諸事情と胸焼けの話

そろそろ夕日が沈む…。少しの沈黙の後に何も無かったかのように彼は笑って


「さぁ、日も沈んでしもうたし、後の準備でも、しよーか?」


嗚呼…これではいつも通りじゃないか…。何時も騙され欺かれ…こんな事では一歩も進まない…。

だから、聞きたかった。見えない壁を幾度と無く張り巡らされており、そんな事に気づいたのは最近だけれども…。


「話を逸らすな…教えろって言ってんだろう?」


なんかだかこの時ばかりは正気では無かったらしく。

きっと嫌だろう…自分の私情を知られるのは…。

すると…


「そんなに聞きたいんか?面白くないで〜?」


少し真面目な…顔で言われたので息を飲んだ。頷くと

俺に話すと言うよりは思い出したかのように話し始めた…。


「俺は…可笑しかったんよ?普通だったらしない…そんな事ばっかやってたさかい………」


ブツブツ言い出した。

続きを聞こう…。


「元々あんなんじゃ無かったんよ〜……何かが狂って…壊してしもうたから…」


さっきまでの悪戯じみた笑みは何処えやら…。

俯きこちらを見て話してはいない。

何に向かって言っている?……さっき言っていた《壊した》とはどういう意味だ?


「でもなぁ…懺悔の気持ちがこれっぽっちも無くてなぁ…怖いんだよ…」


そこまで言えれば充分じゃないか…。

その後はずっと䴇杜の話を聞いた。

解った事は䴇杜は人の精神を崩壊され、狂わせた…という罪で入れられたらしい。

まぁ、その分の罪はもう、無いようにも見えたが…。

とても、良い話とは言い難い話を聞きながら少しでも心を開いて欲しかった…。

今迄心を開いていたのだと思うのは大きな間違いで…。

だから、最後に…



「話してくれてありがとな…もう、充分だ…」


顔を見て言ったが少し䴇杜が涙目だったように見えた。

ここまで言わせたのだから、努力しなければ…。




こんな話をしているのを椎莵が聞いていた事を知るのはもっと後の話で…。


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