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「ッ!?」


 適度な揺れを感じ、ショウは目覚めた。

 目覚めると自分が座っていることに気が付き、そしてリュックサックを抱えていた。


「こ……ここは!?」


 ガタンゴトンと揺れ空間。どう見てもここは電車の中である。朝の日差しが差し込み、旅行中の家族や出勤中のサラリーマンなど電車内にはまばらに人が居た。


「お? 起きたのか? ショウ?」

「……父さん?」


 席の横には父親がいた。


「上野まで後30分ぐらいはかかるし、まだ寝てて良いぞ。父さんが起こしてやろう! お父さんのこと信頼出来ないとか言うなよ? 悲しくなっちゃからな! アッハッハッハ!」

「……違う」


 ショウは席を立ち上がる。


「何で……こんな所にいるんだ」

「ん?」

「僕はいつから電車に乗っていたんだ」


 ショウは辺りを窺う。彼は心の底から焦り、額から汗を垂らしながらも窓の外を覗く。流れる背景。ビルや木々、何かの広告などの看板が通り過ぎていった。全くもって、ここは電車の車内であることをこれでもかと、彼の視覚から情報を流し込まれていく。


「さっきまで、公園に居たじゃないか! そこで気を失ったと思ったら……急にこんなところに……」

「おいおい、どうしたんだよショウ……エリの次は、今度はショウが不機嫌か?」

「どうしたの? ショウ?」


 頭を抱えるショウへ、近くにいた母親が肩を優しく押さえ側による。


「具合悪いの? エチケット袋出す?」

「違う……違うんだ……」


 声を震わせるショウに、両親は困ってしまう。ふと、ショウはあることに気づいた。


「……エリちゃんは?」


 辺りを窺った時から彼女の姿は見当たらなかった。

 ショウの様子を見た両親は互いに顔を見合わせ、そして父親が指をさす。


「エリならあっちに……」


 父親が指さした先は次の車両の先だった。

 何故そんなところにエリがと思いつつ、隣の車両をガラス越しだが見ている。


「……え?」


 そこには誰も居なかった。

 エリが居なかったという意味ではなく。乗車していたはずの人々が根こそぎいなくなっていた。更に奥の車両にも人の影がまるで見えなかった。


「父さん……これはいったい……」


 ショウはゆっくりと父親へと顔を向けた。


「……え」


 だが……向いた先には、誰も居なかった。

 父親も、母親も……近くにいた乗客達も……


「どうなって……いるんだ……」


 不安感が次第に恐怖へと変わっていく。そして、ショウの思考は答えを探り始める。

 ここは夢の中なのではないか。まだ自分は夢を見続けているのではないかと……

 ショウの呼吸は徐々に速まっていき、心音もうるさい程鼓膜を揺さぶられていく。


「これは……夢……なのか?」

『フッヒッヒ……ああ、夢だよ。全部ロリ幼女が見ている都合の良い夢なんだよ』


 電車が線路を踏みならす音に紛れ、聞き覚えのある男の声が響きわたる。

 ハッキリとした声で放たれたその声に、ショウは心臓を鷲掴みにされたように硬直した。

 彼は息をすること忘れながら、凍り付いた体をゆっくりと動かし横を向いた。


『よお! 元気か水瀬ショウくん! いや……関口ショウくんだったか? まあ、どっちでもいいか! ヒャアッハッハッハッハ!』





 中肉中背にボロボロの青い長ズボン。紺色の半袖のシャツに黒くヨレた半袖の上着。中途半端に伸びた長い髪が寝癖のようにボサボサとなった不潔な髪型。

 何ともみすぼらしい姿の男だが、ニヤツいたその男の顔はハッキリと覚えている。


「南方……ダイチ!? な、何でお前が!?」


 恐怖のあまり後ずさりするショウだが、その反応を楽しむように南方は暗い笑みを浮かべる。


『到達したのさ。深層心理って奴に……このロリ幼女、水瀬エリの心の深部にな』

「深層心理? 心の深部? お前はいったい何を……」


 ショウの言葉に、南方はまたしても笑い飛ばす。


『やっぱりな! まだお前は気づいていなかったんだな! つくづくお前には同情しちまうよ。哀れなお人形のお兄ちゃん……クク……ヒャッヒャッヒャッヒャ!』

「ふざける! ちゃんと答えろ!」


 ショウが叫んだ時だった。

