第4話 夢への道標

 それから、彼女とは定期的に交流するようになった。

 初めて出会ったあの日、"あなたの夢は何?"と聞かれた僕は、とっさに"写真でみんなを笑顔にしたい"と言ってしまった。

 それは、厳密には僕の夢じゃない。僕が小さい頃に死んでしまった父親が口癖のように言っていた言葉だ。

 でも、口にしてみると案外それが事実であるかのように色々なことを語れた。

 僕の話を聞いた彼女は、"あなたが今までに撮った写真やこれからとる写真をみていきたい"と笑ってくれた。

 そして、彼女は身の上話を始めた。

 それは、僕には想像できないような話だった。



「小学生の時、将来の夢を書いたの」

 何度目かの交流で彼女はそういって、題名だけの白紙の作文用紙を見せてくれた。

 彼女には"将来の夢"と語れるほどのものがなく、先生には"白は無限の可能性なんだって"と言って困らせていたらしいなんてエピソードつきだ。

 その話につられて、僕にもそんなものがあったんじゃないかと探してみると、その作文はすぐに見つかった。



 見つかった作文から、写真を撮るのが好きになったのが父親の影響だけではなかったのだということを思いだした。

『ぼくの将来のユメは、きれいなものを残すことです。理由は……───』

 確かに父親や家族も理由の1つだ。

 でも、夢として書いた本当のきっかけは、遠足で見た綺麗な写真。日常の風景を撮ったものだ。

僕はそれを見て言葉にもならない感動をえた。……それが、本当のきっかけだ。



 僕の口からでた"父親の口癖将来の夢"はいつのまにか本当の夢となっていた。

 そして、僕の夢は、"唯一無二の大切な存在である彼女の笑顔を永久とわに見続けること"というのも増えていた。


 僕は、生涯彼女と一緒にいるつもりだ。

 たとえ、彼女が寝たきりになるような日が来ても、僕は彼女に世界の美しい姿を届け、感動を共有し続けたい。




 僕は今日も夢を見る。

 彼女の笑顔にあふれた夢の時間。

 決して消えてしまわないように。

 僕は彼女の夢を守りたい。

 彼女が見つけた"生きる希望"が僕の夢だと言うのなら。


 僕は君のために夢を追いかけ続けよう。

 君の愛を受け止めよう。

 君には永久とわの愛を捧げよう。





 僕の夢は貴女に愛されし夢───。

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愛されし夢 如月李緒 @empty_moon556

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