第13話 『三匹の子ブタ』をリメイクしてみた

「社会風刺を取り入れてみようと思うの」

「斬新だな」


 昔話に社会風刺と来たか。

 確かに世の中の著作にはそれらが盛り込まれているのもあるが、教訓などを主とする物語には不向きではないだろうか。


「失敗を恐れては先に進めないわ」

「お前は少し恐れを知れ」


 恐れを知らぬ女め。


「で、何で社会風刺をする気だ」

「『三匹の子ブタ』で」

「どうやって!?」


『三匹の子ブタ』。大概の人が知っている有名な作品だ。

 だが、これに社会風刺をどう取り入れると言うのか。


「『ある所に、三匹の子ブタが居ました』」

「確か、兄弟だったな」

「『長男はアイドルオタク』」

「萌えブタかよ!?」

「『次男は食べてばかりでぶくぶく太っており』」

「太りすぎの意味でのブタかよ!?」

「『三男は犯罪を繰り返しており、今は仮出所中でした』」

「ブタ箱じゃねえか!」


 社会不適合者の集まりか!


「『母は、そんな彼らを自活させるために外の世界へ送り出すのでした』」

「そりゃ追い出すわ!」


 こんな兄弟抱えたらお母さん泣くわ。


「『家を作ることになった三匹ですが、長男はワラで作ることにしました』『住めればいい。金はアイドルへ投資する』」

「ダメだこいつ!」

「『次男は木で家を作りました』『キノコ生えたらすぐ収穫できるし』」

「食い意地か!」

「『三男はレンガで作りました』『このぐらい頑丈な方が安心できる……』」

「刑務所に適応してんじゃねえか!」

「『ちなみにその施工技術は刑務所で身に着けたものでした』」

「悲しいわ!」

「『ある日狼が、ワラの家にやって来ました』『ブタくん、俺を中に入れてくれ』『俺の聖域に入るな』」


 いや、確かにオタクは部屋に入られるのを嫌がるけどさ!


「『ふん、こんな家』『狼が息を吹いたらワラの家はバラバラに吹き飛んでしまいました』『ああー、マイちゃんのグッズが!』」

「むしろ外へ出ろお前は!」


 ここまで家を壊したい『三匹の子ブタ』は初めてだ。


「ところで家を壊した後はどうする気だ」


 確か狼に食われるパターンと弟の家に逃げ込むパターンがあるはずだ。


「……この兄弟、食べたい?」

「遠慮する」


 生理的に嫌だ。


「『長男は次男の家に逃げ込みました』『どうしたの兄さん?』『狼が……ボ、ボクのマイちゃんとユズちゃんとランちゃんのグッズを……グスッ』」

「推し多いな!?」

「『おーい、俺を中に入れてくれ!』『とんでもない、食費がかかるじゃないか!』」

「むしろお前を食いに来てるんだよ!」

「『狼が木の家に体当たりすると、家はバラバラに壊れてしまいました』『ああ、折角シメジが収穫時期だったのに!』」

「生えたんかい!?」


 侮りがたし木の家。


「『どうした兄貴』『助けてくれ、弟よ』『大丈夫だ。この家はビクともしねえ。むしろ誰も脱獄できねえ』」

「怖えよこの家!?」

「『中に入れてくれよお!』『入ってみろや』」

「煽るな」

「『しかし、息を吹いても、体当たりしてもレンガの家はビクともしません。窓も鉄格子がはまっていて入れません』」

「何で自宅に鉄格子はめた!?」


 刑務所じゃねえかこの家。


「『よし、煙突から入ってやる』『聞いたな兄貴たち』『それを聞いた三匹は急いで火を焚いて鍋を沸かしました。ちなみにこの技術は、かつて親が三人にアウトドアを体験させようとボーイスカウトに所属させた時に身に着けたものでした』」

「悲しいわ!」


 何でそれがこんな三人になった。


「『煙突から降りて来た狼はお湯の中に落ち、大やけどをして泣きながら山に帰っていきました』『m9(^Д^)プギャー』『狼って不味いんだよなぁ……』『ムショじゃこのくらい茶飯事だぜ』」


 煽るな長男。

 そして食ったことあるのか次男。

 それと、どんなムショにいたんだこの三男。


「『助かった長男と次男は、三男のレンガの家で引き籠って仲良く暮らしました』」

「……寄生したようにしか見えん」

「『なお、三男は仮出所中に傷害事件を起こしたので、即刻刑務所に連れ戻されました』」

「切ないわ!」

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