フェーズ:021『僕の目玉とサードアイ』

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Title:『僕の目玉とサードアイ』

 

「知っているか? 霊感の強い奴には先天性と後天性があり、

後天性の奴は、霊感の強い奴の傍にいることで覚醒し、

見えるようになるケースがあるんだ」

 

大学でぼっち生活を送る俺の唯一の話し相手。

美人なのに最恐の霊感を持つ西園寺先輩に連れられて、

俺はヤバイと噂される深夜の廃病院にやって来ていた。 

 

「首のない奴、腸を垂らした奴……望まれず宿った生命。

病院というのは夜の神社や墓よりも刺激的だと思わないか?」

エントランスを彷徨う悲しき霊魂。

眼前を飛び交うオーブや突然のラップ音にビクつきながら、

俺はコクコクと頷いた。

 

「見ろ、神崎。自分が生きているんだが死んでいるんだか、

分からなくなってしまった奴がいるぞ」

西園寺先輩は整った唇を僅かに歪め、待合ロビーに視線を向けた。

するとそこには、眼球のない男の姿があった。

 

「うううっ……誰か……僕の目を知りませんかぁぁぁ?」

手術を受け眼球が摘出されたのか、

ぽっかりと開いた空洞を二つ持つ男は

呻き声をあげながらこちらへと近づいて来る。

 

吸い込まれそうに深い空洞。

眼球が収まっていたその場所は妙に赤黒く、

なぜか凝視してはいけないように思えた。

 

……ひぃっ。

 

戦慄と悪寒に顔を歪め思わず後ずさる。

先輩はそんな俺を見て、ふっと笑みを零した。

 

「神崎、何度言ったら分かるんだ。

感情と霊感のコントロールを忘れるな。

霊を感知するセンサーのオンオフを

自在にできるようにならないと精神に異常をきたすぞ?」

 

先輩のしなやかな手が肩に舞い降りる。

俺は先輩に頷き返しながら呼吸を整え、

ブレーカーのスイッチを

次々と切るようなイメージを心の中に浮かべ、

霊を感知するセンサーを切った。

 

その瞬間、頭が軽くなり――。

首のない霊、腸を垂らした霊、

赤ん坊の霊が次々と闇に溶け、

西園寺先輩も消えていった。 

 

俺の目の前で荒い息を吐く、眼球のない男を残して。

「あううっ……僕の目を知りませんかぁぁぁ?」


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