第10話『犬鳴村』

福岡県に全国的に有名な心霊スポット「犬鳴トンネル」がある。心霊スポットに詳しい人なら、一度は聞いたことがあるスポットだろう。

かつてダムに沈んだ村「犬鳴村」。そこに至る道には「この先、日本国憲法通じず」という看板が立てられており、足を踏み入れたら最後、生きては帰れない……。


そんな都市伝説と共に生まれたのが、心霊スポット「犬鳴トンネル」だ。現在は老朽化に加えて肝試しで来る人が多いので、入り口はブロックで閉鎖されている。

それが余計に心霊スポットとしての地位を高めている。


なお、近隣には住んでいる人もいるから、興味本位で行くのは絶対に止めよう。


さてこの「犬鳴村」の都市伝説を下地にして呪怨の監督である清水監督が手がけたのが得害「犬鳴村」だ。今回はその犬鳴村の映画について語っていこうと思う。


結論を先に言えば、クソだった。


映画冒頭だが、まずふたりのYouTuberが犬鳴村へ突撃する場面から始まる。女性と男性がペアで犬鳴村を探索し、悲劇に合うのは予定調和。ホラーにおける様式美である。この辺りの空気は割と上手く作られていて、個人制作としては「ゾゾゾ」より「ダラシメン」や「オウマガドキ」に近い。


場面は変わって犬鳴村へ行った女性の姉が登場する。この姉が主人公だ。彼女は幼い頃から霊感があり、人の目には見えない存在が見えていた。医者として子供を診断していたら、その子の母親が憑いているのを見て怯えたりしているのだが、全く活かされないシーンである。必要かこれ?


犬鳴村が題材になっているため、「犬鳴村」がどうしてダムに沈んだのか、というのを焦点にして物語は進んでいく。その中で、何故主人公の妹が「ダムに沈んでいるはずの犬鳴村」に入れたのか、と展開していく。


その中で、ホラーらしく理不尽に殺されていく人々がいるわけだが、ぶっちゃけ何のために死んだのかわからない。キャラクターのバックボーンが描かれていないから、凝った死に様で描かれても怖さを感じないのだ。多少なりとも主人公に関わっていたのならともかく、1シーンだけ関わったキャラクターが死んだところで、我々の心は微塵も動かない。


ホラーの大前提として、「理不尽さ」は必ず存在する。


リングであれば「ビデオを見たら」


呪怨であれば「家に入ってきたから」


そういう理不尽さはホラーを描く上で必要な要素なのだが、犬鳴村にはそれがない。


何故主人公たちが怪異に襲われるのかが描かれていない。犬鳴村に近付きすぎたら? とも思えるのだが、そんなふわふわした状態で怪異に遭遇するのは、現実ならともかくエンタメ作品としてはよろしくない。視聴者はいつだって理由を求めているのだ。


肝心のホラー描写も怖いのかと言われたら、全く怖くない。出来損ないのゾンビ映画だ。犬鳴村の住民が大人数で襲ってくるのを、エフェクトを使ってそれっぽく見せているだけ。ソフトの性能に頼った力業だ。


最後には「おっ」と思える部分があるものの、そうなれば余計に主人公が襲われた理由の説明がつかず、余計に頭が混乱するだけになった。


Amazonprimeでの評価が2000人以上見て☆2.5なのも納得だ。恐怖回避バージョンの方が評価が高いってどういうことよ。


「犬鳴村」は、ホラーが苦手な人でも見られるジャパニーズホラーだ。正直、シュールなギャグ映画かと思えるほど、出来が悪い。

ポップコーン片手にガハハと笑って見られるならまだいい。「犬鳴村」はポップコーンをぶちまけるレベルで面白くない。


願わくば、犬鳴村の犠牲者が減ればと思い、ここに書かせていただいた。


人生の貴重な2時間をドブに捨てることなかれ。

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