第28話

次の朝

アラームがなる前に目が覚めた

まだ7時

待ち合わせは10時

こんなに早く目が覚めるなんて、私やっぱり緊張してる

カーテンを開けて朝の光を部屋に入れる

窓から見える街並みはもう明るく、とっくに1日をスタートさせてる

いつもはもっと早く起きるから、なかなかゆっくり見ることなんてないけれど

朝の空気が一番綺麗な気がする

窓に触れると、ひんやりと冷たい

やっぱり開けるのはやめておこう

顔を洗ってコーヒーをいれる

マグカップを手にテレビの前に座った

今日何着よう?

クローゼットに目をやり、しばらく考えたがこういう時何を着たらいいのか全くわからない

いつもなんの興味も示さなかったテレビのファッション系の情報

もっと見ておけば良かった

今更後悔しても間に合わないか

リモコンを手に取りザッピングしてみる

どのチャンネルの女の人もみんな似たような格好してる

マグカップを置いて、クローゼットを開けて似たような服を探してみる

……なんか違う

服、買っておけば良かったな

結局いつもと同じような服を選んでしまった

仕方ない 今度見に行こう

髪をとかして、ファンデーションを手に取る

あらためて手持ちの化粧品の少なさに気付く

でも、たくさん持ってても、きっと上手く使えない

鏡の中の自分を見て、今日はいつもより少し丁寧にファンデーションを塗った

口紅を塗りながら、昨日自分が言った言葉を頭の中でなぞる

……違う場所でお話しませんか……?

自分が男の人にこんなことを言う日が来ようとは

…ほんとに、なんで言えたのかわからない

でも、もう少し話したいと思った

いつも満員電車の中では、周りの目も気になるし

余計に緊張して上手く話せないと思っていた

彼が乗ってから私が降りるまでの短い間しかないし


それに彼なら、私の馬鹿馬鹿しい話も聞いてくれるんじゃないかって思った

いつもひとりで考えていた事

誰も聞いてくれなかった事

……いや、誰にも話さなかった事、か


話す必要なんてないと思ってた

他人に理解してもらう必要が、どこにあるのかと……

でも今話さないと永遠に話せない気がした

彼は、私と話したいと言ってくれた

私も、彼と話したいと伝えられた

職場でも、自分から1歩踏み出すと相手も応えてくれることがわかった

夢で会った人には、まだ会えていない

白い廃墟にいた、あの人

ピアノの音は止みましたか?

私は、イヤフォンを外して歩けました

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