七龍の契約者

第8話

…よし、これでステータスの改竄終了だな。この豚に目に物見せてやる

『どんな感じにしたの？』

ん？ウェントスか…それは、後のお楽しみというやつだよ。

ウェントスに内緒にしつつ祭壇に登ると、神官が神妙な顔で話し掛けてきた

「お待たせして申し訳ありません。あの…先程のステータスの公表の件は、本当に大丈夫でしょうか？」

そのことか…一般常識としたら自分の生命線だし無闇に公表するもんじゃないよな…。

心配してくれるなんて流石神官だな。

「お気を使って頂いてありがとうございます。私は大丈夫ですよ。自分が、どんなステータスか分かりませんが…公爵家の方の御命令に逆らうと後で何をされるかわからないですからね。」

…て言っても、ステータス分かっているけどね。まあ〜世間では鑑定する方法がない以上仕方ないよね！

取り敢えずステータス確認といきますか！

内心、神官に嘘をついて申し訳なく思いながら、鑑定石に手を翳す

名前 ：レオナール・フォン・グリューゲル

性別 ：男

年齢 ：10

種族 ：人族

レベル：18

職業（ジョブ）：召喚士

スキル：召喚術レベル2

大剣術レベル1

盾術レベル1

火魔法レベル5

水魔法レベル5

称号 ：グリューゲル家嫡男

「「「「「「「「…………………………はっ？」」」」」」」」

皆さんハモってらっしゃる…魂抜けてますよ。…あっ、1人ずつ戻ってきたな。

「……ちょっ、ちょっと待て⁉︎な、な、何だ⁈このレベルは⁈18だと⁈」

「いやいや、待て⁉︎レベルの問題だけじゃない‼︎こいつ召喚士だぞ⁈にもかかわらず…火も水魔法も使える⁈しかもレベル5⁈ふざけてるのか⁉︎」

「お前も落ち着け‼︎魔法だけじゃないぞ⁈大剣術も盾術もレベル1だが取得している…スキルが5個だぞ⁉︎何なんだこいつは⁉︎」

「これは…神よ…もしや貴方様の使者なのでしょうか?神子様なのでしょうか？」

「鑑定石が壊れてるんじゃないか⁉︎もし、これが本当なら…アスラ様が数年に1人の天才とするなら、数十年…いや数百年に1人の鬼才だぞ⁉︎」

「でも…ふふふ、これは本当に雲泥の差になったな。」

「おい‼︎馬鹿‼︎お前殺されるぞ‼︎アスラ様もいるんだぞ⁉︎」

この一言で周囲の空気が一気に冷め、全員が揃ってゆっくり背後に振り向くと………アスラが、プルプル震えながら顔を真っ赤にして睨んでいた…。

あー……完全にやり過ぎたなこりゃ…。てか、神官様微妙に惜しい‼︎神の使いじゃないんだよな。確かに、女神には会ったけどね。でも、フィーナは、元いた世界の神って言ってたからこっちの世界のことは別の神がいるのかな？……………って、待て待て‼︎今は、こっちの問題が先決だ。

アスラとの遣り取りを思い直し、再び内心ため息を吐く

『もしもの時は焼いてやるよー！』

イグニスあなたは黙っていなさい。…そんなんされたら実質的に首が飛ぶだろ！

『おら達がいるからそんなこと起こりえないと思うのね〜。』

テラ…そういう問題じゃないの！

…と、そんなこんな脳内会議しているとアスラが怒鳴りだした

「お、お、俺は、絶対に認めないからな！そうだ…決闘だ！決闘で白黒つけてやる。薄汚い貴族の面汚しの分際で私を恥じをかかせやがってー‼︎」

「えっ⁉︎はあーーーー⁉︎」

おいおい、決闘ってマジかよ⁉︎確か決闘って15歳の成人するまでできないだろ⁈てか、そもそもなんでそうなるんだよ！

…この世界では、10歳で神託を受けた後、学校に通ったり、各々で職業に応じた訓練やその職業の者に弟子入り等を通じてスキル習得に励む。そして、15歳になると晴れて成人と見なされ、個々で責任を問われるようになっている。また、冒険者登録もこの年齢から出来るようになるのだ。

