パティシエと俺と君と

ミルキー

第1話 プロローグと

 丸いスポンジケーキに、ホイップクリームをふんだんにのせていく。

クリームを塗られたケーキは、自分がチョコやイチゴなどで飾り付けられるのを、楽しそうに待っているように感じられる。

やがてケーキにはベリーがのせられ、上からふんわりと粉砂糖をかけて仕上げとなった。


「よし………」


とつぶやき、俺は父親のところへ出来上がったケーキを持っていく。

まだ試作段階だけれど、思った以上にかわいらしく出来た。

自分でも自信があったから、堂々と父親の前にケーキを出す。


「クリスマスケーキの試作品できたよ」


父親は、ケーキのデザインを描いている途中で顔を上げた。

俺の作ったケーキを見て、うーん……とうなる。


「ダメかな…?…これ」


「ダメっていうか……確かにかわいらしい作りになっているが……ちょっとありきたりすぎないか?」


そうか……これはボツだな……

本当に、最近は失敗してばかりだ。




俺は星野冬也ほしのとうや、将来の夢はパティシエ。

幼稚園の……年中ぐらいの時だったか。

家がケーキ屋だったせいか、そのときから将来の夢はパティシエだった。

同い年の男はみんな、


「ぱいろっとになりたい!」


「ぼくはすぽーつせんしゅになりたい!」


「ぼくはウルトラマンになりたい!」


とガヤガヤ言っていたのに対し、俺は一人だけ、


「ぼくはぱてしえになる!!」


と言っていた。(女子にはパティシエになりたい人が多かったから、女子とばっかり話していた記憶がある。)

小学校に上がってからは、学校の授業が終わると走って家に帰り、パティシエである父親の手伝いをしていた。

家がケーキ屋だから、父親の手伝いをしながら、いろいろ学んでいった。


そして、

今、高校に上がってからは、本格的にパテシエの道を考えている。

まず、パティシエになるには専門学校に行かなきゃだめだ。

それに、もうすぐ大会もある。

だから、毎日ケーキを作っているんだけど………


最近うまくいってないんだよな……














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