僕と先輩と怪談と

徒歩

僕と先輩とベンチと

僕と先輩と


「ねえ、知ってる?」

そう言うと、僕の隣にいる先輩はいつも怪談話を始めるのだ。


彼女は高校の先輩で僕はいつも「先輩」とだけ呼んでいる。

先輩は美人だ。長い髪がよく顔を覆っているが整った顔立ちをしていると思う。

でも不気味。友達は少ない。

僕は根暗だ。前髪をいくら長く伸ばしても辛気臭い顔は隠しきれない。

だから不気味。当然、友達は少ない。


スペックに隔たりはあるが、あることがきっかけで

不気味で友達の少ない僕らは二人で話す程度に仲良くなった。


美人の先輩と話ができる、こんな幸せなことがあるだろうか。

と思っていた時期もあった。

でも、しばらく一緒にいるようになると、

先輩が友達が少ない理由がわかるようになってきた。


今日も放課後に学校のベンチで話していたのだけど。

いつものように、始まった。


「ねえ、知ってる?」

先輩は、からかうような視線でこちらを見てくる。

「廃病院のベンチの話。」

「知りませんよ。なんですかそれ?」

先輩の前振りでぼくが何かを知っていたためしは、これまで一度もない。

きっとこれからもないだろう。

辺りが暗くなってきた。それでも先輩は満足そうにうなずいて話を始めるのだった。



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