 目の前に居た南方が一瞬で姿を消す。


「ッ!?」


 ショウが言葉を発する間もなく、突然彼は首を捕まれ床に倒される。


『答えてやってるだろ? それでも分からないお前はバカなのか? いや、もしかして分かろうとしていないのか? なあ?』


 南方は不敵な笑みを浮かべながらショウの首を両手で締め上げていく。その力は脅す為に加減した握力ではなく確実に殺す為の、殺意が籠もっていた。


「ック!!」


 ショウは右手に力を入れるがすぐに気づく。ここは現実世界で、黒い包帯は巻かれておらず、超能力も使うことが出来ない。

 彼は南方の両手に必死に引き剥がそうとするが、彼の手は鋼鉄のように硬くビクともしない。爪を立てたり、腹を蹴り飛ばしたりしても、南方は表情一つ変えず笑みを浮かべるだけだった。


「ッ!! ッ!!」

『大丈夫、もうちょっとでお前は苦しみから解放される。あのロリと同じく俺に取り込まれて消えるんだよ。だから早く死んじまえよ!』


 更に両手に力を込められ、喉から何かが軋む音がなった。酸素欲しさにショウは口を開き、涙を垂らす。徐々に意識が遠のき、体に力が入らなくなっていく。

 視界がかすみ始めた……その時だった。


『な!? おい、止めろ!?』


 唐突に締め上げていた首を離す南方。解放されたショウは空気を取り入れる為、せき込みながらも必死に呼吸を整え這い蹲って移動する。


『ふざける! テメェ等は俺に取り込まれたはずだ! 俺に逆らうんじゃねぇ!』


 何か阻まれているのか、南方は誰かと口論をしていた。

 ショウは視界がボヤケながらも彼等に目を向ける。すると、南方は二つの黒い固まりに体を巻き付けられ、拘束されていた。

 黒い固まりはスライム状に体をウネらせながら、必死に南方を取り押さえているように見える。

 まるで、ショウを守っているようにも見えた。


「クソゴミども……いい加減ニしなイと、また死ぬヨリ残酷ナ目ニアワセルゾ! 覚悟ハ出来テルンダロウナ!!」


 南方の眼孔が赤く光り、徐々に黒い固まりを体内に吸収し始める。やがて彼の上半身心かたはウジのように黒い物体が沸き上がり、依然夢の中でみたドラゴンの頭のような形状へと姿を変えていく。

 ショウは必死に体を立たせ、よろめきながらも自分の鞄を持ち父親が指し示した隣の車両へと移動した。



♡♡



 ショウは必死に車内を移り走った。背後から追いかけてくる巨大な黒い固まりがショウを捕らえようとドアを突き破り車内へと流れ込んでいく。

 恐怖心を押さえ、必死に走り続けるショウ。

 だが、電車の最前車両に到達し、彼は逃げ道を失ってしまった。


『待テ!! 殺ス! 喰殺シテヤル! 水瀬ショウ!!』


 彼の名前を叫びながら黒い固まりが押し寄せてくる。


「どうすれば……」


 逃げ道を失ったショウは車両の最前にたどり着き、壁に背を向けもたれ掛かる。

 徐々に迫りくる黒い固まりを見続け必死に策を練る。だが、良い案が浮かぶわけもなく焦りだけが浮かび上がってしまう。


「どうする……どうすれば……」


 苦悶の表情を浮かべるショウ。

 このまま死んでしまうと半ば覚悟を決め掛けていたその時だった。



 ピロリ


 と、間の抜けた電子音が響きわたった。音は鞄の中から聞こえ、その音に聞き覚えがあった。


「……僕のタブレット?」


 すかさず自分の鞄をヒックリ返し、いつの間にか持ってきたのか愛用しているタブレットが出てきた。

 見てみるとSNSにコメントが入っており送信先の名前が表示されている。


「……エリちゃん!?」


 そこには、水瀬エリの名前が記載されていた。そんな状況ではないと思いながらもそのコメントを開くと何やらボイスデータのコメントだった。

 考える間もなくショウはそのボイスデータを開き再生させた。


"「……お兄……」"


 タブレットから掠れたエリの声が聞こえてくる。


「エリちゃん、いったいこれは……」

"「……お兄……逃げて」"


 エリの言葉が終わった途端、ショウに凄まじい目眩が襲う。

 黒い固まりが迫り来る中、彼の視界はボヤケ――

 徐々に意識が伸ばされて……



・・・・・・


・・・


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