第6話 ラブブック~♥ 6

「どこにしようかな?」


谷子はアルバイト情報誌を見ていた。

天井裏の部屋に部屋を借りたためである。


「私が家賃を払う!」


そのため谷子は、

アルバイトをしなくてはいけなくなったのだ。


両親もバイト共働きで、

渋井家にはお金の余裕はない。



本を読むのが好きな谷子は、

内気で大人しい性格だった。


中学校でいじめられたこともあり、

自分に自信の無い子になっていた。


そんな自分自身が、

あまり好きではない谷子は、


「自分のことを、

 少しでも好きになれるよになりたい!」


高校に進学するにあたって、

谷子は何か新しいことにチャレンジしようと思っていた。




「よし、決めた!」


渋谷に住んでいる渋井家のマンションから徒歩10分、

渋谷駅の前のスクランブル交差点の側にいた。


「偉い人が言っていた、何事も本丸を狙えと。」


谷子は今まで読んできた、

1億冊の本から知識を蓄えてきた。


谷子は渋谷のスクランブル交差点にある、

スタバーとツタヤのあるビルの前に立っている。


「ドキドキ。」


谷子は渋谷に住んでいるが、

ここに来るのが初めてだった。


心臓の鼓動が速くなり、

手足が震えている。


本が好きで読書ばかりしていたので、

ここに来る必要がなかったのだ。


「本から得た知識通り行動しているのに、

 どうして震えるの?


 偉い人の嘘つき・・・。」


谷子には未知の世界なのである。

知らない世界に足を1ッ歩踏み入れた。


谷子は勇気を振り絞った。




「わ~! すごい!」


谷子の目は輝いていた。

初めてきたので、感動していた。


スタバとツタヤビルの1階は、

最新のCDが視聴できたり、

コーヒーの言い香りが匂ってきた。


日本人の若者から、

外国人の観光客がたくさんいて、

店内は活気にあふれていた。



谷子はバイト先を探すという目的を思い出し、

まずスタバを下見に行った。


スタバの店員さんは、

カッコイイ男性ときれいな女性しかいなかった。


「ガーン!」


谷子は諦めた。

私には無理だと。


谷子の見た目をおさらいしよう。


「前髪長すぎ」「メガネ」「ソバカス」

化け物かイエティのような見た目をしていた。


人種のるつぼの渋谷でも、

十分、谷子は目立っていた。




「私、ここで働きたい!」


谷子はショックを受けていた。

スタバの素敵な店員さんと、

モッサイ自分との差に。


フラフラの谷子は、

逃げるように下りのエスカレーターに飛び乗った。

地下1階に向かっている。


「ああ!」


谷子の目に輝きが戻った。

地下1階は本のコーナーだった。


「こんな素敵な世界があるんだ!」


谷子には、

たくさんの本が輝いているように見えた。


「私が働けるのは、ここしかない!」


谷子は、バイト先を見つけた。


人には運命がある。

谷子と本の運命の輪は、回り続けているのだった。



おまけ。


「私には無理。」


渋谷には、

ギャルの聖地109がある。


谷子は、

ファッション関係のアルバイトも考えた。


谷子は胸もないので、

私服はティシャツ・短パンがメイン。

冬はコートを羽織るだけ。


本ばかり読んできた谷子に、

ファッションセンスはなかった。


もしも採用されても、

店先で大きな声を出して、

お客様を呼び込みしている姿を想像する。


「お客さんが逃げ出していく・・・。」


谷子は、

「前髪長すぎ」「メガネ」「ソバカス」「自分に自信が無い」

女の子なので、


「やっぱり無理。」


ギャルになっている自分を想像することができなかった。



つづく。

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