第6話-唐揚げとの開闢



TwitterのTLで見た唐揚げは、男のゲンコツより少し大きいくらいのサイズ感で、この狭い世間の中で圧倒的な存在感を放っていた。

せっかく唐揚げの元に辿りついたのはいいが、唐揚げを何個にするか、それが問題だ。


唐揚げをお得に食べられるのは、毎月5のつく日だけ。

今を逃せばおよそ10日後になってしまう。

1日1唐揚げという計算の元で行けば…必然的に10個だ。

ならば迷う必要は無い。今の自分に必要なのは、迷いよりもマヨネーズを存分に付けて楽しむ唐揚げだ。





10個500円。

隣で妙にそわそわしている唐揚げも同じ数を注文した。

聞けば今日は既に鍋を食べてきたらしいが、鍋も広い意味で言えば飲み物だ。唐揚げがデザートだと言うなら何も問題はあるまい。


唐揚げが唐揚げの目の前に到着するのに、時間はかからなかった。

しかし実物を見て二人は驚愕する。


…この唐揚げ、デカい…!


まるで唐揚げを喰って大きくなった唐揚げのような狂気的なビジュアルに圧倒される唐揚げは、唐揚げよりも少し小さな拳を握りしめて、一言だけつぶやく。


「これくらいなら、デザートとしていけますね。」



「まぁ僕はいけますけど…」



そう言いながらも一口かぶりつく。


唐揚げはいかに大きくて美味そうな外見をしていても、硬かったりパサついていると大量に食べられない。

そんな懸念が、わずか一口の唐揚げで払拭されるとは夢にも思わなかった。


柔らかい肉質の唐揚げからあふれる肉汁と、サクサクの衣が口の中で混ざり合い、唐揚げという料理の本質を本能に投げかけてくる。

これは…美味い。

10個どころか、もっと注文しておくべきだった…



そんな後悔を胸に秘めながら、一つ、また一つと口に放り込んでは呑み込んでいく。

胃袋が温まってくる感覚と同時に、脳が一気に活性化する。

隣の唐揚げも、恐らく同じ感覚を味わっているのだろう。同じペースで箸を進め、そうして残りの唐揚げは間も無く3つになろうとしていた。

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僕と唐揚げの1025キロカロリー戦争 おいでよ名古屋@名古屋市非公式萌えキャラ @oinagoya

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