに残った良心が躊躇って、手加減してしまったのだろう。

ゴブリンから見ても、獣人は動物みたいな要素があるから可愛いと思うだろうし。


「おや?雪ですかな?」


空から、白い粉が降ってきた。

肌に触れると溶け、庭が白く染め上がろうとしている。

これで今年は……戦争はもう起こらない。森を遭難中のゴブリンは凍死する。

よっしゃ、薪をたくさん集めて、理想のモッフモッフライフだ!

僕なしじゃ生きていけないように、狐娘も狼娘もモフモフしてやんよ!

……そういえば、放置していた復讐に燃える難民ゴブリンの群れどうなったんだろうか?

邪神どもが何も言わないから、勝手に壊滅したのだろうが、全く音沙汰がないのが不気味だ。


『犬さんの黒歴史とバトルして壊滅しましたお』

『カカスの木とバトルしてましたぞ!』


なに、その植物、怖い。


「主様」


ホワイトの声につられて、僕は彼女の青い瞳を見た。

イタズラ娘な笑みを浮かべて――


「さっき気配を隠していたのは……拙者の尻尾をモフるためだったりしますか?」


うぬぬっ……油断ならぬ銀髪ロリだ。

銀色の尻尾が、元気よくブンブン動いているせいでモフり辛い。





二章おしまい




★(ノ゚ω゚)(ノ゚ω゚)今回どうでした?



●(´・ω・`)強敵を、敵を利用して倒す。そんな王道を書けた。次は主人公の超上位互換バージョン出すお。



★(ノ゚ω゚)(ノ゚ω゚)難易度を上げすぎだろ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゲーム風スキルは異世界最強なんだよ!・ω・`)ノ @parume

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