第9話 膝上10cm、こっそりアイライナーのぶりっ子論③

 年月が経って、なんだかちょっとずつ、みんなの力が抜けてきて、校則なんかもチャランポランになってきたタイミングで、私はスカートを短くした。――可愛いものだけを、身に付けたい。ただそれだけの理由だった。それがおそらく、学年で1、2位を争うレベルで早かったことを機に、私の周りは変わっていった。


💄 💅 💄


 だから、スクールカーストのトップに君臨しながらも、私はそういうの、どうでもいいなって思ってる。


 私が可愛いものを身に付け始めてから寄ってきたあの子よりも、


 私のことを怖がって、ご機嫌とりをしてくるようなあの子よりも、


 私はただ、透子のことが大好き。だから、あの子のことを笑うやつらは、ぶっとばしたいし、地味だってだけで傷つけようとするやつらなんか、永久追放したいし、それに――



 たまに一人占めしたくなる。



 今日も今日とて、私は透子に話しかける。ヒソヒソ声が聞こえてきて、ちょっとやな感じ。


「昨日発売の、あの雑誌見た? 実は」

「見たよ。……沙羅、載ってたね」


 おめでとう、とつぶやく透子。――本当に? 見てくれたの?


「……そういうの、興味ないって」

「友人が載ってるの分かってたら、読むでしょ流石に」

「どうだった?」

「とっても」


 可愛かった、そう微笑む透子の顔を、ぼんやりと見つめてしまう。――ふと、彼女の唇に目がいった。


 少し、艶があって。


 上品で、小さなラメが輝いて。


 ほんのりと甘い臭いがして、美味しそうだった。



――私は、自分の欲求に素直過ぎたようだ。周囲の目? そんなの知らない。


 唇に感じる心地よさと、甘い香り。


 拒まれないのは、OKの証?


 そして、思い出した。――私が、可愛く居たいもうひとつの理由。


 それは、大好きなあの子が、可愛いものを心から愛する乙女だったから。




『膝上10cm、こっそりアイライナーのぶりっ子論』――fin.

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