萌エルフ礼賛

雪車町地蔵@カクヨムコン9特別賞受賞

萌エルフ礼賛

本日はこちらの資料を引用します(1)

 ――エルフの栽培は、種から始まる。


 まず、親株から採取したおしべとめしべを掛け合わせることで、種子が結実する。

 これを、マナが十分に満ちた土壌にばら蒔きすることで、播種はしゅが完了する。

 灌水かんすいに用いるのは、精霊の泉で調達した神聖な水であることが望ましいが、これは十分マナを与えるためであり、日光と月光を16日間浴びせ続けた川の水でも、同上の効果を得ることが可能である。これはマナが充ちている土地、満ちていない土地の如何に関係なく、必要なことである。

 土壌のマナに不安がある場合は、前年に収穫したエルフの藁などを灰にしてまくと、改良効果が得られると言われているが、あくまで俗説であるため、注意が必要である。

 さて、しっかりと日光と水を与えていると、32日目には萌芽ほうががみられる。

 これが、エルフと呼ばれる状態であり、ここで収穫すると、昨今では珍しくなくなったロリエルフを発生させることができる。カクヨム村の名産品である。

 ただし、あくまで未成熟なため、生殖能力はない。

 それを利用するケースもあるが、現在では条約で禁止されているため、どうしても認可が欲しい場合は中央エルフ栽培局で資格試験を受ける必要がある。難易度は国家試験程度。カクヨム村では、このための専門学校も存在する。

 萌エルフから14日目には、分蘖ぶんげつが始まる。

 有効分蘖数を逆算し、主なる幹から分裂した無数の若いエルフを、必要があれば間引くことで安定した生育を図ることが可能である。

 逆に分蘖数を増やすことで収量を上げることもできるが、これは土地のマナを吸いつくしてしまう可能性もあるのでしっかりと相談することが重要となってくる。

 分蘖を終えたエルフは出穂しゅっすいを始める。

 ここでようやく、我々がよく知る成熟した大人のエルフになるわけであるが、残念ながら品種によっては病害虫に弱く、深刻なクッコロ病や最低の屑ね!と叫び出す場合もある。総じて快楽や知識欲に屈服しやすい傾向がある。

 出穂を終えると交配が可能になり、新品種への展望も開ける。

 通常は受精・結実のまえに収穫を行うが、たわわに穂が実ったエルフは人妻エルフとして非常にコアな人気を誇り、また種子を収穫し地方によっては促成栽培を行うことで、同時期にロリエルフの収穫も可能となり、正直2度おいしい。

 収穫したエルフは、様々な用途に利用される。その選別のために、エルフは一度集荷センターに集められ、その後、各メディア媒体へと配送される。

 脱穀だっこくまではこの集荷センターで行われるが、精製を行うかどうかによって通常のエルフかダークエルフかが別れる。精製されなかったものがダークエルフである。

 ……ここまで、エルフの栽培から流通の一歩手前まで解説してきたが、栽培技術が確立されていなかった古代とは違い、現代ではエルフは決して珍しいものではない。

 皆様もどうか手軽に、エルフを栽培してみてはいかがだろうか?

 萌エルフの味わい深さは、なかなかに筆舌しがたいものである。




 ドゥッカーノ・ダ・レッカー 著作 『萌エルフ礼賛』 より抜粋

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