第11話 ゆだねる

栞が麻耶子の部屋にくるようになって

二人は普通の恋人同士と同様にキスをしたり抱きしめあったりはする


しかし 

それ以上には進めずにいた


栞はいつも麻耶子からの”YES”が聞きたくて

何度もめげずにトライした


だけど

イザというとき麻耶子はスッと離れて行ってしまう


いつもそうやって交わされていたが

今日こそは!と栞は心に決めていた


やはり麻耶子の中で弟の友達だっていうことに引っ掛かりがあるのか?

栞はそれをどうにか克服したと思っていた


今日も白いソファーの上で

栞は麻耶子と何度もキスをしながら抱き合う

栞は麻耶子の服の中に手を偲ばせる


麻耶子が離れていかないようにまた何度もキスを繰り返しながら

背中をなぞりながらブラジャーのホックをはずした

”やった!”

栞は心の中で言った

そして栞の手は麻耶子の前に

大きくはないけど

ふっくら柔らかい胸

優しく触れると麻耶子は急いで栞から離れる


「えっ?」栞


思わず栞は声が出る


麻耶子は頬をピンク色に染めてはずれていた下着を戻し整える

そして直ぐにキッチンへ

冷蔵庫からミネラルウォーターを出しグラスについで飲んだ

栞も直ぐに麻耶子についてキッチンへ


「俺もちょうだい」栞


麻耶子は新しいグラスを取ろうとする

栞は麻耶子のグラスを取って飲みかけの水を一気に飲む


栞はグラスを置いて麻耶子にまたキス

麻耶子は少し横を向いてかわす


「どうして?」栞


栞は悲しそうな表情で麻耶子を見る

麻耶子は目をそらす


「したい」栞


栞は何時になく食い下がる

麻耶子は困った顔をする


「麻耶ちゃん したいよ」栞


麻耶子は栞のほうを少し見て小さく呟く


「ごめん・・・・・・無理」麻耶子


「どうして?俺のこと嫌い?」栞


「嫌いじゃない・・・・・・」麻耶子


「じゃどうして?」栞


いつもとは違う栞の強引さに麻耶子はしぶしぶ栞のほうを見て話し始める


「私 こういう事を大切にしてるの

簡単にしたくないって言うか・・・・・・おかしいのかな?

キスされたら高揚するし

抱きしめてもらったら嬉しいけど

どれだけ好きだって思っても

それとこれとは違うって言うか・・・・・・」麻耶子


栞は少し驚く


”もしかして した事がないのか?

だって彼氏いたこともあったし・・・・・・処女ではないだろ?”


少し疑い半分の疑問をもった

しかし直ぐに嬉しい気持ちにもなった

ずっとキス以上に進めずにいたのは

自分を受け入れてくれないからだって思っていた

まだまだ子供だってラインをひかれているのだと思っていた

弟の友達だからという戸惑いがあるのかと思っていた


「俺 麻耶ちゃんのこと大切に思ってるよ

簡単に”したい”って言ってるわけじゃないよ」栞


栞は麻耶子を真っ直ぐな目で見つめる


「・・・・・・」麻耶子


キラキラとした大きな黒目

まるで仔犬のよう

麻耶子はこの目に弱い

何もいえない


栞は麻耶子をギュッと抱きしめて


「麻耶ちゃんのことずっと見てた

子供の頃はじめて会った時からずっと好きだった

だけど世界が違ってて

麻耶ちゃんに彼氏ができたりして

恋したりしてるとき

俺はマダマダ子供で

悔しいけど何にもできなくって

悠介の部屋からいつも麻耶ちゃんの部屋のドアを見てた


覚えてる?


俺が中学卒業したとき

麻耶ちゃん”おめでとう”って言ってくれたでしょ?

あの時 俺が言ったこと」栞


麻耶子はポカンとした顔で考える

栞は微笑んで


「覚えてないよね・・・・・・


”いつか俺の方が背が高くなったら告白するね”

っていったんだよ

あの頃

麻耶ちゃんが背の高い男の人と付き合ってるの知ってたから・・・・・・

麻耶ちゃん

”ありがとう 待ってるね”

って笑ってたけど

俺本気だったんだよ

ずっと変わらない

すっと麻耶ちゃんのこと好きだよ

これまでもこれからもずっと」栞


栞がゆっくりと優しく語り掛ける話しは

はじめて聞く告白だった


そんな事を思っていたなんて麻耶子は気がついていなかった


何となく

隙を見て入り込んだだけの関係だって思っていた


そんなに昔から

思っていてくれたなんて・・・・・・


麻耶子は栞にキスをした


「どうして私なの?」麻耶子


「はじめて好きになった人だから」栞


栞はニッコリ笑った

麻耶子はその笑顔に溶かされるように栞に身を任せた



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