【Episode:05】友人への疑い

充実した毎日

「瑞貴ちゃん、これ、外の五番テーブルにお願い」


 私にそう伝えたのは、カフェの厨房担当で先輩の池上さん。出来上がったスイーツと飲み物を、カウンターテーブルに載せながら。


 私はその品々をトレイに載せて、テラス席の五番テーブルに運んだ。



「お待たせしました。バナナクレープと、カプチーノになります」


 テラス席に来ると、街路樹に止まって、ひっきりなしに鳴くセミの声が、間近に届いてくる。


 夏休みに入ってから、二週間近くが経ち、八月に入っていた。


 暑い日が続く中、私と麻衣は、カフェウェイトレスのバイトに勤しむ毎日を送っていた。


 内気な私は、最初は、お客さん相手に、上手く愛想を振りまくことができないでいたけれど、今ではだいぶ慣れて、麻衣と同じように、上手く仕事をこなせるようになってきていた。


 まだ未熟ではあるけれど、仲良くしてくれる先輩たちも、成長したって褒めてくれる。


 それまでは、ただすごすだけだった毎日が、これ程充実するとは思ってもみなかった。


 仕事をするっていうことが、お金のためだけじゃないってことが、働いてみて始めて分かった。


 誘ってくれた麻衣には感謝している。


 そうじゃなかったら、去年までと同じ、家でだらだらするばかりの夏休みをすごしていただろうから。

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