東京の都市伝説

東京の大雪は土日に降る

　「首都東京」は雪に弱い。大雪が降ると、電車はすぐに遅延し、雪道で転倒して怪我をする人が続出する。北国に暮らす人々からみたら「なんでこれくらいの雪で。」と笑われてしまうだろう。当然気象庁が発表する大雪注意報の発表基準は地域によって違う。

　気象庁のホームページにある『警報・注意報発表基準一覧』を覗くと、

　◆ 東京２３区、多摩北部、南部・・・２４時間降雪深さが５ｃｍ

となっていた。それでは雪が多く降る地方は・・・

　◆ 新潟市・・・６時間降雪の深さが１５ｃｍ

　◆ 札幌市のある石狩中部の平地・・・１２時間降雪の深さが２０ｃｍ

となっている。

　やはりあまり雪の降らない東京と、日本海側の新潟や北国の札幌などとは、大きく基準が異なる。

　ここまでくると、２０１６年１月２４日に観測史上初めて沖縄本島で降雪が観測されたことは記憶に新しいが、「沖縄には大雪注意報の基準はあるのか！？」と疑問に思うのが人の常。

　早速調べてみると、沖縄は雪に関係する注意報の基準（雪・なだれ・風雪・暴風雪）はない。

　それでは、どこまで大雪注意報の基準があるんだろう？　次から次へと好奇心は止まない。

　鹿児島県の基準を覗くと、

　◆種子島・屋久島地方・・・２４時間降雪の深さが５ｃｍ

とあるが、奄美地方には、沖縄と同じく基準はなかった。

・・・ということで、大雪注意報の発表基準の南限は種子島・屋久島地方までのようだ。

　さて、東京では『大雪になるのは土日か祝日だ』という都市伝説を聞いたことがあるだろうか？

　以前ある気象予報士の方が「東京の大雪は土日・祝日が多い」と言っていたのを思い出し、気象庁のデータをピックアップしてみた。

　１９９０年以降現在まで、都心部の積雪が５ｃｍ以上の日（大雪注意報が発令された日）を気象庁のデータベースから拾い上げてみると次のようになった。

No　　　　日 付　　　　　　　曜日　　降雪量

1　 1990年 2月 1日　　木曜日　　11cm

2　 1992年 2月 1日　　土曜日　　13cm

3　 1994年 1月29日　　土曜日　　7cm

4　 1994年 2月12日　　土曜日　　27cm

5　 1996年 2月17日　　土曜日　　7cm

6　 1996年 2月18日　　日曜日　　9cm

7　 1998年 1月 8日　　木曜日　　10cm

8　 1998年 1月15日　　木曜日 成人の日　18cm

9　 1998年 3月 1日　　日曜日　　5cm

10　2001年 1月27日 　土曜日　　9cm

11　2006年 1月21日 　土曜日　　10cm

12　2013年 1月14日 　月曜日 成人の日　8cm

13　2014年 2月 8日 　土曜日　　22cm

14　2014年 2月14日 　金曜日　　18cm

15　2014年 2月15日 　土曜日　　9cm

16　2016年 1月17日　日曜日　　6cm

如何だろうか？

　１９９０年来２６年間に５ｃｍ以上の積雪があったのは、全部で１６回、そのうち土曜日が８回、日曜日が３回、祝日が２回、合計１３回となっている。

　統計データとしては母数が少なすぎるが、傾向は明らかだ。都心部は人が多く集まる平日は気温が高めとなり、逆に人の少ない土日は低くなるからだろうか。

　東京都が平成２７年３月に公表した２３区部の昼間人口は１１８４万人、夜間人口は９１６万人となっている。その差２６８万人が郊外からの通勤者だとして、人間一人の熱量が５０Ｗあるとすると、

　５０ｗ × ２６８万人 ＝ １３万４０００ｋｗ

となる。

　沖縄の最大電力は、１３７万３０００ｋｗ（送電端　沖縄電力ＨＰより）であることから、実にその１割に相当するエネルギーが、休日の２３区部には無いということになる。

　人間が発する熱量以外にも、交通量をはじめとする経済活動のお休みから、その発する熱量は少ないものと考えられる。

　気象庁気象研究所の解析によると、東京都心では、土日・祝日の気温が平日に比べて０．２℃低く、特に冬場にその傾向が目立つという。

　雪が降る一番の条件は気温であるが、一般的に「地上付近で３℃以下」「上空１，５００ｍ付近で－６℃」「上空５，０００ｍ付近で－３０℃」が目安となっている。中でも地上付近の気温が一番重要であることから、この０．２度の差が雨になるか、雪になるかを分けていることも十分に考えられる。

　『東京の大雪は土日に降る』という都市伝説は、あながち単なる伝説で片づけるわけにはいかない。