高専生とは裏なのか対偶なのかよくわからん位置にいる生物学基礎分野畑の人間ですが、登場人物たちの情熱の発露っぷりに非常に既視感が。
未知の現象を見つけたら瞳が輝くのはサガ。
生物学徒の端くれとしてはまず、神農もしくは某国民的RPGよろしく図鑑を作りつつ、ザザさんの身体測定をだな……
真面目な話、個人的に高専生が使えるある能力を現地の人が使えないのは生物学的な差による、と仮説を立てています。脳の器質的な。
そもそも異世界人が高専生たちと子孫を残せる(生物学的に)同種かも謎ですが。
でも種差があろうがなかろうが、泣き笑い、感情を交わせる点では変わらない。論理を共有できるのも変わらない?
その辺りの心の交流も、この作品の見どころの一つです。
ともあれ、理科科学技術好きならこの作品を流れるワクワクは非常に共感できる可能性が高いので、一読をお勧めします。
異世界行って最初にやるのが重力加速度の測定。空は青いからレイリー散乱はあるね。生きてるから空気の組成は問題なさそうだ。って、そんなんばっかり。異世界きて気にする所? ねぇそこ気にする所!?
そして始まる魔道具の分解と解析。検知する仕組みはどうなっているんだとか伝達の方法はとか。彼らなりに推測を立てて一応の納得を経ないと話が進まない。
わかる。わかるよ。理系脳ってそうだよね。でもちょっと、いやかなりやりすぎじゃないかな!?
突っ込みどころ満載だが、一巻のラストは感動して泣きそうになってしまった。
カクヨムで読んだ後、書籍も買った。イラストがあるのが嬉しい。
※「2巻 一章 神殿ってサーバみたいなもんか? ①」まで読了
高専は行ったことないからわからないけど、エンジニアとしてはすごく共感する。特に最後のエピソードはとても涙腺崩壊ないい話だった。エンジニア的にはとても共感する(二度言った)
さて感想はここらへんにして、ちょっとした考察など。
異世界にもオライリー必要では?むしろ彼らが新たな動物表紙本を作る勢いだろう。表紙は当然例のザザが見た鳥だ。ここではザザ本と仮に呼称するとして、ザザ本はどういう内容になるのか?例の言語や端末についての本になるのだろうと思う。まぁ作中で言及のあった組み込みハード・言語の本に近い感じにはなりそうだ。たとえば端末の接続・起動・操作方法、言語の解説、接続できるモノとその制御API仕様などだろうか。
さて、例の言語についてだが、作中ではアセンブラのような言語ではなく、C++やArduino(.ino)に近い言語だということらしい。つまり高度な抽象化を備えた高級言語という事だ。もし例の天才が一人で作ってるだけなら、そんな高度な言語を実装する意味はあるのだろうか?
実際のところ、機械の制御するだけならC++や.inoみたいな高級言語を積む必要はない。ちょっとした高級アセンブラ (たとえばXXJWに使われてたXina) や BASIC のような原始的な文法でも十分だ。そもそもチューリングコンプリートである必要すらない。
そもそもC言語ですら、生み出される為には20年なりのコンピュータサイエンスの歴史があってできたものだったりするわけだから、高々マジックアイテムの組み込み言語、しかもメンテナンスする人がほとんどいないような環境で、そこまで高級な言語を生み出すモチベーションはないはずだ。むしろそれ以外の開発の方が優先されるだろう。
まぁ長々と書いてみたが、実際のところはきっと例の天才も、どこかコンピュータサイエンスのある世界からやってきたのではないか?という気はしている。バックグラウンドがあるとしか考えられない。実際には天才一人ではなく、開発コミュニティが存在していた、過去の文明から引き継いだ、などの説もありえるのだろう。
例えば二次元の女子高生が突然受肉して主人公と一緒に暮らすラブコメがあったとしたら、「少女には戸籍がないはずだが、どうするのだろう?」といった変人しか気にしない部分は普通書かれない。なぜならどこにでもいる、ありふれた人物がベースの主人公なら少女に戸籍がないことよりも先に気にすることは沢山あるし、それは普通の読者にとっても同じだからだ。
しかしこの作品の主人公達は普通ではない。「いや、異世界の物理法則を確認するのは普通だろ」と自分は変人側だと認めたがらない読者もいるだろうが、この作品の主人公達は間違いなく変人達だ。そしてそれが同じ変人側の読者にとっては読んでいて、かゆいところに手が届くような心地よさがある。
変人しか楽しめないかといえば、そんなことはない。変人要素は脇道ではなくしっかりと本筋の上に乗っており、物語は停滞することなく進み続ける。普通の読者が読んでもコメディとして十分に楽しめるだろう。
今作、後半少し変人要素が減っているように思えた。全体の半分以上が魔術の仕組みを研究するだけの小説を嬉々として読む自分には少々物足りなさを感じなくもない。普通と変人の両方楽しめるバランスを考えればこれくらいが無難なのだろう。それは分かる。ただ、普通に読んでも十分に面白い話ではあるが、自分が一番に読みたい部分は高専生という変人達の視点を通して語られる「そこサラッと流す人多いけど、やっぱり気になるよね」という部分なので、そういった部分がほとんどない普通の異世界転移モノになっていかないよう、二巻も頑張って欲しい。
常々、異世界ものでなぜに主人公はああもあっさりと受け入れるのかと納得いかない部分があったのですが、この小説の主人公達の元の世界と変わらぬ探究心と未知へのチャレンジにとても共感できました!
