時を想うが故に

今、一秒経った。過去から未来へ。未来から過去へ。時計仕掛けの針先を眺めて。



䴇杜がいつもより低めの声で独り言の様に言った質問は…─

『後、…何ヶ月やった?』

『29日だった。短いもんだな、此処に来て11ヶ月は。』

に居て暮らしても何か芽生えるのか。

『へぇ…やっぱそんなもんやな。大方……──―――………』






昔は…まだ、子供の頃もそうだった…時間なんて気にしてなかったのに不意に今、時は流れているんだって感じた。

自分が思っているよりも全然。



母さんマザー、見てよ、見て、六等星だよ。』

どこかの星が良く見える丘から…優しかった母さんとの大切な思い出。綺麗な星を眺めて10歳だった頃の唯一無二思い出。

母さんは元から体は弱い方だった。町医者からはと言われたのに母さんは

『もっと頑張らなきゃね。湊人とお父さんに悪いんだもの』

と薄く透き通る様な頬を少し上げて笑っていた。楽しかったと思い出に浸る度に母さんが弱弱しい体を引き摺りながら笑っていた。

時計を良く見るようになった。家は周りよりも裕福だったが母さんよりも先に父さんの子会社が潰れた事で家庭に『貧』の字が出始めた。けれど…父さんもまた、1から頑張ろうと建て直した。その時の冷や汗は忘れられない。そう思っていた頃に母さんの病状が悪化して1日1日持つかどうかを病室で時計を確認しながら見る事が日課となった。

母さんが死んだ時は一瞬だった。刹那の時間だった。桜の舞い散る瞬間の様に。




……だから、今だって時間は過ぎている。

時計の針は進んでいる。後悔なんてしたくない。今の時間を忘れればどんなにかは分かっていた。無罪に…無罪になれば自分は一般市民として帰れる。










と思っていたんだ。だとと自分を立てて他人が…─────────



きっと…そう、夢に堕ちていたんだ。

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