第20話「青春の葛藤」
僕が実験台??
「絶対いやだ。なぜわざわざ俺が廃人になる危険を冒さなきゃならない?」
珍しく強い口調で僕はソラに問いかけた。
「そんな心配しなくても8割がた成功するぞ。」
「2割も廃人になるじゃねーか。」
突っ込まざるをえない。
そういう危険って1パーセントでさえもあっちゃいけないだろ。
「よくわからないものを、再現しようとしてるんだから十分すぎるだろ。」
さも当然といった感じのソラ。
あまり僕のことを考えてくれないんだね。悲しいな。
しかし、これ僕が引き受けるまで話が進まないやつなのか。
と思ってたらマキナが口を開いた。まさか君がやるというのかい?
そんな危険な……。
「先輩って白雪姫知ってます?」
「なんだよ、やぶからぼうに、そりゃな。」
たまに、どっちが白雪姫で、シンデレラかわからなくなるけどな。あと眠り姫と白雪姫の違いが判らない。
マキナはずっとにらめっこしていたモニターから視線を外して、席を立ちあがってこちらに近づいてきた。
非常に至近距離まで近づいて、そして僕の手を握った。
「もし、先輩が廃人になったら私が起こしてあげる。」
予想もしない提案が飛んできた。
白雪姫からの起こすってことは、
「キ、キスでってことか?」
マ、マジか、前回逃したキスチャンス再び。
マキナの距離が近すぎて心臓が高鳴る。
「キスなんかじゃ起きないでしょ…もっとすごいの。セックスして起こしてあげる。」
なんだって!
なんて言ったんだ?セックスっていったのか?
ごくりっ。
「………。」
「しかもマリンも一緒に…。すっごいのしてあげる。もっと廃人になっちゃうかも。」
耳元でささやかれた。
一気に飛び出すリビドー。
やばい、やばいぞぉ。
もはや選択肢に是非はない。
「やります、僕がやります。僕は初号機パイロットです!」
即決だった。
興奮のあまり僕はわけのわからないことまで叫んでしまった。
ということで僕は廃人になるかもしれないゲームの実験台をやることになった。
むしろ今は、廃人になりたい。ゲームで廃人になってそしてマキナで廃人になりたい。そんな思いだった。
廃人となった僕はそんなマキナとのやり取りを楽しめるのだろうか。廃人になった僕との約束をマキナは守るだろうか。という疑念もあったが、欲望の前にすべては泡沫なこととして脳の片隅に追いやった。すべては欲望が勝る。
万物の動機は欲望である。
覚悟はきまった、ゲームが完成するのをまとう。
☆彡
5時間後、ゲームは完成していた。
その間マキナはまたモニターとにらめっこしていたし、ソラは何もしゃべりかけてこなかったし、マリンちゃんは隣でひたすら悶えていたので、僕にはすることがなく気づけば眠ってしまっていた。
起きた時、ゲームがちょうど完成したと伝えられた。
マキナはさすがに疲れ切った様子で、
「わた、も、う限界・・・」
とそのまま5時間以上悶えっぱなしのマリンのいるベッドに倒れそのまま二人仲良く眠りについた。
ソラはそういや睡眠とか必要ないんだろうかと思いながら、完成したゲームについての話を聞くことにした。
ソラは、俺のスマホではなくマキナのスマホから話しかけてきた。
「マキナに状況を聞きながら、設定はほぼ同じ仕様のゲームを作ることができた。これで廃人まで持っていけるかどうかは試してみないとわからんが、作っていくうちに一応そういう風に持っていけそうな仕組みっていうのはわかった気がする。」
本当に完成させるとは、恐るべし宇宙人…。
「あとは、太陽だ。君の反応、脳波、体温、心拍数、行動、あらゆる状況を見て何が起きているのかを監視する。監視して、精査すればほぼ対処法はわかるはずだ。」
改めて考えるとやっぱモルモット感がすげぇな。
いやだな…、失敗する可能性あるんだよなぁ。
「あの、廃人にさせる仕組みが分かったなら、もう戻す方法もわかるんじゃないかと思うのだけど。」
出来れば僕は被害者になりたくない…。
いや。ご褒美考えたらむしろ廃人になりたいが、これが青春の葛藤ってやつなんだだなぁ(しみじみ)。
「仕組みが分かっただけではダメだ。それがどういう風に人体に伝わるか、どう反応するかがわからないと、対処できない、俺だって有機生命体に触れるのは初めてなんだぜ。観察は必要だ。」
ソラにそういわれると反論しようがない、何せ、僕には何もわからないのだ。
「ああそれと太陽のスマホでゲームをするわけだが、いちおう今のケータイのバックアップを取っておいた。このSDに入れといたから。大事に保管してくれ。それから、もしこのバックアップデータを使うときは、ネットのつながってない環境でやってほしい。」
ネットのつながってない環境で?なんか意味があるのか。
「よくわからないけどわかったよ。」
「さぁ、太陽早速そのゲームやってみよう。脳波を調べるそのヘッドセットをつけてくれ。」
いつのまにか、マキナの発注していた脳波を調べる機械が届いていた、ぱっと見はヘッドホンような形をしている。それにしてもどういうルートで、しかもこの短時間に手に入れたのか、相変わらずマキナは謎の変態だった。
そのヘッドセットを頭にはめて僕は仮想『魔法使いのソース』をプレイすることにした。
覚悟はもう決まった。さぁ進むぜ廃人への道!
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