第4話 いま と これから

〖戸倉家 圭護の部屋〗

朝が来た。

いつものようにご飯を食べ、歯を磨く。顔を洗い、着替える。増えたのは雨に餌をあげて撫でてあげることかな。

なでると雨は目を細めて大きくあくびをした。

「ふにゃーぁ」

「よぉ圭護、雨の調子も良さそうだし昨日と今日ですっかり懐いてるじゃないか」

「はい、心配だったんですけどちゃんと僕のこと飼い主だってわかってるみたいで嬉しいです」

「にゃぁー」

雨の鳴き声をきいて自然と表情が緩まった。

「ハハハハ圭護のそんな顔久々に見たな」

「うるさいなぁもう、いってくるんで雨のこと頼みましたよ!松本おじさん」

「おう、いってらっしゃい...っておじさんはい余計だ!!!」


〖環状通り東駅〗

出勤の為、地下鉄に乗った僕は旬に会った。

「よ!!圭護おはようさん」

「旬、目の下のクマが酷いよ…」

坂城 旬、僕の同期で身長が高くお調子者、だがプレッシャーに弱く考え込むとダメになるタイプで。会社の例の事件で眠れなかったのだろう。

「ま、まぁな昨日眠れなくてさ」

「そっかそっか僕はぐっすりだよ」

「お前はこういう時でも我関せずって感じで尊敬するよ、会社が倒産の危機だぞ!俺の父さんが聞いたら何ていうか....」

「倒産と父さん...か、旬上手いね 、あっもう着くよ」

〖地下鉄 札幌駅〗

「馬鹿か!今のは偶然だよ、大体なぁお前は会社辞めるつもりって言ってたけど会社辞めてもこんな会社出た人間なんてどこも採用しな........」

僕は旬の前に掌を突き出した。

「旬は真面目すぎるんだよ」

「誰も転職するなんて言っちゃいないじゃないか」

「は??転職じゃないって起業でもするつもりか」

「そこはほら秘密さ、いくら同期と言えど言えることと言えないことがあるじゃん」

「教えろよー」

「いやだね!旬はこれからの身の振り方真剣に考えなよ。教えるのはそれからにするよ」

僕はもう、会社を辞めてこれからどうするのか決めていた。カバンには退職届がはいっている。入社した時からずっと。


〖株式会社 千曲 札幌営業所〗

「みんなおはよう、今朝のニュースでもやっていたが今回の事件で我社は経営状況、株価共に絶望的状況だ。倒産する日も近い。」

「みんなには申し訳ないが解雇せざるおえない本当に申し訳ない」

札幌営業所統括部長の佐久平部長が頭を下げた。この人もまた被害者のひとりだということを社員一同、みんなが知っていた。

次の日からここにいる全員は無職だ。

僕らの勤めた年間5億の収益を上げる会社は1度の失敗で終わりを迎えた。


〖又屋 札幌駅前通り店〗

「結局もらえた退職金も雀の涙程か....」

又屋の牛めしを食べながら文句を言う旬。

「じゃあ僕そろそろ帰るね」

先に食べ終わった僕は雨が心配でそろそろ帰ることにした。

「わかった!またちかいうちに一緒にご飯いこうな」

「うん、もちろん」

(さてと、家に帰ってアレ探さないとなぁ)


----次回へつづく

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徒然きゃっと しゃろん @KEITA-SYARON

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