長坂橋の笠地蔵

駅員3

長坂橋の笠地蔵

 多摩川の支流に乞田川という一級河川がある。小田急多摩線唐木田駅近くから流れ出ると、多摩ニュータウンの中心部を流れて、関戸橋のところで多摩川に合流するわずか数キロしかない川だ。。

 乞田川は、別名長坂川とも呼ばれ、唐木田の源流に近いところを通っていた八王子往還に、長坂橋という橋が架かっていた。

 現在は、ニュータウン開発により、鶴牧西公園のところから暗渠になってしまい、橋は無い。この暗渠をたどってだらだらと続く坂道を上っていくと、やがて正面に不思議なものが目に入ってくる。まるでお椀をひっくり返したような、まん丸の編み笠状に刈り込まれた柘植の木だ。高さは2m位はあるだろうか、その緑青々と茂った笠の下にはお地蔵様が祀られている。

 1700年(元禄13年)、長坂橋の袂にお地蔵さまが建立された。そのお地蔵さまをお守りするように、柘植の木が笠のように覆い被さったことから、何時の頃からか『長坂橋の笠地蔵』と呼ばれるようになった。

 また、このお地蔵さまは、身代わり地蔵とも子育て地蔵とも呼ばれて、古来行き交う人々の信仰を集めてきた。

 お地蔵さまの前まできて、手を合わせると、なんとも純朴なお顔をしているではないか。風化の目立つ部分もあるが、衣のレリーフははっきりしていて、全体的にはいい状態を保っている。


 多摩ニュータウンの開発により、ほとんどのお地蔵さまや、石仏、石塔が移動してしまったが、この長坂橋の笠地蔵は、一時仮移設されたものの元の位置に戻り、300年以上も変わらぬ姿を見せてくれている。

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