陰陽師見習いと眠り姫

@mofumowa

第1話 プロローグ

この世界に希望なんてない


いきなり何のことだ、と思うかもしれないが

俺、土御門 悠人は陰陽師だ。

でも、週末限定。

正直言って、今の時代に陰陽師なんて流行らないし、御祓いや穢れを祓うなんて

中学生の俺に出来ることではないと、そう思っていた、あいつに出会うまでは、、、。

安倍 夏目。

夏目は俺と同い年でありながら御祓いや

穢れを祓っていた。初めてあいつに会った時、思った感想が、”綺麗”そう思った。

その時はまだ小学五年生ぐらいで

綺麗だ、とかあんまり分かんなかったけど、

あの時の事は今でも鮮明に覚えている。

それから、陰陽師の修行をして必死に追いつこうとした。頑張って、頑張っていたら

いつの間にか夏目はいなくなっていた。




そして、数カ月が経った頃、父に呼び出され、”夏目が病室で眠っている”と聞かされた。

初めて、その話を聞いたとき冗談だと思った。丁度エイプリルフールで皆で俺を騙すために言っていることだと、笑いながら、夏目が眠っているという、病室に向かった。

嘘にしては、本格的だな、と驚きながらも

病室のドアを開け、夏目の体を揺すって、

話しかける。最初の内は、寝たふりでもしているのだろうかと思い、揺らし続ける。

数分揺すっても、起きず、疑問に思っていると、父が俺の手にそっと自分の手を重ね

目を伏せて、首を振る。

そして、子供ながらに理解した。

これは本当の事だと、、、。

ポツン、と涙が落ちた。

声も上げず、涙だけがこぼれていった。


そして、今に至る。

あのことを聞かされてから四年、今も夏目は

眠っているままだ。

夏目の眠ってから陰陽師の仕事の手伝いも辞め、修行も徐々にしなくなっていった。

だが、今も週末だけは陰陽師の仕事をしている。

理由は、陰陽師を通して、夏目と繋がっているような気がした。

夏目とは、陰陽師という肩書きがなければ

ただの幼なじみになってしまう。

だから、安易に陰陽師という肩書きで夏目との関係を繋いだ。

しかし、最近少しずつ夏目に近づいているよな気がした。


『さてと、今日のお仕事、終わらせますか』

笑顔で玄関を出て、厄原へと向かった。

俺は、週末限定の陰陽師。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

陰陽師見習いと眠り姫 @mofumowa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