そんな喧騒の中、バーン‼︎っという激しい物音が響き渡る。

全員が物音のなった方向に目を向けると、祭壇があるこの部屋の仕切りとなっている扉が勢いよく開かれていた。

「いったいなんの騒ぎだ⁉︎神託に何かあったのか⁉︎」

そこには、かなり大柄で横柄そうな人物が立っていた。

「父上⁉︎」

…アスラ、お前の父親かよ⁉︎…ってことはグラエル公爵か…。

てか、神託の儀に大人は立ち入れないはずだろ？何してんだこのおっさん‼︎

神託の儀が執り行われる祭壇の間には、神官以外の大人は禁制と国の法律で決まっている。

ていうのも、過去に他の子供のスキルを盗み見ようとして親同士が喧嘩でレベル8同士の激しい戦闘が神殿内で起こったことが発端だそうだ。そのため、子供以外の大人は神殿内部にある別室で待機しているのだ。

ちなみに、子供だけ制限がないのは概ねレベル1〜3が大半であるため警備をしている神官騎士が仲裁することが出来るため問題ないらしい。

そんな中、扉にいる公爵の後方から俺の両親を含む並んでいた貴族の家族や使用人達がやってきた。

「何をなさっているのですか⁉︎グラエス公爵‼︎法に背くおつもりですか⁉︎」

息を切らしながらやってきた神官の一人がグラエス公爵に話し掛ける

「黙っておけ‼︎息子のあんな声を聞けば気になるのは当たり前ではないか⁉︎」

怒り奮闘な様子の公爵、そんなところに父さん…ジークが話し掛けてきた

「レオいったい何があったんだ？私達には何が起こったのか皆目見当もつかないのだが？」

そう言うとジークは背後にいる貴族連中に顔を向ける…皆同様に説明を求めているようだ

「えーっとですね…その…何と言いますか…アスラ様が順番を割り込んできたんです。それで…。」

チラッとアスラを見るが、アスラは俯いて歯を噛み締めている…よっぽど悔しかったんだな…。

「それでどうしたんだ？」

ジークが詰め寄り話を催促する

「先にアスラ様に神託を受けていただいて…ステータスをアスラ様が自慢されたのです。それで、私に『貴様のステータスと私のステータスの雲泥の差を知り越えられない壁を感じろ。比べてやるからさっさとステータスを確認しろ』…と言われたのです。私としては、お断りしたかったのですが…公爵家の方々の御命令に逆らえなくて…。」

周囲は絶句している。例え子供同士と言えどステータスを無理矢理見るのは憚れるからだ。それが、相手が奴隷や使用人なら問題ないだろうが赤の他人にするというのでは大きな違いがある。

「そうか…それで…。でも、それだけで、アスラ様の怒鳴り声があんなに響くものなのか？」

…ウグッ⁉︎こういう時は鋭いんだよな。…大勢の人がいる前で言いたくないけど仕方ないか…

再びチラッとアスラを再び見る。自分もステータスを公表するんだし、アスラのステータスも公表していいよな。

「これを見てください。これがアスラ様のステータスです。」

大勢の人達がステータスを見入る。

「何とこれは⁉︎ガハハ‼︎我がグラエス家も安泰だな！流石私の息子‼︎天才だ‼︎」

「確かに…これはすごい…天才と言っても過言ではありませんね。」

次々にアスラを…強いては、グラエス家を皆持ち上げる。

「それで…これが、私のステータスです…。」

自分のステータスをジークに渡すと固まった。それを見て不思議に思った周囲にいる貴族連中がステータスを覗き込む

「「「「「「「「「「……………………………は？」」」」」」」」」」

二度目の静寂に包まれたのだった…。