受け入れる前に物理法則を調べ、言葉が通じることに対しても疑問を持って分析し、見たことのない魔法道具に飛びついて分解。
自分たちのかなり変わった常識と、いきなり放り込まれた訳のわからない世界とを自分たちなりのやり方で繋げていく手法は物語世界にぐいぐいと引き込んで行ってくれます。
その中での淡いラブストーリー的な部分も可愛いです。
エピローグに続編ありな香りがしたので楽しみにしています。
理屈っぽい理系男子と理系女子の、理屈や理論では割り切れない恋愛というものをどうするのかと言うところにも興味ありますが、やっぱり物語の初めと同じように高専生ならではの変人っぷりを中心にしたストーリーが繰り広げられることを期待しています。
元高専生としてはあるある物として楽しませてもらいました。
初めて魔道具を見つけたシーンでは「自分ならこんな実験をするなぁ」等と想像してしまったら登場人物の反応もそんな感じでまさしく感情移入出来てしまいました。
間違った楽しみ方なのでしょうが一番そうそうと思ったのは先生の授業のシーンです。高専の先生って専門は当然としても一般教養の先生にも変わり種が多いですよね。高専生が変人なのは先生のせいも半分くらいはあると思っています。
登場人物の気持ちは実際には不確定、そんな問題は出さないとおっしゃった国語の先生
猫が食べたんだから大丈夫と道端の草を召し上がられ胃腸を壊された倫理の先生
あなた方のおかげで高専生は今も変人揃いです。
工学部だったこともあり、高専出身の友達が多い学生生活でした。
ほんと興味あることへの熱量は、幹人たちそのもので、連むと面白い奴らばかりです。(面倒だなと感じる場面も無いわけではないですが)
そういう意味で言うと、出てくるやつらはリアル、こんなの普通にいるわって感じます。
ストーリーも熱い。昨今流行りのチートスキルではなく、条件が揃えば、多分するんだろうなってとこも好感を持てます。
ただモンスター倒して終わりじゃない、しっかりメッセージ性のある異世界もの、なかなか出会えなかったので読んで良かったです。
しかし幹人の恋愛模様はどうなるのか、とりあえず言えるのは、高専生にハーレムルートは似合わないと言うことです
独立行政法人 国立高等専門学校。
通称『高専』。
工場における作業者と経営陣の中間――所謂『現場リーダー』を任せられる高度な技術者の育成をモットーとする教育機関である。
五年制。
一般的には、中学校卒業から進学する者が大多数だが、中には工業高校や普通科高校から四年次編入という者も居る。
高校+短大(+専攻科に行けば2年)というイメージがしっくりくる。
が、作中にもあるように、高専のモットーは技術力!!
『やりたいことが見つからないから、とりあえず普通科行って大学かな』みたいな奴らなぞ放っておけといわんばかり、一年次から徹底的な工業技術・知識を叩き込まれる。
製図・プログラミング・電気電子回路・制御理論・ドイツ語・etc。
そうして五年間、技術演習と赤点(60点)と補習と追試に鍛えられた学生たちは、スーツよりつなぎの似合う技術者として、一部上場企業から地方の有力企業へと出荷されていくのだ。
そんな場所に、嬉々として飛び込む生徒たちが居る。
とにかく早く手に職を付けたい!!
安定した就職先!!
授業力が安い!!
バイク+車通学!!
親父・兄貴が高専生だから!!
休みが長い!!
ロボコンに出たい!!
プロコンに出たい!!
校則が緩い!!
寮生活に憧れる!!
彼らが高専にやってくる理由は様々だが、一つ言えることがある。
それは――
『この作品の登場人物たちのように、わけのわからん行動力に満ち溢れている』
ということである。
あぁ、高専生万歳!!
とまぁ、まったく内容と関係ない話をしてしまうのは、これ書いてる人間も高専生だから。
そうそう、こういう『高専生が居たらとりあえず応援しとけ』みたいな気風も高専特有のものです。
頑張れ、藍月 要先生!! 頑張れ!!
――本題に入りましょうか。
さて、上にかいたようなよう分からん行動力に満ち溢れた高専生たちが、ひょんなことから異世界に漂流教室ならぬ漂流クラブしちゃったからさぁ大変。
知識レベルにはまぁ高専ごとの差はあれど――持ち前の高専魂で異世界に立ち向かっていく、もとい異世界で遊びつくすのが本作品の持ち味です。
まぁ、そうするでしょうな。
高専生は漏れなくオタク(の素質がある)。そりゃ魔法の使える異世界に飛ばされればうっはうっはだろうし、魔法道具を見つけりゃ、それの使い方から原理の解析までやっちゃうでしょう。
しかしながらそれだけではない。
高専生だから分かる――というか、世間(世の大半の学生)のはみ出し者だからわかる、葛藤が後半のテーマとなってきます。
大学進学率がどうこういわれる昨今に、大手を振って高専の門をくぐってしまった僕たち。その高い技術力の反面、いまひとつ世間の知名度が低く、「高専? あぁ、専門学校?」とか「商船? あぁ、船乗りさんね?」とか、肩身の狭い思いを強いられます。
同窓会なんかいけばね、そりゃもう――。
そんな僕たちの自尊心を工程してくれるのは、『五年間で学んだ技術』!!
大学生がなんぼのもんじゃい!! お前らはんだ付けもできんくせにえらそうな顔をするな――なんて言葉がしっくりくるだろうか。
こちとら座学なんざ相手にせずに、実験・ロボコン・卒研で、さんざ現物を動かしてきたんじゃ、と、世間からはみ出す勇気を与えてくれるわけです。
そして、そんな私たちだからこそ、救うことができる異世界のヒロインが居る。
この作品のラストは、なるほどよく高専生というものが描かれています。
と言うわけで、高専OBのみなさんも、現役高専生も、高専目指してる中学生諸君も、目指してない中学生諸君も。
この『俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する』を読もう!!
そして高専へ行こう!!
この世をすべて高専生で覆いつくすのだ!!